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アントグループの上海・香港上場が一時中止

『戦略をアップデートする』は、競争戦略コンサルタントとしてGAFA×BATH等の米中メガテック企業をはじめ国内外トップ企業の動向をフォローしている田中道昭が、日々行っているこれら企業へのリサーチの中から、その内容をnoteでシェアするものです。

今日の『戦略をアップデートする』は、第16回第35回第75回に続いて、アントグループのIPOの続報を取り上げます。

アントグループは、2020年11月3日付で「Suspension of the H Share Listing(「H株」上場の一時中止)」とIRサイトで発表しました。さらに、翌4日付けでは、「Further Information on the Refund of Application monies for the Hong Kong Public Offering「香港市場のIPOへの申込金の払い戻しについての情報」と同サイトに掲示されました。(なお、両発表とも、IRサイトに掲示されたのは11月4日。)

発表によると、アントグループは、規制当局から、上海証券取引所STARボードへの「A株」上場について、上場基準や情報開示基準を満たしていない、またフィンテック関連規制の改正に準拠していないとして、その一時中止(Suspend)を求められた(Proposed)としています。そして、その結果として、同時に予定されていた香港証券取引所への「H株」上場についても、その一時中止を求められたとしています。なお、上場プロセス再開の時期については明らかにされていません。

第75回でアントグループの香港上場の詳細について述べましたが、その時点では、IRサイトに香港証券取引所での「H株」上場についての詳細情報が開示されていた一方で、上海証券取引所STARボードでの「A株」上場に関する情報はまだ開示されていませんでした(現時点も、上海での「A株」上場に関する目論見書などは、アントグループのIRサイトでは開示されていません)。

そして、上海証券取引所が、11月3日付けプレスリリースというかたちで、「Decision to Suspend the Listing of Ant Group Co., Ltd. on the STAR Market(上海証券取引所STARマーケットへのアントグループ株式上場の一時中止の決定)」と、アントグループ宛ての決定を通知・公表。

同通知では、アントグループがIRサイトで挙げた通り、情報開示やフィンテック関連規制の改正に関わる要件が上場管理規則などの条項に合致しなくなる可能性を、上場一時中止の理由として挙げています。

上海での「A株」上場の中断に伴って、香港での「H株」上場も中断になった格好です。報道などでは政治絡みとの情報も聞こえてきますが、現時点では、一次情報からは真相はなかなか見えてきません。また、市場からの資金調達が不透明になったことで、さらにはフィンテック関連規制の改正の絡みで、アントグループの戦略へどのような影響が出てくるのか。引き続き、注視していきたいと思います。

田中道昭

留意事項: 本note記事は、アントグループが2020年11月4日に開示した資料などに基づいて作成したものであり、また冒頭に書いた通り情報のシェアを目的とするもので、いかなる売買や契約の締結/解約を勧誘するものではありません。

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