見出し画像

「これからの死に方」平凡社新書 島 次郎

生命倫理の研究者による「葬送の自由」を論じる本だ。軽い葬儀本だと思って読み始めたので、途中で、倫理的な問題に触れ、頭がこんがらがってしまったが、その分、考えたことがないことを考えて思考が深まった。

・火葬がよくて、土葬がダメなのはどうしてか
・チベットの鳥葬はどうなのか
・献体が良くて、衝突実験や兵器実験に遺体を使うのが良くないのはなぜか

意外と自分の頭が、いわゆる育った国の「常識」で縛られていることが分かり興味深い。

葬送の自由はどこまで認められるか

安楽死から、遺体の適正な使用まで・・終活は気軽なものではなく、生命倫理に肉薄したテーマであることが良く分かる。人間は倫理から逃げることはできない。しかし、倫理感はある意味で、作られたものであるとも言える。国により、宗教背景により、何がタブーとされるかは異なる。

遺体の処理としての散骨から話は発展し、米国では献体された遺体が実に様々な方法で用いられることが触れられている。中には、車の衝突実験に使われたり、手術の練習台になったり、兵器実験に使用される(これは法で規制?)こともあるのだとか。では、どこからどこまでが、遺体の正当な使用範囲なのか?という問いかけにこたえるのは難しいことだ。

自分が自分の遺体をこのように使ってほしいと思えばすべてが許されるのか?そうではないのか?どこまで葬送は自由なのか?、オランダの安楽死、フランスの骨壺管理の法案、岩見沢の散骨禁止条例、様々な国や地区の事例を出しながら論じていく。途中で頭が混乱してくるだが、最終章では「送られる側と送る側が話し合って決めると良い」という、わりと普通の結論に達しているので、その辺はちょっとニヤっとした。

国や背景が違えば、ずいぶんと、何をタブーとするのかという「倫理」も異なるのだという発見は新鮮であった。ここを突き詰めていくと、いわゆる「常識」を覆すヒントがあるかもしれない。やはり、物事の本質は、タテ(歴史)・ヨコ(世界)・算数(数字・ファクト)だな。(参考:成り行きの人生哲学【NHK】最後の講義「大学学長 出口治明」

#島次郎 #これからの死に方 #生命倫理 #終活 #平凡社新書 #書評 #読書感想文

この記事が参加している募集

読書感想文

大人のADHDグレーゾーンの片隅でひっそりと生活しています。メンタルを強くするために、睡眠至上主義・糖質制限プロテイン生活で生きています。プチkindle作家です(出品一覧:https://amzn.to/3oOl8tq