マガジンのカバー画像

どついたるねん。

100
きっと仕事のためにはならないでしょうが、暇つぶしにはなるかと思います。そんな、エッセイです。(2019/10/1〜2021/5/23)
運営しているクリエイター

#思い出

ドモアリガトインターネット

小学生の頃、空気を読むということがどういうことなのか分からなかった。 「空気読めよ」と言われても、そんなものどうすれば「読める」のか見当もつかなかった。 だから私はいつもシーンに合わせた適切な言葉を選べず、会話を白けさせていた。 きっと周囲から見れば相当扱いづらい人物であったことだろう。 そして実際、私は集団のなかで孤立していた。 私がインターネットと出会ったのは、そんな小学校六年生の頃だ。 父が新しいデスクトップPCを購入したことで、使わなくなったWindows

万引き犯を捕まえたときのこと

実を言うと、私は万引き犯を捕まえたことがある。 あれは大学生の時分。 秋口――最寄り駅前の本屋に向かおうと歩いている最中のことだった。 駅から私の家までの道にある、私が頻繁に使っていたコンビニの前を通りがかったとき、店舗から一人の男が駆け出してきた。 何をそんなに急ぐことがあるのだろう? と訝しんでいると、次いで、いつもレジに立っているやや年配の女性店員も駆け出してきた。 これはただ事ではない、と思っているとその女性店員は私に向けて「万引き犯よ! 捕まえて!」と叫ん

女の子から下の名前で呼ばれ、緊張で腹を下した

大学の同じゼミの同期に、可愛らしい女の子がいた。 私自身、彼女とすこぶる仲が良かったわけではなかったが、かといって険悪な関係なわけでもなかった。 ほとほどに交流のある、ゼミの同期。 それが私と、大学一年生の時分から付き合う彼氏のいる彼女との関係だった。 ここでは彼女のことを、梶浦さんという仮名で呼ぶことにしよう。 ある日の朝、大学に向かうバスで私と梶浦さんは偶然隣同士の席になった。 バスは混み合っていて、私たちの周りにも、たくさんの乗客がいた。 「1限あるの?」

あの娘のことがウザいと言われたんです

自己紹介にも以前書いたが、私は中学受験を経験している。 高校や大学受験ならいざ知らず、中学受験は学習塾の存在なしに立ち向かえる類の試験ではない。だからこそ、合格を手繰り寄せるのは何より親の狂気などと言われることもあるのだが、その話はひとまずおこう。 そんなわけで、私も中学受験のために、学習塾に通っていた。 私の住んでいたのは大きな街ではなかった。 だから中学受験をする同級生は少なかった。 そのため街には学習塾も少なく、その数少ない受験をする同級生のうち一名と、塾がか

あの日の週刊少年ジャンプごっこ

先日、近所のスーパーに行ったとき、小学生ぐらいの男の子たちが駐輪場で『僕のヒーローアカデミア』(ヒロアカ)の話をしていた。 「ワン・フォー・オールがさ――」なんて、主人公の緑谷出久(デク)とオールマイトの個性の名前を口にしていた。 ああ、男の子たちはいつの時代もジャンプ漫画に夢中なのだな、と思った。 「いつの時代も」と書いたのは、自分が小学生の頃もそうだったからだ。 ある日の休み時間、同級生の小泉がいきなり「螺旋丸!」と言いながら、なにかを握るようにした右手を私の懐に

俺、澪ちゃん派。君は? 唯ちゃん?

普段、人との交流が苦手そうなことばかり書いている私でも、大学一年生の時分には、サークルの新歓に顔を出していた。 あまり断らなさそう、という気の弱さが出ていたのだろう。 登校初日から、あらゆるサークルからチラシを押し付けられていた。 どのサークルの新歓に行けば、タダ飯にありつけるのかは把握していた。 その中でも、とある運動系サークルのそれを選んだのは、そのサークルが扱うスポーツを小学生の頃にやっていたことによる懐かしさが理由だった。 食事会も終盤に差し掛かった頃、掛け

予防接種が嫌いだった

小学五年生の冬、私は生まれてはじめてインフルエンザに罹った。 その日は、朝起きるなり身体がだるく、起き上がろうとしたところ嘔吐してしまった。 熱を測ると、39℃以上出ていた。 以降は当然、親戚がやっている内科医院に行った以外は外出せず、薬を飲んで寝ていたが、倦怠感や熱っぽさはなかなか収まってくれなかった。 これが治ることは、もう一生ないんじゃないか、と不安になるほどに。 翌年、私はインフルエンザの予防接種を受けた。 その年は中学受験が控えており、感染症のリスクは軽