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息子が教科書に噛み付いた日

息子が教科書に噛み付いた。
何の比喩でもなく歯を食いしばって教科書の端を噛んだ。
イライラして体をこわばらせて、フーフー言いながら噛み付いた。
そしてこんな風に言った。

「僕は!国語の教科書を開くとイライラする!噛み付きたくなる!この手触りがいやだ!教科書を使いたくない!いつも授業中も噛み付きたくなるからえんぴつとか襟を噛んだりしてなんとか我慢してるけど、いやだ!使いたくない!」


気のせい、で片付けてしまった1回目

実はこれ、言われたのが2回目。

前回言われたのは夏休み中の宿題に格闘している時だったため、ただの言い訳のように聞こえたので「何言ってるの、そんなの気のせいだよ!宿題早くやんなさい!」で終了。でもさすがに時間をあけての2回目。しかも聞けば授業中にも噛み付いてる。そこまで嘘で言うはずがない。

これはちょっと何かあるのかもしれない、と「教科書のなにがいやなの?どんなふうになるの?」と聞いてみると、

「紙質がなんかいやだ。気持ち悪くなって噛み付きたくなる。算数は大丈夫。道徳もなんとか平気。でも国語がいやだ。コピーなら大丈夫だと思うからコピーしたやつがいい。」

いつも思うがうちの小2の息子は、自分の置かれている状況を認識し自分なりに分析しさらには対応策まで提示してくるから本当にすごい。彼の判断を信じて急遽夜にコンビニへ向かって教科書をガーガーコピーして、連絡帳で先生に報告してコピーの束を持たせた。息子は、「これなら大丈夫」と言っていそいそとランドセルに詰めて持って行った。

学校から帰ってきた息子に「どうだった?」と聞くと、「これなら大丈夫!」と。ひと安心しつつ、連絡帳を開いてみると先生から心配の声が綴られていた。

「あの、聡明で元気な息子さんにそんな悩みがあったなんて気づかずに申し訳ありませんでした。今度スクールカウンセラーの先生もいらっしゃいます。相談されますか?また保健室の先生からは化学物質過敏症の可能性も調べられてくださいと言われました。チェックシートをお渡しします。コピーも学校としては全然構いません。やりやすいやり方いつでもご相談ください。」

先生はとても理解のある方で、息子のこともとても評価してくださっている方だったのでとても安心して事情を伝えることができた。以降息子は学校にコピーの束を持って行っている。それ以降噛み付きたくなるという話は聞いていない。


"自分の取扱説明書"

そして今日、スクールカウンセラーの先生と息子、そして別に私も個別面談の時間を持っていただきお話を聞いてきた。先に息子が話をして、その後別に私が学校に伺った。すると先生とお話をするうちに、息子についてこんな言葉をいただいた。

「息子さん、入ってきてすぐにうちとけてたくさんいろんな話をしてくれました。とても聡明な子ですね。小学校2年生と話してるとは思えないくらいたくさんのことに興味を持って問いかけてくれたり、いろんなことに敏感に気づいて理解しようとしていました。

多分彼はとても繊細なセンサーを持っていて、さらにそれを観察したり分析することもできる。だから今回も自分にとって気持ちが悪い原因が何かというのも彼なりに具体的に説明をしてくれました。心の中で起こっていることも。そういう時に自分がどうやって対応しているのかも。彼は自分でもそう言っていましたが、自分の取扱説明書をとてもよくわかっていますね。これは彼の才能ですよね

もしかしたら、親御さんも一緒に彼にとって心地よい環境づくりへの試行錯誤を一緒にやってみるのもいいかもしれませんね。すでにとても柔軟で理解あるご両親の元で育っているのがよくわかります。今は小さい妹さんもいらして、お仕事もされていてお忙しいと思いますが、そういう工夫を一緒に考えてトライ&エラーを繰り返す時間も、親子のコミュニケーションになってきっといいと思います。

みんな色々ありますよね。でもそれを自分なりに解決しようとすることとか、適切な大人に助けを求められる能力は今後とても大切です。学校という環境の中で自分らしさを伸ばしていくのは大変な部分もあると思いますが、きっと息子さんとご両親ならできると思います。ぜひ色々試してみてください。彼ならぐぐーっとお勉強にも身が入って伸びていけそうな気がしますよ。」


自分が感じている違和感に気づける "才能"

カウンセラーの先生はとても穏やかな方で、気さくにいろんなことを話させていただいた。今までの長い旅路のこと、その時息子がどうだったかとか、自分の子育てへの関わり方の話とか、なんなら仕事の話まで。さすが先生話が聞き上手、いろんなことを話した。

