実用文はシンプルでわかりやすいことが一番。読み手に負担をかけずに言いたいことを伝えるのが「よい文章」である。
 読み手に負担をかけないとは、ノイズがないということ。誰かの話を聞くとき、周りに騒音があるとうるさくて内容がつかめない。文章も同じである。
 具体的に説明しよう。誤字や脱字がないのは大前提。次に大事なのは、呼応表現が的確であること。たとえば「決して」ではじまる文章は、末尾に「ない」等の否定表現が必要だ。そうでなければ、読み手の脳は結語を探して彷徨ってしまう。こういうのが無駄な動き、すなわちノイズである。
 そのほか、主語と述語の関係がねじれていないこと。被修飾語に対する修飾語のかかり方が明瞭であること。共起表現が整っていること。たとえば、「汚染が下がっている」という文では、読み手側が「ああ、汚染が少なくなっているということだな」と脳内変換しなければならない。この場合なら「汚染が減少している」または「汚染のレベルが下がっている」が共起が整っている文となるだろう。
 さらにフォーマルさ、使われている語や表現の領域が一定であることも大事な要素である。たとえばビジネス文なら書き言葉だけで書かれているべきだ。カジュアルな口語が一部にあると、読み手の脳は「何かの意図があってカジュアルな口調を使っているのかな」と、「意図」を探しにいってしまう。
 具体的には、初出で「FB(FeedbackもしくはFacebook)」といった省略語が使われている、会話文や引用文のかぎかっこが省略されている、「ら」抜き、「い」抜き文が使われているなどが挙げられる。
 そのほかにも、敬語レベルが変動している(英語は敬語レベルが変動する言語なので、翻訳のときは厄介だ)、過剰に美しい語が不必要に入っている等も読みづらい文章である。使用する語彙や表現のレベルが一定であることも、読み手の脳を惑わせない条件となる。
 こうしたノイズがないものを、わたしは「クリーンな文章」と呼んでいる。ノイズがないから、読んでいて余計な気を使わず、内容がすっと入ってくる。
 自分もそこを目指して、日々出力用脳内辞書をメンテナンスし、アップグレードしていこう。実はnoteを書く狙いのひとつもそこにある。

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