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なぜD2Cは失敗するのか?~ブランドビジネスの落とし穴~㊤

どうも、荻窪に住むネコです。

大手小売で新規事業開発や構造改革プロジェクトなど経営回りの泥臭い仕事をやってます。実体験から学んだことを発信したいと思います。1つでも世の中の為になったら幸いです。

前回は、小売業者が無くならないワケについてまとめました。
今回の記事では、生産者視点で更に突っ込んでみたいと思います。

D2Cがもてはやされるワケ

 まずは現実を正しく捉える必要があります。そもそもなぜD2Cブランドが増加しているのでしょうか。
「ネットやSNS環境が充実したことでお客さまと直接繋るハードルが下がったから。」というのが一般的な回答でしょう。
もちろんマクロ環境においてその回答は間違えないでしょう。
個人的にはもう少し複雑な背景があると考えています。

結論から言います。

①消費の多様化でブランドの収益性が低下した。
②ウェブ開発やマーケティング支援という新しいビジネスが登場した。
③グローバルメガプラットフォーマーの存在感が増した。


詳しく説明していきます。

 そもそも従来通り小売業者を通じてビジネスをすることがブランドにとって最も合理的であれば、つまり収益性が最大化できるのならば、わざわざ自ら手間とリスクを増やして活動する必要はないと思いませんか?やはり、そうではなくなってきた理由が何かあるのでしょう。だからこそビジネス転換を考える必要があった、と考えます。その要因こそが①です。

①消費の多様化でブランドの収益性が低下した。
 トレンドがある程度予測できたネット以前では、需給予測がしやすく、大ロットで生産が可能だったのに対して、ネット以後、消費者ニーズが多様化するに従って、その原理が崩壊してしまったんです。「トレンド商品」と呼ばれる売上を牽引するアイテムが不在になったため、お客さまニーズを摑もうと、ブランドは取り扱いを多品種にせざるをえなくなりました。つまり、生産と在庫コストが上がってしまったんです。多品種にすれば、どれか1つはお客さまの目に止まるだろうと。加えて、顧客ニーズを把握できないと商品開発ができないという理由から、まずは小ロットで販売して、売れた商品だけに追加生産かけるなど、生産頻度を細分化してリアルな需要を追いかけるように運営することが増えました。その結果、商品原価と販促費が高止まりして収益が圧迫されてしまったんです。そうなれば経営者はこう思いますよね。「このままだと赤字に転落。消費者のニーズをより的確に捉えて、お客さま一人ひとりにあった商品提案をしていかなければ。」と。そこにタイミング良くお客さまと繋る場があれば、それを戦略にしたい気持ちはとてもよく分かります。それがネット、そしてSNSです。そこに②が繋がってきます。

②ウェブ開発やマーケティング支援という新しいビジネスが登場した。
 オフライン産業であるブランドメーカーはネットなんてよく分かりません。非ITというコンプレックスがありますから、システム開発ベンダーやマーケティング支援会社に力を借りたいと思うでしょう。IT企業はIT企業で、ITスキルがあっても自ら商売をするのは非常に難しいことで、ネット世界においても事業会社で成功するのはほんの一握りですから、ITスキルのある人は、ITスキルのない人の手伝いをした方が確実に食べていけるでしょう。こうして、一見win-winの関係が築かれたのです。ウェブ開発ベンダーやマーケティング支援会社は、売上を伸ばすためにネットの素晴らしさを宣伝しまくります。「ダイレクトにコミュニケーションができることで、消費者ニーズは数値化され、丸裸。最適な需給予測によって収益性が最大化されるんだ。」と。決して、これが悪いと言っているわけではありません。お互い本気で会社のため、世間のため、消費者のため、と思って真剣に取り組んできた結果なのです。
そうなると、そういう時流はなぜ生まれたのか?と疑問が湧いてきます。それが③に繋がるというわけです。

③グローバルメガプラットフォーマーの存在感が増した。
 グーグル、Facebook、インスタグラム、ユーチューブ、LINEなどが代表例でしょうか。
彼らは、C2Cの世界を無料で提供しながら、本当の顧客は法人ですから、ブランドやメーカーには自身のプラットフォーム上でアカウントを開いてもらい、月額使用料もしくは広告料を支払ってくれればくれるほど潤いますよね。ただ、ブランドやメーカーは、ネットサービスに関しては素人ですから、単独では効果が出ないことも多いでしょう。アカウントを継続してもらうためには、一定効果があるとブランドに感じてもらわないといけませんから、プラットフォーマーにとっては、システム開発やマーケティング支援のプレイヤーには、ブランドと二人三脚の体制で効果を出してもらうことが非常に重要になるということです。

 このようにD2Cブランドが増加した背景には、
①消費の多様化でブランドの収益性が低下した。
②ウェブ開発やマーケティング支援という新しいビジネスが登場した。
③グローバルメガプラットフォーマーの存在感が増した。

によって生まれた「時流の必然」があったと考えています。

 ザックリと書いてもこれだけの文量になってしまいました。
しかし、それくらい現状分析というのは非常に重要だと思っています。こうした背景や構造を理解していれば、これから話す本題もより本質的に捉えることができるでしょう。

 もちろん、背景の切り口はこれだけではありませんが、それを話すとキリがないので、まずは考え方の1つとして理解してもらえると幸いです。

思いの外、長くなってしまってので、続きは次回に持ち越すことにします。

次回は、D2Cの光と影「高収益の代償」について続けて語りたいと思います。

それでは、また。

なぜD2Cは失敗するのか?~ブランドビジネスの落とし穴~㊥ https://note.com/mem_yu/n/n1afddd6b771d

なぜ小売業者は無くならないのか? https://note.com/mem_yu/n/ned10b34f14d1

vol.2

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