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ASD上司、ADHD上司。発達障害傾向を持つ上司との付き合い方。

発達障害が「普通」の会社で働いていくのは大変なことだ。周囲の人も大変だ。私がADHD傾向が強いから、周りの人に本当に申し訳ないと思っている。今でこそ、自分の限界が分かり、フリーで生きていく道を選んだので、職場でのトラブルは少なくなったが、以前は、迷惑かけっぱなしだった。(参考:ADHDに合う仕事、合わない仕事。私の場合。

しかし、これよりもっと大変なことがある。それは、上司が発達障害(もしくは、その傾向を帯びている)の場合だ。私は、20代の前半から発達障害に関心を持っていたので、多くの書籍を読んでいた。それで、発達障害傾向のある上司に出会ったときには、すぐにそれとわかったけれど、もし、そうでなかったとしたら、大変苦しんだだろう。

わかっていても苦しんだけど。

はちゃめちゃな「ADHD上司」

過去にお世話になったADHD上司は、とても頭のきれる人だった。一流企業に勤めていたこともあるし、アイデアマンで行動力が抜群だった。何か国語もペラペラだったし。話題豊富で次から次へと楽しい話をしてくれて、この人と一緒にいると、時間もあっという間だった。この特性そのものが、ADHDが長所として表れているものであるともいえる。

しかし、もちろん、この長所は裏を返せば短所になる。朝令暮改は日常茶飯事。大号令をかけて、一気にプロジェクトを動かしたと思えば、いきなりの中止・方向転換。中には振り回されて、居住地やら、将来のプランやら、もうむちゃくちゃになってしまった人もいる。以前、一緒に働いていた同僚の一人は、この上司の言うことは基本的に聞かないようにしていた。どうせすぐに変わるから。

ただ、行動力が半端ないので、うまく行ったときの突破力は見事なのだ。まあ、一人でやってくれるといいのだけれど、プロジェクトを引っ張る立場だと、周りが大変すぎた。参謀のような人がいて、クッション役をやってもらえないと疲弊する。

私はADHD特性が強いから、この上司の思考・行動パターンは手に取るように分かる。私が上司になった時もほぼ同じだった。ちなみに、ADHD上司にADHD部下、この組み合わせは相性が悪い。ADHD部下は、上司の言うとおりに動けないことが多く、だいたい指示を出されるのが好きではない。人間的には好きな上司だったが、仕事を一緒に行うという観点では、残念ながら困難な相性だった。

職人気質の「ASD上司」

ASD(アスペルガー的な特性)を持つ上司の下で働いたこともある。この上司には、徹底的に訓練されて、育ててもらった。尊敬していたのは、感情の乱れ・心身の乱れが一切生じない安定感だ。まるでレールの上を走っているかのような、一糸乱れの無い生活スタイル。まさに、この長所こそがASD気質である。

そして、この長所も短所になりうる。このASD上司の場合は「人間」への興味が極端に薄かった。感情の機微はまるで通じない人だった。初めて、数か月がかりの大きな企画を成功させた時に、フィードバックの時間をとってもらったが、にこりともせず「ペラペラ(あ、薄いって意味ね)だったね。でも、俺も最初はそうだったよ。」と言われた衝撃を思い出す。怒ってもいないけれど、感情も入っていない。ちょっとびっくりした。

ある意味のほめ言葉だったらしいというのを、あとで知ったけれども、ちょっと傷ついた。まあ、社内では評判は悪かった。感情の機微が読めない(読まない)から。でも、本人はいたって幸せに生きており、超ポジティブだった。落ち込むということが、まるでないのだ。しかし、周りはけっこう落ち込んでいた。

ASD上司とADHD部下との相性は、それほど悪くないと思う。これは自分の経験からだ。ADHDは発想力はあっても、ひとつのことを決まったように行い続ける継続力は弱い。ASD傾向のある上司は、一つのことを行い続ける力が尋常ではないほどある。そのペースにうまく乗れると、ADHDは大きく成長することができる。気質は変わらないけれど、自律スキルが育ったのは、このASD上司のおかげだと思っている。

