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自分を貶めてしまうあなたへ【ニーチェ超解説】

いつも自分のことを

「ダメだダメだ」

と否定してしまうあなたへの、
大きなヒントになるかもしれません。


メンタリスト 彩 -sai-(@psychicsorcerer)です。

【ニーチェ超解説】は、
ニーチェの言葉を私なりの解釈で
「超」解説するシリーズです。

早速、今回の言葉を見てみましょう。

自分自身を軽蔑する者とても、なおやはり軽蔑者として自己を尊敬する。
(『善悪の彼岸』78)


超解説

今回の言葉はこの一文だけです(笑)

これは、
ニーチェが得意とした
「アフォリズム」
と呼ばれるやり方ですね。

アフォリズムとは、

物事の核心を捉えた内容を
簡潔な言葉で表現したもの

のことで、
「箴言」「警句」
等と訳されます。

日本で「格言」と言われるものと
ほとんど同じです。


さて、
今回の言葉の内容は
軽蔑についてですが、

ニーチェがこの言葉で、
軽蔑をよいものと
捉えているのか、
そうではないのか。

判断に迷います……。


そういえば、
過去の【ニーチェ超解説】で
軽蔑が出てくる言葉が
ありました。
 ↓ ↓ ↓

こちらで取り上げた
ニーチェの言葉では、

愚者と呼ばれる人が、

自己讃美をするためには
他人を軽蔑することが
必要不可欠だ

と述べていました。


この考えを使って
今回の言葉を見てみると、

自分自身を軽蔑する者は、
その軽蔑によって
自分自身を讃美している

軽蔑される側の自己は、
たしかに
軽蔑され貶められている。

しかし同時に、
軽蔑する側の自己は、
讃美され尊敬されている。

このように解釈できそうです。


自己讃美のために
他人を軽蔑する

こういう(愚者の)やり方を
ニーチェはよいものとは
捉えていない。

そのように上の記事では
解説しました。

そこには、

他人との比較によって、
つまり、

他人を下に見ることで、
結果的に
自分を上に感じようとする

というやり方に、
ニーチェが不健全さを
感じていたことが
大きいと思います。

しかし、今回の場合は、
自分自身への軽蔑です。

そこには、
他人との比較はありません。

では、
自分自身への軽蔑は
健全なものなのでしょうか?

それともこれも不健全?

やはり判断に迷います……。


そもそも
なぜ自分自身を軽蔑する
なんてことが起きるのか?

引用した著作での、
今回の言葉の2つ前にある言葉が
ヒントになるかもしれません。

平和状態にあるとき、好戦的な人間は自己自身に襲いかかる。
(『善悪の彼岸』76)

これは、

平和で戦いがないと、
好戦的な人は
外側でその好戦性を
発揮する機会が持てず、
自分自身という内側に対して
好戦性を発揮してしまう

ということを述べています。

ニーチェはどうやら、

本来は外に向かうものが
外に向かえなくなると、
自分自身に向かっていく

という考えを持っていたようです。

そしてニーチェは、
人間の好戦的な部分を
不健全なものだとは
捉えていなかったようなのです。

人間が力強く生きる上で
充実した感情が
好戦性としてあらわれる

だから、

この好戦性は健全なものだ

それぐらいに
捉えていた可能性もあります。

(ニーチェの著作『道徳の系譜』
 その「第二論文」では、
 人間のこの側面について
 詳しく述べていると思われる
 箇所があります。)


このことを踏まえて
自分自身への軽蔑を
見てみましょう。

もし、
軽蔑する自己と
軽蔑される自己を
完全に切り離してしまって、

「私はこんなに自分を
 貶めることができる!
 そんな私ってすごい!」

というような形に
なってしまっているなら、

自分自身への軽蔑は
不健全なものだと
ニーチェは捉えるのでは
ないでしょうか。

(上の記事の愚者のやり方を
 自分自身にやっている形なので。)


しかし、
自分自身を軽蔑する行為が、
生きる過程で
力強い感情が溢れるあまり、

「あまりにも力があり余る!
 自分のダメなところを
 攻撃して、
 自分を軽蔑せずには
 いられない!」

という形であらわれたものなら、
ニーチェは、
自分自身への軽蔑を
不健全なものとは
捉えないかもしれません。


この健全か不健全かを
区別する微妙な違いが、
ニーチェを理解する上で
非常に大事なことだと思います。

皆様は、
今回の言葉をどう捉えますか?


あなたが、
あまりにも激しく
自分自身を貶めたくなる

そんな気持ちが湧いてきたなら、
それは自分の力強さが
自分自身に向かっているだけ
なのかもしれません。

その力強さに目を向けたら、
あなたは自分自身の
別の姿に気付いたことに
なります。


今回の超解説は以上です。

ご参考になればと思います!


参考文献

フリードリヒ・ニーチェ『善悪の彼岸 道徳の系譜』信太正三(訳)、筑摩書房、1993年。


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