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仕事って何だろう。常磐線特急車内で思いを馳せる。

誰かが何の気なしに放ったことばに引っかかる。病的なまでに。

物心ついたころからの特性だ。過去記事でも書いているが、オイラは自他ともに認める日本語警察である。要は嫌われるアレである。こういうヤツと友だちになりたくね~と思われるアレである。

この日、オイラは旦那と常磐線特急ひたち号に乗っていた。大好きな茨城に所用があったためだ。オイラは鉄オタを名乗れる程ではないが、電車に乗るのが大好き。沙々良まど夏ちゃんは分かってくれるはずだが、この常磐線特急ひたち号は実にイケている。

上野の次は水戸に止まります

こんなファンキーな車内放送があるだろうか。上野を出たら、114km先の水戸まで止まりませんと言うのである。日暮里も北千住も柏も土浦もスルーします。1時間ひたすら水戸に向けてかっ飛ばします。彼は高らかにそう宣言する。乗り間違えたら大惨事の電車なのである。

そんな走りでよく特急って名乗れたなお前( `д´)と言いたくなるような在来線特急も多い中、常磐線特急は自身の走りで「優等列車とは何か」を教えてくれる。まー速いのなんの。東京を出て1時間、ノンストップで水戸なのよ。水戸へのどこでもドアだと言っても過言ではないだろう。過言だろう。

関西だと新快速も素晴らしい。転換クロスシートで、あの速さで普通料金で乗れるなんて嬉しすぎる。名阪は近鉄特急ひのとり。カッコいいね。北陸本線の特急サンダーバードの速さも格別だ。在来線特急万歳。


本編よりも前置きが長いのは仕様です

まど夏ちゃんやオイラは、電車に乗る時間=単なる移動時間とは考えない。電車好きは、電車に乗ることを目的に電車に乗るのである。上野~水戸間はトンネルがほぼ存在しない。存分に車窓からの景色を楽しめる。俳句の素材もわんさか転がっている気がしてくる。贅沢な時間だ。

とそこに。2つ前の席に座っていたご家族に意識が向く。声の限り、若い旦那さんと、これまた若い奥さんと、推定4~5歳の男の子の構成。この男の子。ここではトキワ君としておこう。

トキワ君、大好きなパパママと大好きな電車に乗れて嬉しいのだろう。上野で乗車してから、テンションがMAXとき号新潟行きになっている。窓から目に見えるもの1つ1つを「鳥だ!」「雲だ!」「ビルだ!」と忠実に表現。パパやママがちゃんと見てないと分かるや「パパ見て!」「マーマ!」と激しく叱責を飛ばしている。

常磐線特急の支配者・ミセスイワキ

トキワ君、実に楽しそうだ。うるさいなんて思わない。元気があってよろしい。良い人と思われたいのではなく、これは本心である。オイラ自身に子どもはいないが、子どもは好きだ。先ほどからトキワパパ・ママが「トキワ静かにしなさい!」とか、「ほかの人に迷惑でしょ!」とか、ものすごく周りに気を遣って、大声ニュアンスの囁き声で注意しているのは聞こえている。こちらは迷惑だなんて思ってないので一向に構わない。というか、むしろ微笑ましい。これもまた休日電車旅のBGMの1つなのである。

だがしかし。蛇蛾鹿史。この景色をぶち破るオバちゃんが突如現れた。彼女の名はミセスイワキ。今そう決めた。気に入らなければマツコでも徹子でも好きに置き換えて読んで欲しい。

このミセスイワキ。トイレ離席をして戻ってきたところっぽい。トキワ一家のところまで来て、満面の笑みを浮かべる。ワタクシ、話かけずにはいられません!イワキの顔には油性マジックではっきりとそう書いてある。