この上司は、ASDでも、超ポジティブで自分大好きな人だったから、二次障害を起こすことはなさそうだった。しかし、少なからぬASDは、コツコツ行う仕事は得意でも、出世してマネージメントを手掛けるようになったりすると、一気にコミュニケーション上の問題が大きくなり適応障害を起こすこともある。周囲の人が気をつかいながらも、うまく仕事を進めていける、このASD上司は、ある意味、成功者なのかもしれない。

上司の「強み」を活かす

さて、二人の例を挙げたが、振り返ると、どの職場にもASD・ADHD傾向の同僚・上司がいた。そして、こういう傾向を持つ人は、それほど珍しくもない。とくにビジネスで業績を上げる人は、そうなんじゃないかな。あるスタートアップ企業では、尖った人材を積極的に採用したら、ほとんどが発達障害の特性を持つ人だったようだ。まあ、そうなるだろう。

そこで、発達障害を排除しようとするのではなく、その特性を「強み」に変えるようにすることが大事だ。

これは、ドラッカーの教えだ。上司の「強み」を部下が使うという発想だ。一般的に人は、自分自身よりも他の人の「強み」「弱み」を冷静に見極めることができる。そこで、上司の特性の「強み」に注目していく。

「上司を軽視してはならない。上司は物事が見えないように見えるかもしれない。愚かに見えるかもしれない。しかし、それでも上司を高く評価しておくに越したことはない」(未来企業

批判したり、居酒屋で愚痴を言うのは容易だけれども、結局、それは何にもならない。その上司のもとでやっていかねばならないのなら、できる限り、マネジメントの考え方で臨むべきだ。

発達障害上司との付き合い方

先のADHD上司の場合は、彼が大号令を出す前に、そのプロジェクトの妥当性を検討するNO.2をうまく張り付かせる。皆で動いてからでは方向転換が大変なのだ、旗振り役と、冷徹にプロジェクトを実行できる部隊長を分けるように社内の役割を持っていく。

部下の立場からやるのは大変だけど不可能ではない。今後もずっと続いていく関係なら、一度、ADHD上司の特性で出ている被害を話し合ってもいい。そのうえで、解決策を持っていることを話せば、聞く耳のある人であれば聞き入れてくれる。ADHD上司は、自分でもハチャメチャなことが分かっていることが多いので、わきをしっかり補佐してくれる人がいれば、かなり重用してくれるはずだ。

私もリーダーとしてプロジェクトを回す時は、かならず補佐してくれる人を選ぶようにしていた。思いもよらない方向にアイデアがいくし、実行力もそれなりにあるので、迷惑をかけるから、一度アイデアを形にしてもらった後は、私は旗振り役から降りるようにしていた。スタートアップ専門という感じだ。迷惑をかけないためにはそれしかない。自分のことが分かるADHD上司であれば、一度話し合ってみてほしい。

ASD上司の場合は、彼に対人関係スキルを望まないことだ。もともと、対人関係に興味を持っていないので、細かな配慮が必要な仕事はしたくないはずだ。その辺は、誰かが肩代わりできるように円陣を組んでおく。苦手なことを、その上司に押し付けないようにする。責任感から取り組むはずだけれど、うまく行かないことは火を見るよりも明らかだから。

私はADHD特性があるとはいえ、コミュニケーションは苦手ではないので、社内の地雷処理や、複雑化したコミュニケーションの問題は手をあげて取り組んでいた。やがてASD上司から頼られるようになった。もちろん、私も面倒でやりたくない気持ちも芽生えるのだけれど、ASD上司が一度もめてしまった後に、それを収集するほうが、もっと大変だ。

結局は、皆でフォローし合うこと、チームとしてやっていくしかない。職場の発達障害は上司でも部下でも大変なものだけれど、自分も含めて、どこか凸凹しているのが人なのだ。このことを理解していれば、少しは寛容になれるかもしれない。そして、寛容さこそ、この世界に必要なものなのだと思う(ADHD当事者として。)


大人のADHDグレーゾーンの片隅でひっそりと生活しています。メンタルを強くするために、睡眠至上主義・糖質制限プロテイン生活で生きています。プチkindle作家です(出品一覧:https://amzn.to/3oOl8tq