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短いおはなし7

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#おはなし

今日が結論の日ではない。

今日が結論の日ではない。

きつねは
朝の花の道で思った。

昨日が結論の日ではないさ。
今日が結論の日でもない。

ひとは日常になれて
いつの間にか依存している。

でも細胞はつねに生まれ変わり
昨夜の雨は今朝の朝日に
輝いている。

2年後くらいに
なりたい自分を考えよう。

いまはすこし
涙がこぼれたとしても。

この苦々しい途中が美味しい。

この苦々しい途中が美味しい。

泣いている子ぐまに #お洒落なオカマのきつね  が言った。

あんたは解決や成功を
急ぎすぎる
みんなそれを見せるけどね。

この苦々しい途中が大事。
美味しいとこ。
筋トレだってそうでしょ。

苦々しくあがく途中を
みんなが見せ合えばいいのに。

そんなに簡単にはいかない。
そこがおもろい。

どん、と花を置くように。

どん、と花を置くように。



‪子ぐまに‬
‪#お洒落なオカマのキツネ が言った。‬

‪あんたね、‬
‪愚直であることは大事よ。‬
‪愚直に美しいものに憧れ、‬
‪愚直に愛す。‬

‪愚直の前に‬
‪半端な知識や技術はひれ伏すの。‬

‪生きてりゃ‬
‪こころはくしゃくしゃになるわ。‬

‪でもね、‬

‪白いテーブルクロスに‬
‪どん、と花を置くように‬
‪愚直に生きなさい。‬

グラノーラの神様。

グラノーラの神様。



グラノーラを
かき分けてグラノーラの神様が
出てきてクマに言った。
やあ、坊や、健闘してるかい?
坊やが実直に生きていれば
インスピレーションや幸運の
プレゼントが届く。
正確に言うとインスピレーションや
幸運はどこにでもある。
それに気づきやすくなる
回路ができる。
実直に生きていれば。

芸術って何?

芸術って何?



芸術って何?

子ぐまが訊いた。

人形が答えた。

わからなくなるもの。

きたないのか
きれいなのか

罪なのか
正義なのか

痛いのか
甘いのか

かっこいいのか
ださいのか

好きなのか
嫌いなのか

わからなくなって、
ひとが自由になるもの。

わかってしまいすぎると
ひとは自由になれないの。

プライベートCD。

プライベートCD。



遠い世界の片隅で
女の子が
真夜中の友人から届いた
プライベートCDをかけた。
プロっぽくないから安心した。
誰にもすすめたくないなと思った。
若草物語のことを考えた。
夏草をわけてゆっくりとすすむ
かわいた夜明けのことを考えた。

無名のいのち。

無名のいのち。

‪きつねはある朝思った。‬
‪もう、いちいち‬
‪自分を肯定しなくても、‬
‪意味を見出さなくても、いいかな。‬
‪不評でも、不運でも、不幸でも、‬
‪別にいいかな。‬
‪ただ進もう。いのちを燃やし‬
‪いのちをやすませながら。‬
‪青い花に透ける朝の光を深呼吸して、‬
‪好きなうたにうっとりとして
‬無名のいのちのまま
ただ生きよう。‬

神様は安易なものはつくらない。

神様は安易なものはつくらない。

‪きつねは‬
‪あじさいを見て思った。‬
‪神様はたいした画家だよ。‬
‪たいしたデザイナーだし。‬
‪そうなってくると‬
‪おれは神様さまの文学作品かな。‬
‪いい感じでいびつで‬
‪苦々しいもんな。‬
‪やれやれ‬
‪神様は安易なものは‬
‪つくらないな。。‬

みんなまっとうなら誰も朝、教会でお祈りしたりしない。

みんなまっとうなら誰も朝、教会でお祈りしたりしない。

きつねは自分の傲慢さに悩んでいた。
他人の正しくなさが許せない。
自分がいつまでも大事。
ひとの気持ちをないがしろにする。
最低だ。
でも、なんとかよくなりたい。
薔薇が言った。
なんとかよくなりたい、という祈りが、
日々であり、作品なの。
みんなまっとうなら
誰も朝、教会でお祈りしたりしないわ。

人生って何?

人生って何?



‪人生ってなに?‬
‪子ぐまが訊いた。‬
‪#お洒落なオカマのきつね が答えた。‬
‪思い描いていたものとは‬
‪ちがうけれど‬
‪探していたのは‬
‪このひとだったのかも‬
‪この景色だったのかも‬
‪というようなことが‬
‪わかりかけてくる。‬
‪身体の力が抜け‬
‪理想の力が抜け‬
‪そぼくなうたが聞こえてくる。‬
‪その過程。‬

構うものか。

構うものか。



‪きつねは‬
‪構うものか、‬
‪と思った。‬
‪なにに対してかは‬
‪わからなかった。‬
‪しいて言えば‬
‪こころの闇でささやかれる‬
‪言葉に対して思った。‬
‪風呂を磨き昼間から‬
‪お湯をおとし、‬
‪お湯がたまるまで‬
‪ビーチボーイズの‬
‪複雑なハーモニーを聴きながら‬
‪エバーラストを眺めた。‬
‪そしてまた思った。‬
‪構うものか。‬

幸せってなに?

幸せってなに?



子ぐまが訊いた。
幸せってなに?
クマが答えた。

自分に没頭すること。

きょうもきつねは。泣きながら花を持って。

きょうもきつねは。泣きながら花を持って。



ある町に泣き虫のきつねがいた。
きょうもきつねは
失敗して泣きながら帰ってきた。
ちいさな花を持って。
大事なものをなくしたときも
ふられたときも
泣きながら花を持って
帰ってきた。
きつねは
どんなときもお花と暮らしなさい
と育てられた。
だからきょうも
泣きながらちいさな花を持って。

記憶の総量。

記憶の総量。



ぼくの記憶は悲しいことばかり。
子ぐまが言った。
クマが言った。
それはきみの生きてきた記憶。
きみの遺伝子の記憶は
それよりはるかにぼうだいさ。
風に騒ぐ草原。
薫る森。
生まれてきた海。
うたや絵を見て
不思議な気持ちになる。
それは
きみの遺伝子がなにかを
思い出そうとしているんだ。