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アリババのスマート物流会社「カイニャオ」がマレーシアでeWTPハブのオペレーションを開始

『戦略をアップデートする』は、競争戦略コンサルタントとしてGAFA×BATH等の米中メガテック企業をはじめ国内外トップ企業の動向をフォローしている田中道昭が、日々行っているこれら企業へのリサーチの中から、その内容をnoteでシェアするものです。

今日の『戦略をアップデートする』は、アリババグループのスマート物流会社「カイニャオ」についてです。

アリババは、2020年11月3日、「Malaysia Airports and Alibaba Announce Operation Commencement of Cainiao Aeropolis eWTP Hub, Malaysia(マレーシア空港とアリババはマレーシアにおける”カイニャオ・エアロポリスeWTPハブ”のオペレーション開始を発表)」とプレスリリースを出しました。

プレスリリースによれば、マレーシア空港会社「エアロポリス(KLIAエアロポリス)」とアリババグループは、マレーシア政府とアリババグループによって締結された「eWTP」パートナーシップ下での合弁によって、新しいEフルフィルメント・ハブ「カイニャオ・オエアロポリスeWTPハブ」のオペレーションを開始、EC事業者向けのマレーシア国内での24時間以内配送、さらには世界各地への72時間以内配送を可能にするとしています。

第2回で述べましたが、「eWTP」とは「世界電子商取引プラットフォーム)」のことで、多くの事業領域から事業者が電子商取引プラットフォームに参加することによって、EC、物流、決済、人材育成などを統合した枠組みを構築、貿易障壁を取り除いたり企業支援を行ったりする仕組みです。中国政府やジャック・マー氏らが国際会議の場で提唱してきました。

アリババのスマート物流会社であるカイニャオにとって、同eWTPハブは、クアラルンプール国際空港の位置付けをASEAN内の主要流通ゲートウェイの一つに高め、カイニャオ自身のロジスティクス・エコシステムを強化するものでもあります。

カイニャオ(動画参照)の創業は2013年とまだ歴史は浅いですが、そこに投じられている資金はとてつもない額です。富士通総研レポートによれば、「投資額は、フェーズ1で1000億元、フェーズ2で2000億元を合わせて3000億元(約5兆円)に達すると見込まれ、5~8年にかけて一日平均で300億元(年間で10兆元、約200兆円)のEC取引を支え、24時間配達可能な全国を張りめぐるスマートロジスティックネットワークを構築しようとしている」(研究レポート「中国のネットビジネス革新と課題」)と言います。

2016年にジャック・マー氏が打ち出したニューリテール戦略は、「オンライン+オフライン+物流+テクノロジー」によって顧客の経験価値(カスタマーエクスペリエンス)を最大化するというものです。そして、カイニャオのビジョンは、「中国の国内はどこでも24時間以内、世界中どこでも72時間以内に配達できる」物流ネットワークを構築すること。アリババの事業構造やニューリテール戦略における重要な基盤として機能しているのが、カイニャオなのです。

田中道昭




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