メルカリのデータアナリストのインターンに北海道からリモート参加してみた
こんにちは、Growth Analyticsチームでデータアナリストとしてインターンをしている@shoumaです。この記事では、これまで6週間のインターンで私が体験したことをまとめています。
なぜ書くのか
インターンを探している学生に対し、メルカリのデータアナリストのインターンってどんなものなのか、解像度上げに貢献できればと思い、書かせて頂きます。
そもそもデータアナリストのインターンに関する情報がネット上に少なく、困っている方も多いのではないでしょうか。実際、私も上記の理由からあまり事前にインプットすることが出来ず、始まってみるまで何をするのか明確には分からない状態でした。
原因の1つとして、データアナリストという枠組みでインターン出来る会社が少ないこと、また採用している人数も少ないことが挙げられると思います。そうした中で、私の経験は一定貴重なものだと感じており、読者の皆様に少しでもイメージが伝われば幸いです。
自己紹介
Analyticsチームでインターンをさせて頂いている石本翔真と申します。北海道大学の大学院に通う修士1年生で、普段は探索的データ解析の手法に関する研究をしています。
私はこれまで就業型のインターンに参加したことがなく、今回が初めての経験でした。なぜ数あるインターンシップの中から、メルカリのデータアナリストを選んだのかについて、お話しします。
私はもともと、大学院での研究や学部の時に参加したデータ分析コンペの経験から、分析に対する興味があり、データを扱うような仕事がしたいと思っていました。同時に、ビジネスサイドに携わることもしてみたかったため、その両者を実現できるデータアナリストというキャリアが第一候補に入りました。
それを実現する場として、膨大なデータ基盤を保持している会社であり、自分が普段使っているプロダクトに携われるならば、やりがいが大きそうだ、と考えました。こうした理由から、私はメルカリのデータアナリストのインターンに参加することを決めました。
8月16日~9月30日までが当初の予定でしたが、その後延長して働かせてもらっており、現在もメルカリでインターン中です。
そもそもデータアナリストの立ち位置とは
具体的な私の体験談に入る前に、メルカリにおけるデータアナリストについて、簡単にご説明します。
メルカリのData Analyticsチームは、データ分析を基に会社の様々な意思決定を支援する組織であり、担当する領域によってさらに3つのチームに分かれています。今回は各チームに1人ずつ、計3人のインターン生が配置されました。
私が所属しているのはGrowth Analyticsチームで、マーケティング施策における意思決定をデータ分析で支援する組織です。マーケティングサイドの部署と連携して、ビジネス上の課題発見から具体的な課題特定、施策検討までを、データドリブンな視点で行います。また、施策の効果検証を通して次の施策の改善提案までを一貫して行います。
働き方
私は大学院の研究と両立したかったため、週3回、1日8時間ペースで取り組んでいました。フルフレックス制で曜日や勤務時間を自由に設定できるので、研究や学会で忙しい大学院生としては非常に働きやすい環境でした。
また、メルカリにはYour Choiceという考え方があり、ワークスタイル(リモート・オフィス出社)を自ら選択して決めることができる点で、私のような地方の学生でもハンディーキャップを背負うことなく業務に臨む事が出来ました。
1日の流れ
典型的な1日の流れをご紹介します。
9:00-9:30 メンターさんとの1on1
インターン生にはメンターさんが1名付き、業務のサポートをして下さいます。私の場合は1日のはじめに30分間、メンターさんとの1on1がセットされていました。ここでは主に
・進捗の壁打ち
・業務で躓いていることの相談
・今日やることの確認
などをしていました。相談の内容によっては、その分野に詳しいメンバーとのMtgを入れて頂けることもありました。実務経験がない私にとって、手取り足取り教えてもらえるこの時間は本当に貴重でした。
10:30-11:30 他部署とのMtg
データアナリストは基本的に他部署と連携しながら事業に携わっていきます。私もマーケティングサイドとのMtgに参加していました。
メルカリのビジネスを動かしている主要メンバーで繰り広げられる議論を聞くことが出来るのは、非常にエキサイティングでした(とはいえ最初の方はビジネス用語がわからず、全くついていけませんでしたが、、笑)。
また、私の分析の過程をこうしたMtgで共有する機会もありました。様々な観点でのコメントを頂き、次の分析の糸口を見つけることが出来る、貴重な機会でした。
12:00-13:00 リモートランチ
インターン期間中に色々な方とのリモートランチを組んで頂きました。Analyticsチームでのランチであったり、インターン生同士のランチであったりと、社員さんや部署を超えた様々なメンバーと交流を図れる、有意義な時間でした。
13:00-18:00 集中作業時間
