便利な訳語。なるべく使わないで! #2
今日は「便利だけどなるべく使わないで!」の2つ目、「より」を解説してみる。
~することにより、より~に:〈助詞+副詞〉
以下の英文と訳文がある。
「~することにより、」「より~に」と「より」が連続している。実に読みづらいが、多く見られる訳文だ。
では、具体的にどう変えたらよいか。まず、辞書を見て2つの「より」を文法的に分析してみよう。
分析することにより、
●「により」:助詞「に」+助詞「より」の複合助辞。原因や結
果を表す。 (基礎日本語事典)
より明確に
●「より」:副詞。 (基礎日本語事典)
状態を表す語を修飾して、その程度がいっそう加わるさまを
表す。もっと。いっそう。 (小学館日本語新辞典)
最初の「より」は助詞、次は副詞。品詞も働きも異なる2つの「より」がつながっているのだ。これでは読みづらいのも当然である。
1つめ、前置詞の「より」を「と」にしてみる
そこで、最初の「分析することにより」をどのように変えたらよいか。
一案として、同じ意味となる「分析することで」または「分析すると」としてみよう。並べてみると次のようになる。
少しすっきりした。
助詞の「より」は多義語である。『すぐに使える実践日本語シリーズ ことばをつなぐ助詞』では、「より」には次のような働きがあるとしている。例文とともに転記する。
比較の基準:彼はわたしより足が長いです
場所の起点:わたしは京都支社よりまいりました
時間の起点:本日よりクリスマスセールを行います
境界:この川よりむこうは川崎市です
限定:生まれた国よりいいところは他にない
強調:どこよりも家が一番いいです
助詞の「より」にはこれだけの意味があるのだ。多用すれば意味がわかりづらくなるのは当然である。
2つめ、副詞の「より」を「いっそう」にしてみる
次の「より明確に」は「いっそう明確に」でどうだろう。before→afterで並べるとこうなる。
そう、「より」には前置詞だけでなく副詞もある。
けれども、副詞の「より」を削るのは簡単である。「いっそう」に置き換えればよいのだ。これだけでも「より」の連続を防ぐことができる。
さて今回の文では、結果として「より」を両方削った。ずっと読みやすくなったと思う。前置詞の「より」だけで多くの働きがあるのに、副詞の「より」が連続して来たら、わたしならこの先をもう読みたくなくなる。
前後半、どちらも「より」を削ったbefore→afterを並べると、「より」を削った効果がよくわかると思う。
こうして比べると、ずっとすっきりしたことがわかると思う。
では最後に、「~より」を減らすための今日のポイントを再掲しておく。
「~することにより」→「~すると」にする(助詞の「より」を消す)
「より~に」→「いっそう~に」とする(「副詞の「より」を消す)
繰り返すが「より」は多義語である。「より」しか使えないところだけに限定して「より」と書き、その他の「より」は減らすことが、わかりやすさにつながる。
まずは、副詞の「より」を「いっそう」にするだけでも違ってくるはずだ。こちらは単なる置き換えなので難しくない。ぜひ、これだけでも今日からやってほしい。
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