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タイトルを推理しながら本を買う

一冊の「目録」

 ある目録を時々開いて、「今度この本を買いたい!」と付箋を貼る。時々開いては眺め、購買欲が限界値を超えたとき、この店へ行く。そう、梟書茶房へ。
 ここの目録に載っている本を他の書店で買おうと思っても買えない。
 梟書茶房の本は、写真のように同店のブックカバーがかかっていて、外側がまったく見えない。代わりに、一枚の「本の紹介文」が載せられていて、その上から透明フィルムがかかり、テープで留められている。つまり内側、本文もまったく見えない。
 「書名を伏せたまま、紹介文だけで本を買ってね」というシステムである。この「紹介文」だけを集めたのがここの目録なのだ。

千年で最高の「道具」とは

「道具」好きのわたしは、ずっと前からこのNo.414(ここでは書名の代わりに番号で本を区別している)の紹介文が気になっていた。

 この千年で最高の道具とは何か? 時計、メガネ、家電はもちろん、家にも飛行機にだって使われている小さな道具です。さあ、なんでしょう?
 こんな小さな小さなものの発明が、私たちの世界を劇的に変えたのです。

No.414の紹介文

 先日、付箋が貼られていたこのページをふと開き、どうしても買いたくなった。頃合いもよく、ちょうど池袋にいく用事ができた。
 そこで、「いまだ!」と思って梟書茶房を訪問。1年ぶりなので、本を買うだけではなく喫茶スペースにも入店する。ここのコーヒーはドトールのものなのでわたしの好みにも合う。
 今日は奮発して「ハワイコナ エクストラ ファンシーブレンド」と「プレミアムロールケーキ」のセット(1000円だった)を頼むことにした。

「前菜」としての読書

 ブレンドとロールケーキを楽しみながら、席に置かれた本や雑誌を、いわば「前菜」代わりに読む。この店にはこういう楽しみもある。
 そう、喫茶スペースにも各席のテーブルに何冊か本が置いてある。テーブルが2段構造になっており、下の段に本が3冊ある。天面がガラス張りなので、段に並んでいる本が見えるようになっている仕掛けだ。ここの本は購入せずに、好きに読める仕組み。本好きのパラダイスである。
 各席にある3冊の本にはカバーがかかっておらず、もちろん書名も見える。つまり、喫茶スペースで席に座ったときにも、「自分では読もうと思ったことのない本」と、出会えるのだ。
 『スパイのためのハンドブック』というのが目に入り、「これにしよう」と読み始める。まずは「あなたはスパイに向いているか?」というテスト。自分はすごく意地悪いので絶対に向いている!と思ったが、採点は「ふつうの人」だった。ちょっと残念。途中まで読んで、予想どおりとても興味深い。読み切りたい!と思ったが、入店を待っている人が十数人もいる様子なのでここまでにしよう。書名がわかっているから、あとで本を買ってもよいものね。

「紹介文」で購入した本のタイトルは……

 さて、めったにお目にかかれないハワイコナコーヒーも堪能したので退店しよう。さっき選んでおいたNo.414の本、つまり「この千年で最高の道具とは」との文言で紹介されていた本を棚から取り出し、コーヒーセットと一緒に会計をする。
 店を出たら、いざブックカバーを取って書名をたしかめる。この瞬間がいちばん楽しい。「この千年で最高の道具」といえばアレしかないよね!」と思いながらカバーをそっと外すと……。はい、ビンゴでした!! さらに、解説は大好きな小関智弘さんだった。本を買ったからこそ「想定外の素敵なおまけ」がついてきた。これから読むぞ!

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