今ある仮説をもとに分析設計をする→SQLを書く→結果の解釈をする→ドキュメントにまとめる、という作業を繰り返していました。
主にここは個人で集中して取り組む時間ですが、分析設計やSQLの書き方で不明点があれば、slackでメンターさんやマネージャーさんに質問したり、臨時で1on1を入れて頂いたりして、その都度解決しながら進めていました。
短期間で成果を出すことが求められていたので、次回出勤時に壁打ちできる材料を1つでも作れるようにと、心掛けて取り組むようにしていました。
取り組んだタスク
ここからは私が具体的に取り組んだタスクのご紹介です。メルカリではインターン生向けのワークが用意されているわけではなく、実際に社員さんがやっているようなタスクが与えられます。
私は「カテゴリ分析」というテーマについて取り組んできました。難しかった場面や試行錯誤の過程も併せてお伝えできればと思います。
背景・課題
メルカリは総合フリマであり多くのカテゴリの商品を扱っていますが、事業を成長させていくための課題はカテゴリごとに異なります。メルカリの規模が大きくなるにつれ、全カテゴリを対象にした一律の施策を効率良く実施するのは困難になってきます。
例えばキャンペーンをやるにしても、お客様に刺さりやすいカテゴリとそうでないカテゴリがあるかもしれません。理想としては、各カテゴリごとに特化した戦略を立てることが望ましいですが、全カテゴリについて細かく施策を作り込むのは困難です。そこで、優先順位を立てるために、今後推進すべきカテゴリを選定する必要が出てきます。
今回取り組んだ分析では、選定における一つの切り口として「ユーザー軸で見たときにエンゲージメントを高めやすいカテゴリがあれば、それを推進すべきなのでは?」という問いに取り組みました。
例えば、これまでファッションのカテゴリを買うときしかメルカリを利用していなかったユーザーが、試しに本のカテゴリを購入してみた途端、それをきっかけにメルカリを頻繁に利用するようになった、のようなケースがたくさんあるならば、本のカテゴリを推進すべきなのでは、といった具合です。どのカテゴリがそれに当たるか、分析を私が担当しました。
分析設計
「エンゲージメントを高めやすいカテゴリはなにか」という問いに対する答えを出すための分析設計をしました。タスクの性質上、厳密なA/Bテストをすることは困難であったので、以下のようなスキームで擬似A/Bテストのようなものを考えました。
データベースの中から、N月以前には特定カテゴリを買ったことがないユーザーを参照してきて、N月での購入有無によってA群とB群に分割します。その後の経過を見て、購買率や出品率に差が出るかを検証しました。
しかしこのままでは、問いに対する答えを正確に出すことは出来ません。なぜなら、A群とB群のユーザーの質が均一でない、という問題点があるからです。
どういうことかというと、A群はN月に必ず1点以上購入しているので、ある程度アクティブなユーザーが多い、一方でB群に対しては特に制約を設けていないので、登録しただけでほとんど使っていない人も含まれています。この2群で比較をして、購買率や出品率に差が出たとしても、その差がカテゴリ経験の有無によるものなのかは検証できず、元々のユーザーの性質によるものなのでは、ということになってしまいます。
ユーザーの質を揃えて正しい結果を出すためには、どういう条件でユーザーを絞って抽出すればよいか、試行錯誤の結果、以下の3つに落ち着きました。
A/Bテストができない中でも、問いに対して厳密な答えが出せるような分析設計をする。これが難所であり、メンターさん、マネージャーさんに何度も壁打ちをしながら進めていきました。
分析結果
分析をしていくと、大きく2つの傾向が見えてきました。1つ目は、本やトレカのように買い替えが頻繁に起こるカテゴリを一度経験することで、エンゲージメントが高められる。2つ目は、キッズや化粧品の出品を一度経験することで、同じ出品者がレディースのカテゴリも出品もするようになるといった、他カテゴリと親和性が高いカテゴリを経験することによってエンゲージメントが高められる。
この結果は定性的にも納得感のあるものであり、楽しみを感じながら取り組むことが出来ました。
追加分析
一方で、エンゲージメントを高めやすいカテゴリを見つけたとして、それをそのまま促進すればよいという話ではないというご指摘を受けました。なぜなら、そのカテゴリに関心を持っているユーザーの規模がまだわかっていないからです。
例えば、キッズのカテゴリを経験することによってエンゲージメントが高まったとしても、そもそもキッズに関心があるユーザーがほとんどいなかったら施策には落ちないはずです。
そこで、各カテゴリに対して関心を持ってはいるものの購入(出品)には至っていないユーザーの規模がどの程度なのか、追加で分析を行いました。関心の有無をどうやって判定するかが難所でしたが、詳細画面閲覧の有無を関心の有無に置き換えて分析を進めました。分析をする上で、欲しい数字がはっきり求まることばかりではなく、テーブルから集計可能な指標にどう置き換えるか、これが重要だなと感じました。
提案
