受験生用参考書とNHK講座から

わたしは翻訳校閲や英語教材の執筆・校閲をしているが、大学は英語科を出たわけではない。英語は30歳から勉強しはじめた。
 このときは完全な独学で、大学受験生用の参考書・問題集(英文標準問題精講など)とNHKラジオ講座を教材に使った。英検準1級とTOEIC910点までは取った。

薬袋善郎『英語構文のエッセンス Stage1, 2, 3』

 翻訳会社に入ってチェッカー・校閲者として働いてはいたものの、10年間くらいで壁に突き当たった。英語をちゃんと読めている気がしない。
 この時に出合ったのが薬袋善郎先生の本。CDブックの『英語構文のエッセンス Stage1, 2, 3』で、SVOCの構文分析を徹底的にやった。
 これでだいぶ進歩したと自分では思えた。だが10年くらいしてまた壁があった。やっぱり「英語が読めている気がしない」。

コーチについてAdvanced Grammar in Useを終える

 今度はやり方を変えようと思った。年齢のせいもあり、独学ではこれ以上伸びない。
 2017年に英語講師をしているバイリンガルの友人に会う機会があった。ここで相談したところ、コーチとしてついてくれるというので、一も二もなくその日からお願いした。
 教材も選んでもらった。「これをやってみない?」と言われたのはCambriedeで定評のある"Advanced Grammar in Use"。独習書ではあるが、ひとりでやるのはつらい。コーチが伴走してくれて、不明点を日本語の文法用語で解説してくれたから終えられたのである。それでも2年間かかった。

地の利を活用して獨協大学へ

 また、外国語大学である獨協大学から徒歩5分に住むという地の利を活かし、2018年に聴講生として入学した。言語学、英語学、英語史といった「学問」としての英語や、「翻訳」の講義も受けた。大学生に混じって必死に毎週課題をこなす日々だった。
 先生方はもちろんのこと、隣で学ぶ現役の大学生にも教えてもらいながら必死でついていった。これで、翻訳者や英語講師と言語学の話を交わすこともできるようになったし、翻訳についても「一歩進んだぞ」という自己肯定感を持てるようになった。
 もうひとつ、獨協大学では社会人向けのオープンカレッジも開講している。こちらで受けられる授業もあるので、同時に入学した。ライティングを2年間、そしてスピーキングは「毎日レッスン! 実践英会話」を受けた。いま思えばコロナ禍の前だったのが幸いである。

英語を話すコツは「日本語を話さない」こと

 「毎日レッスン! 実践英会話」というのは、文字どおり40分✕2~3コマ、毎日グループ英会話を受けられる。講師はネイティブスピーカーだ。こちらも現役の大学生と一緒に受けられたので、外国語大学の学生のレベルに必死についていくこととなった。
 というのは、受講前にクラスを決めるプレースメントテストが文法チェックだったせいか、一番上のクラスに割り当てられてしまったのである。最初は全然聞き取れないし話せなかった。
 そこで、「このままではダメだ」とひとつ決まりごとを設けた。どこに行っても「日本語を話さないようにする」がそれだ。お店で買い物をするときも、スーパーやコンビニならひとことも話さずとも用が足りるので、不便はなかった。
 そして3か月後。知らないうちに英語が口から出てくるようになったのである。夢も英語で見るようになった。
 そう、定評ある教材ならばおそらく何を使っても、英語は話せるようになるのだ、毎日話してさえいれば。ただしひとつだけ条件がある。「日本語を話さないようにする」。これが英会話のポイントだとはっきり悟った。

そして現在は……

仕事で英語を使う分にはもちろん不自由はない。だが毎日日本語を書いたり読んだりしているし、ネイティブスピーカーと直に話す機会もないので、じつは瞬発的なスピーキング力は落ちている。
 それでもリスニング教材の解説は書ける。毎日英語を「読む」だけではなく「聴く」トレーニングもつづけいるため、音声校正にも不自由はない。やはり、「一度」壁を超えることが大事だと悟った。

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