詰将棋フェスティバル 予習7

バーチャル詰将棋作家の駒井めいです。

2022年2月12日より「詰将棋フェスティバル」と題した詰将棋作品展を開催します。
下記の3つの部門に分けて行います。

(1) ビギナー部門
(2) オンライン作家部門
(3) 複数解・ツイン・変同解部門

「(1) ビギナー部門」「(2) オンライン作家部門」においては、17手以下の詰将棋が出題されます。
一方、「(3) 複数解・ツイン・変同解部門」においては、普通の詰将棋以外にフェアリー詰将棋も多数出題されます。
フェアリー詰将棋のことをよく知らないという方も多いと思います。
開催に先駆けて、フェアリールールやフェアリー駒について少し紹介しておきます。
第1~2回でフェアリールールやフェアリー駒を説明しました。

第3回ではフェアリーに慣れてもらうために問題を出題しました。

第4回から解答発表と解説を行っていて、今回が最終回になります。

⑭ 駒井めい 作 はじめての協力自玉詰(1) 2021年7月9日

問題図

【 協力自玉詰 】
先後協力して最短手数で攻方の王を詰める。ばか自殺詰とも呼ばれる。

[ 正解 ]
27金、同桂不成 迄2手

詰め上がり図

自玉詰では詰める対象が攻方玉になります。
協力+自玉詰なので、先後協力して詰める点は協力詰と同じです。
攻方王を詰めると言っても、攻方には王手義務があります。
受方玉に王手をするには金を打つしかありませんが、どこに打ったらよいでしょうか。
2手で攻方王を詰めることを考えると…?

初手の正解は27金です。
これに2手目同玉と抵抗してしまっては、攻方王が詰まなくなってしまいます。
2手目27同桂不成とするのが正解です。
跳ねた桂が攻方19王に王手をかけていて、玉の逃げ道もありません。

⑮ 駒井めい 作 はじめての協力自玉詰(1) 2021年7月9日

問題図

[ 正解 ]
17角、同香成、28龍、同成香 迄4手

詰め上がり図

93角、49玉、48角成 迄3手
…では受方玉を詰ましています。
攻方は受方玉に王手をかけながら、自玉を詰ましてもらわなければなりません。
とは言え、攻方18龍は受方16香が攻方19王を間接的に睨んでいるために動かせず、王手をかけるには初手角打しかありません。

正解は初手17角に2手目同香成です。
香が成ったことで攻方18龍が動かせるようになりました。

途中図 2手目17同香成迄

3手目28龍としますが、4手目49玉と抵抗しては攻方王が詰みません。
4手目28同成香と応じれば詰め上がりです。

⑯ springs 作 詰将棋メーカー 2021年12月13日

問題図

1) 15馬、26龍、28龍、同歩成 迄4手
2) 28龍、同歩不成、15馬、同龍 迄4手

詰め上がり図 1
詰め上がり図 2

2解なので正解手順が2つあります。
初手は攻方14馬か攻方17龍で王手をするしかありません。
どちらが正解でしょうか。
実はどちらも正解です。

28龍、同歩成という手順がどこかで入りそうですが、すぐに実行すると17玉と逃げられます。

失敗図 2手目28同歩成迄

正解は初手15馬で、2手目26龍と移動合をします。
これで17の地点には受方26龍が利くようになりました。
3手目28龍に4手目同歩成と進んで詰め上がりです。
ちなみに、初手15馬に2手目26金と合駒をすると、17の地点には利きができます。
しかし、3手目28龍に4手目同歩成と進んだときに、5手目同玉とできて攻方王が詰んでいません。
2手目26龍は17の地点に利かせつつ、と金に紐を付ける役割を果たしています。

もう一つの解を考えましょう。
もし攻方17龍がいなければ、15馬、同龍の手順も有力そうです。

仮想図 2手目15同龍迄

しかし、これは29玉と逃げることができて、攻方王が詰んでいません。
そのための初手が28龍で、攻方17龍を退かすわけです。
これに2手目同歩不成と応じれば、龍を消去できただけでなく、29の地点に利きができます。
代えて2手目同歩成では、3手目17玉と逃げるしかなくなってしまいます。
不成で攻方王に王手をかけないのがポイントです。
3手目15馬に4手目同龍と進めれば詰め上がりです。

1つ目の解では初手15馬ですが、2つ目の解では15馬という手は3手目に現れています。
また、1つ目の解では3手目28龍ですが、2つ目の解では28龍は初手に現れています。
つまり、攻方の手の順番が2つの解で入れ替わっているわけです。

⑰ のすたる爺 作 詰パラ 1982年3月

問題図

※ 出題時の表記に合わせて「ばか自殺詰」としているが、「協力自玉詰」と同じ意味。

[ 正解 ]
19角、28飛、37角、46桂、58飛、同飛成 迄6手

詰め上がり図

盤面には受方玉と攻方王だけです。
受方駒がいないので、攻方王を詰ます手掛かりが乏しいです。
単騎詰を除けば、ほとんどの場合は詰ますのに最低2枚の駒が必要です。
持駒の角と飛で王手をして合駒をさせることで、受方駒を盤面に出現させる方針になるでしょう。

そう考えると、初手は19角と遠くから打つ手をやってみたくなります。
受方はこれに合駒をするのですが、どの地点に何を打てばよいでしょうか。
正解は2手目28飛です。

途中図 2手目28飛迄

これで攻方王は八段目に逃げられなくなりました。
受方に58金とさせられれば攻方王が詰みますが、どうにもそれは難しそうです。
視点を変えて、この受方28飛で詰ますのはどうでしょうか。
攻方から58飛と飛車を打って、同飛成とさせるのがぼんやり見えてくれば、正解までもう少しです。
ただ、58飛、同飛成の手順は同玉と龍を取って王手を解除できますし、そもそも受方28飛は攻方19角のせいで動けません。
これを実行するための準備を3手目からしていくわけですが、分かるでしょうか。