以上で、○○というカテゴリに対して関心はあるが購入(出品)には至っていないユーザーが多い、そのカテゴリを一度でも経験してもらうことでユーザーのエンゲージメントを高めることが出来る。といったストーリーが完成しました。
これを基に、2つの提案に結びつけました。1つ目が、対象ユーザーにカテゴリ限定クーポンを配布し、高エンゲージメントカテゴリの経験を促進すること。2つ目が、共通の画面であるピックアップタブや出品画面に注力カテゴリを掲載し、エンゲージメントの底上げを狙うことです。
インターンの成果報告でここまでを発表させていただいたところ、マーケチームの方からslackでリプを頂き、すごくやりがいを感じました。
分析については信頼性の高いインサイトを提示できたと思っているものの、提案に関してはもっと作り込めたのではと感じており、反省点の1つでした。例えば、カテゴリ限定クーポンを配布することでどれほどの利益が見込めるかの見積もりや、特定カテゴリに誘導することで他のカテゴリの売上を毀損しないかの確認、など、やれることはまだたくさんあったなと感じています。
インターンを通して感じたこと
社員並みの裁量権と手厚いサポート
メルカリにはValueの1つとして、”Be a pro”という言葉が掲げられており、全員をプロとして尊重するような文化があります。そしてそれは、インターン生も例外ではありません。
入社前の事前Mtgでマネージャーさんから「社員並みの活躍を期待しています」という言葉を頂きました。その前置きに違わず、業務ではやるべきことを自ら考え、遂行する力が常に求められました。
何をどう分析して何に答えを出すか、具体性を持って与えられるわけではないので、自らの思考力が試されます。ちなみに、アクセスできるリソースも社員と同様で、社内ドキュメントやslackなど、メルカリのすごい人たちが残していった情報を無料で読み漁ることが出来ます。
一方で、周囲の方から必要十分な助言を頂けるのもまた事実です。既に書きましたが、疑問点があればslackを飛ばす、文章で説明しづらければ臨時で1on1を入れてもらう、このように積極的に周囲を頼る姿勢が重要であると感じます。
自分で考えてみたものを叩き台として持っていき、アドバイスを貰ったり軌道修正してもらう。これを何度もやってもらいました。メンターさん、マネージャーさんはじめ、本当にたくさんの時間を割いて頂き、感謝してもし切れない思いです。
メルカリのデータアナリストはコンサル出身・エンジニア出身・分析会社出身・事業会社出身など実務での分析経験が長い方が多く、その中で私のように未熟なインターン生が業務を遂行するためには、受身ではなく主体、個人ではなく周囲をうまく巻き込む、この姿勢が求められていると感じました。
分析の難しさ
分析って難しいな、と改めて感じました。具体的な分析手法について、メルカリで使用されているBigQueryの使用経験はなく、SQL自体が授業でやった程度だったので、苦戦を強いられました。また、今回は厳密な統計学を使う場面は多くありませんでしたが、今後そのあたりの知識も必要になると思います。
しかし、データアナリストとしてより重要になるのは、どのような問いを設定するか。問いに対する答えを出すためにどんな分析をすればよいか。これを考えることだと思います。求めたいことと分析したことが一致していなければ、費やした時間はすべて無駄になってしまいます。これを実践で経験できたことは、今回のインターンでの大きな学びだと感じています。
求められるのはプロセスよりも結果/解釈
前節では、データアナリストの仕事について解像度を高めて頂くことを目的に、分析設計や考え方の筋道を具体的に書くことを心がけました。一方、アウトプットを事業部の方に共有する際にはそういった過程はなるべく省き、むしろ結果から何が言えるのか、解釈の方に時間を使うべきだと教わりました。
研究論文ではどういう条件で実験をしたのか等、出来る限り厳密に書くことが求められる分、この助言は私にとって目からウロコでした。データアナリストは他部署の前でインサイトを共有する機会が多い性質上、難しいことをわかりやすく説明する能力が高い水準で求められるのだと実感しました。
提案して終わりではなく、施策の遂行まで
現在私は事業部の方と協働して、カテゴリ戦略を具体的な施策に落とし込もうとしている最中です。分析・提案して終わりではなく、施策やその評価等、サイクル全般に携われるのが事業会社と受託会社の違いであり、メルカリでデータアナリストをすることの魅力であると感じています。
終わりに
本当に学び・やりがいの多い6週間でした。
データアナリストに興味がある方にとっては、仕事の全体像から具体的な業務内容までをしっかり学べる、非常に良い機会なのではと感じます。
正直、周りのインターン生はとても優秀で、数々のインターンで実践を積んでいる猛者だったので、最初はうまくやれるか不安でした。しかし、私のように未経験でもキャッチアップ出来る環境になっているので、チャレンジしてよかったなと今では思っています。
データアナリストのインターンを共にしたmidookaさん、kurimotoさんの記事はこちらになります。是非ご覧になって下さい。
▼採用情報サイト・関連記事はこちらから