「あら~パパとママとお出かけうれしいね♪どこにいくの??」
「・・・・・・」
あれだけ騒いでたトキワくんが急に黙りだす。謎の人見知り発動である。

「あ・・・ちょっと実家の方に・・・苦笑」
困りかねたトキワママが代理回答をする。

「あらそうなの~!よかったねぇ!パパとママ一緒でうれしいね!」
「・・・・・・」
グイグイ系のミセスイワキに、ドン引きのトキワくんの顔。物理的に見えなくても容易に想像がつく。

「さっきから騒がしくしてすみません・・・」
律儀なトキワママがミセスイワキに謝罪する。イワキが自分たちの近くの席だったので、ずっと気にしてたのだろう。

「いいのよ~!子どもは騒ぐのが仕事だもんね!アハハハハハハ」


騒ぐのが・・・仕事・・・?

即座に日本語警察に出動要請が出される。子供は騒ぐのが仕事。確かにイワキはそう言った。仕事。仕事。仕事。

【仕事 し-ごと】(名)
何かを作り出す、或いは成し遂げるための行動。生計を立てる手段として従事する事柄。職業。

おいミセスイワキ。トキワくんは電車内で騒いで生計を立てているのか。鳥だー!とかデカい看板だー!とか叫んで、日々金銭を収受してるのかって聞いてんだよ。まるで意味が分からない。おいイワキ答えろよ。

【仕事】(物理)
力学で、物体が外力の作用で移動したときの、移動方向への力の成分と移動距離との積。単位はエネルギーの単位ジュール。

まさか・・・こっち?(もうええわ)


文句があるなら出てきなさい踏ん付けてやる!

ことばの揚げ足取りかよ。仰るとおり。自分でもすごく嫌なヤツだなぁと思う。でも、こういう何気ない言葉の遣い方が、どうしても&ものすごく気になってしまう。仮にイワキが「子どもはこれくらい元気があった方がいいわよ笑」とか「そりゃうれしいからハシャイじゃうよね笑」と言ってくれていたら。こんなに心がざわつくことはなかったのに。嗚呼イワキ。何してくれてんねんイワキ。

また、これは完全なる被害妄想なのだが、イワキの「子どもは騒ぐのが仕事だからね~笑」は、トキワパパママではなく、周囲に言っているようにオイラには聞こえた。おい周囲の人間。これくらいで騒がしいとか思ってんじゃねーぞ。迷惑だなんて思ってんじゃねーぞ。

イワキは、自らを寛大な人間だとアピールしつつ、トキワ君は自分の仕事を全うしてるの文句があるなら出てきなさい踏ん付けてやる!と、周囲に間接的に圧力をかけてくるのだ。全くなんてヤツだ(お前だよ)。

仕事って何だろう。働くって何だろう。

実際イワキは、トキワパパママが居た堪れなくなってるのに気を遣ったんだと思う。自身も通ってきた道。イワキは思いやりのある人だ。オイラもそういう一言をかけられるようになりたいと感じた。確かにそれは感じたのだが・・・今やトキワ君は故障したPepperの如く黙してしまい、車内にはミセスイワキの笑い声だけが鳴り響いているのである。トキワ君の時には感じなかったのに、イワキには騒がしいと思ってしまうから人間って不思議だ。

仕事ってなんだろう。
働くってなんだろう。
転職サイトのキャッチコピーのようなフレーズが頭の中を飛び交い、ひとりぐるぐるしていると、車内アナウンスが聞こえてきた。

「ご乗車お疲れさまでした。まもなく水戸、水戸です」

気が付けば車窓は偕楽園を映していた。上野からわずか1時間。やはり常磐線特急ひたち号は速い。乗車時間の半分以上をイワキに脳内支配され、ろくに景色も堪能できず、俳句の素材など1つも見つけられず、オイラはため息のまま水戸駅のホームに降り立ったのだった。


★素材はなくとも宣伝は出来る★

〆切までまだ10日もある٩(๑•̀ω•́๑)۶

五七五+秋っぽいことばを入れればOK!

俳句楽しいよ。やってみれ( ●´ސު`●)

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