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ロットヴァイル公爵家別邸の家事一切を委ねられているマリー・シュナイダーの朝は早い。当然の…
本宅からの呼び出しは、ほぼ100%面倒ごとだ。 心底嫌そうにその手紙に目を落とす幼なじみの姿…
話したいことがあるんだ 声をかけるとルパートは足を止め、わずかに首を傾げて正面から従弟を…
華やかな声と同時に、閉じた瞼に強烈な光。思わず目を開けると、そこは光にあふれたダイニング…
人が目を覚ますとき、一番最初に反応するのはどの機能なんだろう。 寝起きのぼんやりとした頭…
夢を見ていた。とても温かく、幸福な夢だ。 そこから離れがたく、何度も振り返りながら、でも…
雲の切れ間から月明かりが差し込む。思わず足を止めて見上げると、それを訝しんだのか前から声がかけられた。 「坊ちゃま」 変わらない呼ばれように言葉を返す。 「その呼び方やめてよ」 かしこまりました、では何とお呼びいたしますか。 淡々と返る温度のない声。 青年期に当たるだろう彼はまっすぐに背を伸ばし、月の光を見上げたまま応じる。 「……マクシミリアン。俺の名前」 月は失われることはない。マクシミリアンは踏み出した。自ら選んだ、後に続く道を。