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闇に輝く白い庭

闇に輝く白い庭

「闇に輝く白い庭」

男の子は女の子に小箱を送った。

小箱の中身は、
闇に輝く白い庭だった。

闇が深ければ深いほど
庭の白い花たちは
月明かりに輝いた。

闇に輝く白い庭のことは
闇の中のともだちだけの
秘密だった。

いつかそこで会える気がしたし
もうずっとそこで
会っている気がした。

オーデマリー教会

オーデマリー教会

山羊の牧師が言った。

わたしたちは実直に生きて
いかないといけません。
実直を続けるには
実直すぎてはいけません。

晴れたり曇ったりします。
価値があったりなかったりします。
うまくいったりいかなかったりします。

だから時々深呼吸して
木陰で指をみどりに染めて。

うつむいた花に見下ろされながら。

うつむいた花に見下ろされながら。

少年はちいさくなって
クリスマスローズの小径を
しばらく歩き、腰をおろした。
うつむいた花に見下ろされながら
風と土の匂いをかいだ。
あたまとこころの中が
風と土の匂いだけになった。
やがて少年は透き通って
見えなくなった。
風か土のどちらかになった。

今日も一日を繕いながら。

今日も一日を繕いながら。

クマは、取っ手がとれて、くっつけたティーカップで、アールグレイティーを飲んだ。緩んだボタンをつけなおしたコートで病院に行った。近くに良い本屋を見つけた。帰りに、出かけなくなった親に春物のピンクのセーターを買った。ちいさな庭でひっそり咲いた花の写真を撮った。今日も一日を繕いながら。

グレーのうさぎの女の子

グレーのうさぎの女の子

「グレーのうさぎの女の子」

世界の管理人が言った。
あ、この世界にはとくに
温情とか意思疎通とか礼節とかは
備わっていません。
まあ、あるのは、キッチンと
やせた庭と古いギターくらいです。

グレーのうさぎの女の子が言った。

期待してなかった。
それだけあれば、十分。

なにもないと、あとは希望しかない。

なにもないと、あとは希望しかない。

恵まれないきつねは思った。おれは天才でなくてよかったな。だって、天才ゆえの苦しみとかありそう。その点おれは、頑張るだけ。成功も幸福もあまりなくてよかった。失うの怖くなりそう。才能も成功も幸福もないって、自由だな。なにもないと、あとは希望しかない。光は今日も音楽みたいにきれいだな。

その先に、必ず良きものがある。

その先に、必ず良きものがある。

世界の果てのある国の人々は、やはり、困難な日々を生きていたが、なぜか、その先に、必ず良きものがある、と無闇に感じていた。そして、そのためにできる限りのことをした。体力と知力と無限の想像力と、怒りと冷静さと優しさで、挑戦を繰り返した。ときにさぼり、愚痴り、絶望しながら☺️

耐え難い現実が続く時、tea trainがやって来る。

耐え難い現実が続く時、tea trainがやって来る。

耐え難い現実が続く時、tea trainがやって来る。座席は、薄暗い個室のティールーム。花と葉とアンティーク。ハンサムな猫の給仕がベルガモットのお茶を淹れてくれる。3段のお皿に焼きたてのお菓子達。長いソファに顔をうずめて大声で泣く。疲れて眠る。ハンサムな猫の給仕がそっと毛布をかけてくれる。

暗ければ暗いほど。

暗ければ暗いほど。

きつねは思った。悲しいことばかり、悲しい景色ばかり思い出してしまうな。どうしてよいことをたくさん思い出さないのだろう。どうして自分の、世界の、良い部分には気づきづらいのだろう。でも、この暗闇にいるとわかることがあるな。暗ければ暗いほど月明かりはまぶしい。

いくつもの部屋。

いくつもの部屋。

世界の果てに住む男はいくつもの部屋を瞬時に行き来していた。イギリス湖水地方の湖畔の家。プリンスエドワード島のクラブアップルの林の中の家。フィンランドの小島の家。南仏の海を見下ろす小さな家。男は各部屋で、片付けをし、お茶を飲み、眠ったり。ふだんの現実もそのひとつにすぎなかった。

小径の贈り物

男の子は女の子に 
小箱の贈り物を送った。
小箱の中身は、
雨上がりの朝の
クリスマスローズの小径だった。
女の子は小径を静かに歩いた。
日々に疲れていたが、歩きながら
男の子になんの小径を贈ろうか
考えた。
贈り物のことを考えると
すこし疲れがひいた。

僕は自信がないよ。

僕は自信がないよ。

僕は自信がないよ。子ぐまが言った。#お洒落なオカマのキツネ が言った。あんたね、自信っていうのは、早咲きの花にこんにちはって挨拶できたか、折れた水仙を摘んで生けたか、ふろふき大根を食べてもらいたいひとのことを考えてできたか、ゴミ出しが間に合ったか、なのよ。

ひとついいことを。

ひとついいことを。

落ち込んでいるきつねに、神様が言った。ひとついいことを教えてあげる。iPhoneの写真を開いて「光」で検索してみてごらん。ほら、きみが、きみの人生が、いかなるものであろうと、きみの日々は、いつも光とともにあった。

ロマンティックジム

ロマンティックジム

ロマンティックジムの
トレーナーが言った。
まずは呼吸。
冬の空気を吸い、
吐くときはいらない情報を
すべて出す。
凝り固まった想像力をストレッチ。
日々のダメージをかわす反射神経と
運命と欠落を背負ったまま走れる
脚力を。
ロマンティックの道は
1日にしてならずです。
週2で来てください。