誤訳のパターン4 単語の意味の取り違い
間違っている翻訳、つまり誤訳にはいくつかパターンがある。
今日は記憶の想起不良や注意不足による「単語の意味の取り違い」について訳文を挙げ、対策を考える。
purchaseってどういう意味?
But it’s still amazing how much purchase it finds to thunder through and out of the bends.
それでも、轟音を立ててカーブを走り抜けるのに支払った代償としては驚きだ。
車に関する記事翻訳である。この訳で「代償」はどこから出てきたのか。おそらく、purchaseに「購入品」の意味があるところから類推したのだろう。だが、ここで辞書をよく見てみよう。まず英英から引いてみる。
Merriam-Websterにぴったりの用例があった
車が走っているときに地面を捉える力、gripであることがはっきり書いてある。つまり、訳はこうなる(英文も再掲する)。
But it’s still amazing how much purchase it finds to thunder through and out of the bends.
それにしても、しっかり路面を捉えてカーブを爆走する姿には脱帽するしかない。
こういう意味は、大体辞書の一番下に書いてあることが多い。
意外な意味をもつ語は数多い
この誤訳を防ぐ方法は、「ちゃんと辞書を引く」である。トライアルならば誰しもそうするだろう。だが、実際の案件となれば、英文の一語一語に辞書を引いていたらどれだけ時間があっても納期に間に合わない。どうしたって「意味がわからない語」だけ引くことになる。
それでも、セルフチェックで「何かおかしい」と気付くことはできるはずだ。そのためにも、ふだんから日本語のトレーニングをするのが大事である。
もうひとつ、こうした場合には英和ではなく英英辞典で引くのがポイントである。
purchaseを英和辞典でも引いてみたらこう記載されている。
もちろん「手[足]がかり」という語がちゃんと載っている。だが、上に挙げた英英(Merrium-Webster)のほうがど真ん中の用例であることは誰しもわかるだろう。
英語辞書の権威、Merriam
辞書にはそれぞれ特徴がある。オンラインで引ける英英辞典はいくつもあるがほとんどLearners向けであり、説明も語釈も省略されていることが多い。
だが、上に挙げたMerriam-Webster Learner’s Dictionaryは、詳しい説明とぴったりの例文が載っていることが多い。だけだった。Merriamといえば英語辞書の権威。どれを引いてもしっくりこないというときは、ぜひMerriam-Webster Learner’s Dictionaryを試してみてほしい。
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