プロローグ
雲の切れ間から月明かりが差し込む。思わず足を止めて見上げると、それを訝しんだのか前から声がかけられた。
「坊ちゃま」
変わらない呼ばれように言葉を返す。
「その呼び方やめてよ」
かしこまりました、では何とお呼びいたしますか。
淡々と返る温度のない声。
青年期に当たるだろう彼はまっすぐに背を伸ばし、月の光を見上げたまま応じる。
「……マクシミリアン。俺の名前」
月は失われることはない。マクシミリアンは踏み出した。自ら選んだ、後に続く道を。
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