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お金には変えられない読書の悦び【書評】ハマトンの知的生活のすすめ P.G.ハマトン

生きていくためにお金を稼ぐことは必要なことだ。仕事だって、それなりにやりがいがあることも大切。ビジネス成功本・指南本は数えきれないほどある。しかし、ビジネスに没頭すればするほど、その一方で知識の深い探求の悦びは失われる。どちらにも時間やエネルギーが必要だからだ。

哲学者や研究者になり切れない「普通」の人は、結局、どこかで折り合いをつけていかなければならないのだけれど。時には「知的生活」について、わかったようなことを言いたくなる。ハマトンの言葉は含蓄がある。ハマトンの言葉をストックしておくと、格好いいこと言えそう。

読書は計画的に

知的生活を楽しむためには、時間が有限であることを知らなければならない。世の中にある本の数は膨大だ。1年間に出版される本の数は7万5千冊を超えているのだそう。新刊本を追いかけ続けても、すべてを読めるわけではない(あたりまえ)。自分の興味や関心を絞ることも大切だ。ハマトンの言葉に、痛いところを突かれた。

「 読書については、ほかのことにもまして現実的になる必要がある。本にはページ数が書いてあるのだから、少しばかり計算すれば、自分が一生のあいだにどれだけの本を読めるかその限界が分かるはずだ」

kindleの読み放題プランでも相当の数の本が読める。しかし、気がつくと、朝から晩まで読んでも読み切れないほどのストックがたまる(ほしいものリスト)。自分の読書スピードには限界がある。いくら速読っぽく読めるったって、理解しながら読もうと思えば、1時間に何冊も読むことはできない。

だとすれば、今の自分の持つ時間と読める量の折り合いをつけなければならない。そうなると、いかに「捨てる」かがキモなのだ。自分のハマりやすい性質を考えて、すでにマンガは読まないことにしている。しかし、さらに言えば、軽め(内容が軽い)の自己啓発書なんかも、時間の無駄になることが多いかもしれない。表紙とタイトルだけで惹きつける本も多い。

なんだかいいことが書いてあるように思っても、結局は何も残らない読書のために時間を費やすのは無駄なことになる。やる気を出すために本を読む段階は終わっている。

読める本、読みたい本を厳選しなければならない。厳選したうえで、濫読する。厳選したとしても、読んでも読んでも読み切れないからだ。人生は有限である。本読みにとっては、これがつらい現実だ。

最低2時間の読書を

そのうえで、読書には最低限の時間を充てるのだ。ハマトンは2時間を読書に使うようにという。本当は4時間と言いたいそうだが、職業作家や哲学者でもなければ、そんな時間はとりようがないので(佐藤優氏は4時間)

「知的生活を志す人がまず最初にやらなければならないことは、規則正しい生活をし、時間を合理的に使う習慣を身につけることだ。そして、そうした毎日の生活の中で、必ず毎日2時間、最良の本を読むようにすることだ。毎日規則正しく最低2時間の読書をしてみよう。2時間でも1年間続ければそれは700時間以上になる。これだけの時間、継続して何かに打ち込むことができれば相当なことができるはずだ。」

7つの習慣でいえば、読書は第二領域に入る。つまり重要だけれど、緊急ではないことだ。どうしても、余った時間で読もうとしてしまう。一日が終わった後の楽しみにしていることが多いけれど、それでは、とても2時間など確保することは不可能だ。

時間は取り分けておかなければ、簡単に消え去ってしまう。もし、本当に読書が大切だと思っているなら、あらかじめ、その時間を取り分けるはずだ。今は、一日のスケジュールを「時間割」にして管理しているが、その1コマに「読書」を入れてしっかり読む必要を感じた。

toggleで時間計測をしていると、実に無駄なことで多くの時間を使っていることが多い。ちょっとしたネットサーフィン、SNSでのやり取りで、20分~30分はあっという間だ。そういう時間が一日のうち何度もあれば、実は、読書に2時間を割くことは可能だと分かる。

問題は時間を自覚的に使っているかどうかだ。本を読むためには、もっと、もっと時間管理を突き詰めることが必要だ。

なんだかんだいっても本が好き

お金のことだけど、十分に生活の余裕があるわけではない。時々、生活が大変だなと思うこともある。将来を考えると、何の保証もないように思える、真っ暗闇の谷を見下ろして身震いする気持ちになることもある。もっと馬力をあげて働いたほうがいいかもとか、葛藤を感じることもある。

それでも、本を読んでいる時に、時々、感じるあの恍惚感。あ~、これ以上の幸せってないよねと感じる、あの知的な悦び。それは、他の何物にも代えがたい。その時、その瞬間を感じるために、日々生きて、日々読んでいるのだ。その時間が確保できれば、他のものはオプションに過ぎないのかもしれない。ハマトンだって、こう言っている。

「あなたが最高の文学を読んでいるときは、ロスチャイルドのような大富豪と同様に、最高に充実した時間を過ごしているのである。 いや、あなたのほうがロスチャイルドよりもはるかに充実した時間を過ごしているといってもいい。私は素晴らしい書物を開くとき、いつもこうつぶやいている。 「私が羨む大富豪がいるとすれば、それは私が今読んでいる本以上のものを読んでいる者だけだ」」

ハマトン、あんたも、同じだね。と、生意気なことを言ってみたくなった。っていうか、ハマトンって誰なんだろう。

* 渡部昇一著『知的生活の方法』に大きな影響を与えた著者。英国の著述家であり美術雑誌の編集者だった。「知的生活のすすめ」は1873年に刊行した自己啓発本の名著である。


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大人のADHDグレーゾーンの片隅でひっそりと生活しています。メンタルを強くするために、睡眠至上主義・糖質制限プロテイン生活で生きています。プチkindle作家です(出品一覧:https://amzn.to/3oOl8tq