その中で、今回自分の中にストンと落ちたこと。それは、子供にとって、自分の取扱説明書をこの年から意識して自分を深く理解し自分とつきあえるようになるということってものすごくやっぱり大事な能力なんじゃないかっていうこと。

一見親から見ると「何言ってるんだ?」っていうことを言い出した時に、ついただのわがままとか駄々こねてるとか言い訳だとかそんな風に考えてしまいがちなんだけど、子供は素直に自分に起きてることを言ってるんじゃないかな、最初はって今日ふと思った。ただ「気のせいだよ」「そんなのいいから」なんて大人から言われているうちに、自分が感じ取れていた違和感そのものを疑うようになってしまって、しまいには自分すらみなかったことにして蓋をしてしまうようになる。結果、ただよくわからないもやもややストレスを抱え続け、それをどうやって解決したらいいかわからず、いつか爆発させてしまうような大人になってしまうのかもしれない。

でも小さい頃からこうやって本人が主張していることを、親が認めて一緒に隣に座って、「じゃあどんな風にしたらその違和感感じなくなって、気持ちよくお勉強できるかママと一緒に観察して実験してみよう」って言えたら。そしてそこで思いついたことを自分たち家族の中だけではなく、学校側にもしっかり説明して協力してもらうというプロセスを一緒にやっていくことができたら。

それって彼が成長し、壁にぶつかった時にものすごくものすごーく力になることなんじゃないかなって、そう心から思えた。

そう思うとうちの息子さん、まず自分に起こっている違和感に気づけたことが素晴らしい。さらにそれを言語化して私に伝えようとしたことが素晴らしい。さらに自らそれを観察して、何が原因なのか自分なりに答えをだそうとしていたのも素晴らしい。そして何より、そこから対応策を自分なりに考えて、私に提案してきたからまた素晴らしい。

最初は一体何が起きたんだ?と不安だったし、自分が赤ちゃんの子育てや仕事にばっかり時間を取られてしまったことによって息子が色々ストレスや不安を抱えてしまったんじゃないかとか、どちらかというと悲観的なイメージを抱いていたんだけれど、今日のカウンセリングの時間を経て、いやまてようちの息子はすでに素晴らしいし息子も私たち家族もさらに今成長のチャンスなんじゃないだろうか?って自然と思えるようになっていた。

カウンセリングってすごい。


固定観念を捨てて、
ありのままの息子をもう一度みてみよう

そこで私は学校から帰ってきた息子と、仕事から戻った夫にこう提案した。

ちょっと今日から、息子くんにとって心地よく勉強していられる環境づくりをもうちょっとみんなで研究してみよう。教科書も、コピーで大丈夫と言っていたけど、じゃあどの程度大丈夫なのか。そのままがイヤ度100だったらどのくらいなのか。まあ大丈夫、全然平気、むしろやりやすい。大丈夫にも色々ある。コピーよりも紙質の違う教科書がよかったらそれを買おう。さらにデジタル化してiPadの方が断然心地よく学べるのなら、学校に相談してみよう。リビングの机での勉強より別の部屋で学習机を使った方がいいのか、床に座ってやった方がいいのか、鉛筆も2BがいいのかBがいいのか長さは?ノートは?せっかくだから、一緒に考えて色々試してみよう。」

そこまでやるの?と夫にはちょっと言われたけど、でもそういうトライ&エラーをこういう小さな問題で取り組んでおくことが、将来の彼にどれだけ助けになるかって伝えたら、わかったやろうか。ってすぐに納得してくれた。息子も私たちが息子のために時間と手間をかけるわけなので、全くもって満更でもない感じ。

固定観念って恐ろしい。知ってたし常々そう思っていたんだけど、やっぱりどこかそういうのって残ってしまう。子供の勉強の仕方とか、取り組み方とか、言うても自分がそう育ってきたからって子供にもそれを当てはめる必要なんてないということを改めて思った。

教科書を使わなくたって勉強できる。
椅子に座らなくたって勉強できる。
本じゃなくてiPadだってきっと問題ない。
椅子に長時間座ってられなかったら時々もう立ったらいい。
学校がもし合わなかったらホームスクーリングしたっていい。
本当に全てが嫌になったら、
家族で休んで世界旅行でもしたらいい。

どんなことになったって、
必ず息子に合う道を見つけてみせる。
仲間がいるところも一緒に探してあげる。
私たちにはきっとそれができる。

だから人と違うことを恐れず、
子供の言葉に耳をちゃんと傾けつつ、
ありのままの息子をじっくり観察してみようと、
そう思えた日なのでした。

本当に日々学びですね。
明日もいい1日になりますように。

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