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【猫事情】里親になることを決めた理由

アーロンが沢山の身の回り品とオモチャを携えて我が家に保護猫としてやってきたのは2020年7月。以前一緒に暮らしていたマリアちゃんが同年の6月に天国に旅立ってから、私たち夫婦は心にぽっかり穴が空いてしまっていた。当時は、気持ち的にすぐに新しい猫は飼えないと思っていたし、穴埋めのように新しい猫を飼うのは猫ちゃんにも申し訳ないと思い、人間に懐かない保護猫のお世話をしようということになった。

つぶらな瞳をした繊細でおとなしい1歳の猫ちゃんだった。虐待を受けて少し精神不安定とのことで、猫の精神安定剤を服用していた。最初のうちは、一緒に持ってきたイグルーベッドの中にずっと篭っていて、私たちが見ていない時に外に出てきてご飯を食べたり、トイレに行ったりしていた。そんなアーロンも数日経つと旦那とは打ち解けて旦那にはおでこや喉を触らせたり、ご飯を手から貰ったりするようになった。

旦那はこの時点でもう「うちの子にしたいなぁ〜」と言い出していたが、私は心の中にまだマリアちゃんがいて、他の猫を受け入れる心の準備ができていなかった。

「マリアの方が可愛い。」

アーロンは少しずつ、ベッドから出てきて旦那とも遊ぶようになり、私のところにもやってくるようになった。そしてある時、「ちゅ❤️」と私の鼻に鼻キスしてきたのである。「わー、なんて可愛い猫ちゃんなの」と思ったのと同時に、近づいたことで口臭が酷いことに気づいた。

旦那に伝えて口を開いて覗いてみると、歯茎も含めて口の中が真っ赤になっているのが見えた。その事を知った夜、今度は沢山咳をし始めた。早速翌朝一番に保護猫シェルターの獣医さんに予約を取り診察してもらうことになった。

採血して複数のウイルスの検査を行ったが、猫白血病ウイルス、猫エイズウイルス、猫カリシウイルス等は一切見つからなかった。では、この真っ赤なお口と口臭は?取り敢えず2週間ほど抗生物質を飲み炎症を抑えることになった。2週間経過する前に、病院の院長から連絡があり、アーロンは、免疫反応異常のリンパ球形質細胞歯肉炎だと告げられた。正直、この病気のはっきりした原因はいまだにわかっていないらしい。ただ、免疫力が下がると歯茎が赤くなったり口内炎ができて、酷くなれば歯にも影響するので全部の歯を抜くことになる。そうなればもちろん、食べることができなくなる。
院長先生は、保護中も含めて一生以下の事を厳守して続けていかなければならないと言った。

  1. フードはデンタルケアのドライフードのみ。

  2. おやつも歯垢を取るデンタルケアのカリカリのみ。

  3. 歯磨きと歯茎のトリートメントを毎日やること。

  4. 生のチキンネックを骨ごと食べること。

4番の鶏の首の骨付き肉は日本では考えにくいかもしれないが、獣医さんが言うには、骨をガリガリ噛ませる事で歯と歯の間の歯垢を取り除くことができるらしく、アーロン自体もすぐに硬いものを噛みたがるので丁度良い朝食となっている。オーストラリアでは、鶏の首の骨付き肉をスーパーの鳥肉屋さんで安く買えるので問題はない。

以上のように普通の元気な猫ちゃんより少し手間が掛かるとわかった瞬間、「この子と一緒に暮らしたい」と思った。この忙しい世の中で、こまごまと面倒を見られる人は限られている。もし、シェルターに返して、そういう人が見つからなかったらどうなるのだろう?

「この子は幸せになる権利がある!そう、絶対に幸せにならなきゃ!繊細な猫だから静かで穏やかな環境が必要。うちは大人二人だからそれにピッタリだ。これはきっとマリアちゃんが天から送ってくれたのだろう。」
マリアの笑顔を感じた。

アーロンはシェルターには返らないことになった。
永遠のお家と家族ができた。ちゃんとその事がわかったのかな?ちょっと嬉しそうだった。

里親を探す前に動物を実際に預かり病気や人間に慣れるまでのケアをすることをオーストラリアではフォスターケアーと呼ぶ。そして、フォスターケアの期間が終わってもシェルターには返さず、一緒に暮らすことを決めたフォスターケアラーさんは失敗したフォスターケアと呼ばれ、シェルターのスタッフさんや他のフォスターケアラーさん仲間から「おめでとう!!最高の決断をしたね!猫ちゃんとお幸せに。」というメッセージが届く。

アーロンはあの日以来、おはようとおやすみの鼻キスを毎日欠かさずしてくれている。もう、お口は臭くないよ。









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