正解は3手目37角です。

途中図 3手目37角迄

これで受方28飛が自由に動けるようになりました。
あとは58の地点に利きができればよいのですが、46の地点には何を合駒すればよいでしょう。
正解は4手目46桂で、これで58飛、同龍と進めれば詰め上がりです。

⑱ あつお 作

問題図

【 Equihopper 】(E)(再掲)
フェアリーチェスの Equihopper。任意の方向に駒を1枚跳び越して、その線上で等距離の地点に着地する。線上に余計な駒が挟まっている場合、跳ぶことはできない。

[ 正解 ]
14E、54角、94E、36飛、14E、39飛成 迄6手

詰め上がり図

再び Equihopper の登場です。
受方玉に王手をかけるには Equihopper を打つしかありません。
可能な王手は14Eと94Eです。
初手14Eは受方36角を跳び越えることで、58の地点に利いて王手をかけています。
初手94Eは受方76飛を跳び越えることで、58の地点に利いて王手をかけています。

初手14Eが正解ですが、試しに初手94Eの展開を考えてみます。

失敗図 1手目94E迄

この王手を解除するには単純に玉を逃げればよいです。
他には85や67の地点に駒を打っても王手を解除できています。
Equihopper には「線上に余計な駒が挟まっている場合、跳ぶことはできない」という性質があるためです。
もう一つ忘れてはならないのが、跳び越える駒を動かしてしまうことです。
受方76飛を別の地点に動かせば、跳び越える駒がなくなってしまい、王手が解除されます。
そこで、初手94Eに2手目79飛成と攻方王に王手をするのはどうでしょう。

仮想図 2手目79飛成迄

攻方は持駒がないので合駒をできませんし、18の地点には受方36角が利いています。
しかし、28玉が唯一の逃げ道で詰め上がりになっていません。
受方79龍ではなくて、受方39龍だったら28の地点に利きができて詰め上がりです。
それを可能にするには、初形の受方76飛を36の地点に動かせばよいです。
受方飛を76から36に動かすには94Eとすれば可能です。
36に動いた受方飛を39に成らせるには14Eとすれば可能です。
問題は初形で36の地点には受方角がいることと、Equihopper が一枚しかないことです。
とにかく受方36角を退かすために、初手14Eと打ってみましょう。

途中図 1手目14E迄

王手を解除しつつ36の地点を空けるために受方角を退かすわけですが、どこに動かしたらよいでしょうか。
攻方王を詰ますために18の地点には利かせておきたいので、27や45などが候補になります。
どこかで94Eとして受方76飛を36の地点に動かすことを考えると、2手目は54角が正解です。
これで受方54角を跳び越えて、攻方14Eを94の地点に動くことができます。
3手目94Eに、予定通り4手目36飛と動かして王手を解除します。
王手が解除されたのは跳び越える駒がなくなったためです。

途中図 4手目36飛迄

再び受方54角を跳び越えて5手目14Eとします。
Equihopper は初手と同じ地点に戻りました。
攻方14Eは受方36飛を跳び越えることで、58の地点に利いて王手をかけています。
6手目39飛成と王手を解除しながら、攻方王に王手をかけて詰め上がりです。

⑲ やがてクラゲになる 作 Twitter 2022年1月8日

問題図

【 最後の1ピース 】
出題図に指定された枚数の駒を追加して指定されたルール・手数の完全作にする。追加する駒は、攻方の駒、受方の駒、攻方持駒いずれでも構わない。

[ 正解 ]
追加駒:受方91龍
※ 詰手順:99角、同龍、21角成 迄3手

正解図 受方91龍追加

最後の1ピースは最近登場したルールです。
単に詰将棋を解くのとは違った面白さがあります。
出題図に対して駒を1枚追加して協力詰3手の完全作にするのが、今回の問題設定です。

問題図では初手21角成迄で詰んでしまいます。
3手で詰ますようにするには21の地点に何かを利かせなければなりません。
従って、盤面に受方駒を追加するしかないと分かり、候補を絞り込めます。
どの地点に何を受方駒として置けばよいでしょうか。
持駒角というのがヒントになります。
受方31飛を追加するのはどうでしょう。

仮想図 受方31飛追加

・33角、同飛、21角成 迄3手
と3手で詰むので正解に見えます。
しかし、
・44角、33飛、21角成 迄
・99角、33飛、21角成 迄
などのように、角を離して詰ます手順も成立しています。
これでは不完全作です。

では、受方23飛と追加するのはどうでしょう。

仮想図 受方23飛追加

・33角、同飛、21角成 迄3手
の他に
・33角、22歩、21角成 迄
・44角、33飛、21角成 迄
・99角、33飛、21角成 迄
などのように、角を離して打ったり、22の地点に駒を打って合駒をする手順があってダメです。

このように考えていくと、受方91飛と玉から最も離れた地点に追加する配置に辿り着きます。

仮想図 受方91飛追加

・99角、同飛、21角成 迄3手
の他に詰む手順はなさそうに見えます。
注意してほしいのは、99の地点は敵陣であることです。
つまり、
・99角、同飛”成”、21角成 迄3手
・99角、同飛”不成”、21角成 迄3手
と手順が限定されていないのです。
これを防ぐためには、受方91飛ではなく受方91龍を追加すればよいです。
最初から飛車を成駒にしておけば、
・99角、同”龍”、21角成 迄3手
の手順に限定できます。