放送大学「より良い思考の技法――クリティカル・シンキングへの招待』」受講ノート~第4回

論理的・合理的とは何か

 クリティカル・シンキングは、合理的な規準に従うと同時に、目標のために何をすべきかの意思決定に焦点をあわせているという。
 まず、合理性とはなんだろう。合理性の代表的な規準が、論理学が示す論理の規準である。論理学では、推論の形式を大きく二つに分けている。

演繹・広い意味での帰納(枚挙的、アブダクション、アナロジー)

 ひとつ目は演繹だ。演繹とは、いくつかの前提から、はっきり規定された論理形式だけによって結論を導き出す推論のあり方である。「人間は誰でも死ぬ→ソクラテスは人間である→ソクラテスは死ぬ」といった論理展開である。
 帰納は、3つにわけられる。ひとつが「いわゆる」帰納といえばこれである枚挙的帰納法。「個々の事例から一般化する」やり方だ。
 そのほか、アブダクション(疑念や探究を引き起こす意外な事実が観察されたとき、ある仮説が真であれば、他の競合する仮説よりも事実を「最もよく説明」する。よってその仮説が真であると考える最良の説明への推論)、アナロジー(異なる二つ以上の対象に何らかの類似性が見出された場合に、類似性にもとづいて片方に関わる情報を他方に適用する) も帰納の仲間に入る。
 アブダクションについてはよく知らなかったが、「大陸移動説」などがその例ときけば、「ああなるほど、一番良さそうな説明へと推論するやり方ね」とわかる。

妥当な推論形式とそうでない推論形式

 前件肯定は、 いわゆる「PならばQ」「Pである」「よってQである」は前件肯定と呼ばれ、正しい推論形式として妥当。

例:すべての人間は、動物である  
すべての放送大学生は、人間である
すべての放送大学生は、動物である

 これは前件肯定なので正しい推論形式である。
 「PならばQ」「Qではない」「よってPではない」は後件否定と呼ばれ、これも妥当。
 一方、「PならばQ」「Pではない」「よってQではない」は前件否定、「PならばQ」「Qである」「よってPである」は後件否定と呼ばれ、論理的な誤謬になるという。ここまでは聞いたことがあった。

ロジカル・シンキング

 この言葉はビジネスでもよく聞く。論理学の基本的な考え方をベースにしてさまざまなところに役立つように工夫された論理的思考だという。よく知られたロジカル・シンキングの例に「ピラミッド・ストラクチャー(三角形型に積み上げた論理構造でひとつの主張を支える)」、「ロジック・ツリーの原因追求型(ひとつの問題に対して複数の原因を考え、下位要素にそれらの原因を書いていくと、根本原因が見つかる)」、「ロジック・ツリーの解決策具体化型(ひとつの根本原因に対して複数の解決策を考え、下位要素にそれらの解決策を書いていくと、具体的な解決策が見つかる)がある。
 ここで原因や解決策を考える際、MECE(ミッシー:Mutually Exclusive and Collectively Exhaustive:相互に重なりなく全体として漏れがない)に則って挙げていくのがポイントだ。
 MECEという概念は聞いたことがあるが、ロジックツリーを整理するときに必要になるものだとは、この授業で初めて知った。

トゥールミン・モデル

 議論を分析し有効な主張を行なうための図式であるトゥールミン・モデルの3要素「根拠、論拠、結論」がよく使われるが、これに「反駁」(反論すること、論じ返すこと)を加えたモデルも有効性が高い。

例:Aさんは車を運転している(結論)
したがって免許を持っている(論拠)
私道で運転しているのなら、免許を持っていないかも知れない(反駁)

 なるほど、論理学は例を挙げて考えないとなかなか理解できない。トゥールミンや、ロジック・ツリーは実際にものを考えるときにやってみたい。というか、セミナー資料をつくるときにこれでやってみないと、と思った。これがわたしにとって、当面の最優先課題になりそうだ。

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