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「旅路」

長月最期 私の心 朧也
雲隠れ 時折見せる 星の空
霧に迷いて 行く先知れず
とめどなく 流る涙 何故だろう

神無月 快晴の空 漂泊の旅
共に座るは 我が朋輩
下総を出 外房周り 
水面に映える お天道様が
私の心の 霧を払う

カンカン照りの球体と
それを跳ね返す大海原に
かつて沈んだ英雄に
全霊を込め 敬愛を送る

潮風を浴び 一度目の眠り
潮騒が 私の心を浄化する
立ち込めていた 深き霧
何時しか其れは 海の彼方へ

待ち望んだ担担麺
郷土が誇る その飯は
私の心を 幸福色に染め切った

二度目の眠りは駐車場
瞳を閉じて 瞼を覆う
聴こえてくるは 排気音
其れに交わり 秋風の音
陽が傾いて 着いた南端
相も変わらず 美しき
水平線に燻らせる煙草は極上

内房沿いに家路を急ぐ
太陽は既に薄紫で
海原を 哀愁色に変えてゆく
別れの言葉 ひと叫び

ハイウェイを 飛ばす我らを 照らす星
何処ぞの誰か 事故に逢い
私の車を塞き止める
じわりじわりと 進むにつれて
漸く解放された

速度を上げ 定刻を目指す
秋の風 昼間は程良く 夜間は冷える
フードを被り 勢いを増す
唸るエンジン 流れ星

朋輩を 送り届けて 住処へと
独り愛車を 走らせる
幸せと ほんの少しの 寂しさを
大事に抱いて 煙を吐いて

週明けの 定期通院
長月初旬 あの勢いは
今や失速 嘆きの渦へ
恩師である担当医の温かい言葉
霧中に迷う 私を救う

人生は有限の旅
無限に続く 苦痛の渦
そのど真ん中 求め続ける 幸福は其処
終わり無き渦 我武者羅に挑め
私が私で 在る為に
息を吸え そして鼓動を 掻き鳴らせ
あの空の あの星も そして月 そして太陽
最期の時に きっと微笑む

我が心 雲の隙間の 月鏡


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