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この世のものではない「矢」


霊感があるかないか


人生で一度は話題に上がる言葉ではないだろうか。

事実、霊はもちろん前世や未来、本人を取り巻く環境や友人まで視える知人がいる。
彼女の話はまた後日として、今回はわたしが体験した話を書こうと思う。


わたしには何も視えない。
つまり俗に言う霊能力のようなものはない。


しかし成人してから両親に聞いたところ、幼い頃は不思議な子供だったという


2歳ごろ祖母の死期を予測したり、なにもない場所に話しかけたりしていたらしい。

火の玉のようなものがとある家の前で浮遊しているのを目撃したり、未確認飛行物体を見たこともあった。

真夏の昼、縁側でアイスを食べていると空にドラム缶のようなものが浮遊していたのだ。
その後耳の裏になぞのしこりが出来たことも覚えている。
きっと宇宙人がチップを埋め込み、地球人を調査してるんだ…なんて考えたものだ。

一番覚えているのが百鬼夜行の類を見たことだ。
怖いという感覚はなく薄紫色と黄緑色のコントラストの空に浮かぶ「それ」は、儚く美しかった。

記憶の限りだが小学5年生を期に一切なにもみなくなった。
生理が来た時期、つまり大人に一歩近づいた時期になる。


そして前記に挙げた話をネタにしたりして、お酒を飲むようになった。
もうなにも見ないし感じないから面白半分だった。

しかし大人になってから一度だけ不思議な現象に遭遇した


東北にあるとある県へ出張へ行った時の話だ

仕事を終え、ビジネスホテルへ宿泊した。
同行した男性社員とはもちろん別の部屋で1人部屋。

元々眠りが浅い方で、寝つきも良い方ではない
夢も起きても明確に覚えている方が多かった


その日見た夢は、落武者に矢で射られる夢だった。

痛い、痛い、と泣きながら必死でその落武者から逃げた
走っても、走っても、背中に矢を射られる感覚があった


ハッと目覚めた時は朝で、頬には涙の跡がついておりどうやら寝ながら泣いていたようだった。


翌朝男性社員とロビーで待ち合わせ、帰社の為南下する。
運転する彼に「そういえばね」と夢の話をした。
彼は「あのホテル、なにかの合戦の跡地に建てたのかもね」なんて笑っていた。

車を走らせ30分ほど経った頃


背中に異常な痛みを感じた。
ちくちくどころではない、ズキズキを通り越し鈍器でずっと殴られているような痛みだった。
脂汗が止まらなかった。


「なんか背中が異常に痛い…」


そう言うと彼は一番近いサービスエリアに入り、服の上から背中を見てくれた。


「特になにもなってないようだけど」
「でもやばいくらい痛い、病院いくレベル」
「困ったね…」


もう思考回路はめちゃくちゃで、病院しか頭になかった。
彼はなにか難しい顔をしながら「まさかとは思うんだけど」「もうちょっとだけ我慢して」と、どこかに電話をかけた。


電話が終わると「行こう」と車を走らせた。
高速を下り、見たことのない街並みが続く車窓を眺めながらも痛みに耐えた。
きっと病院に向かっているんだろう。


「着いたよ、下りれる?」


そう言われ車を降りるとそこは病院ではなく、寺院だった。

なんでお寺?病院は?
意味がわからない。


その場でうずくまり、力が抜けたように座り込んだ。
すると彼は住職さんのような風貌の老人を連れてきた。


「あ~あ…」とニコニコしながら、その老人はわたしの背中をさすった。
その間色々宥められ、しばらくすると「もう大丈夫だ」とぽんっと背中を叩いた。


痛みがない
完全に痛みが引いている


きっとわたしは狐につままれたような顔をしていたのだろう。

「あのね、夢の話を聞いたけれどそれは夢じゃないんだよ」
「君のね、背中に矢がいっぱい刺さっていた」
「もう抜いたから大丈夫、心配いらないよ」


つまり、わたしが見た夢は夢ではなかった。
あのビジネスホテルで実際に落武者に矢で射られたのだ。
その刺さった矢が背中の痛みの原因だった。

目に見えない「この世のものでない矢」が原因だったのだ。


お礼を言い、寺院を後にした。
スマホであのビジネスホテルの場所で昔何があったのか調べようとしたが、怖くなってやめた。
だから今もあの落武者が何者なのか知らない。

後から分かったことだが、寺院へ連れて行ってくれた彼はとあるお寺の息子だった。
連れて行ってもらった寺院はその筋で有名な所で彼は知り合いだったらしい。



普通なら判断しない対応のおかげで、彼のおかげでわたしの背中に今矢はない



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