詰将棋フェスティバル 予習4

バーチャル詰将棋作家の駒井めいです。

2022年2月12日より「詰将棋フェスティバル」と題した詰将棋作品展を開催します。
下記の3つの部門に分けて行います。

(1) ビギナー部門
(2) オンライン作家部門
(3) 複数解・ツイン・変同解部門

「(1) ビギナー部門」「(2) オンライン作家部門」においては、17手以下の詰将棋が出題されます。
一方、「(3) 複数解・ツイン・変同解部門」においては、普通の詰将棋以外にフェアリー詰将棋も多数出題されます。
フェアリー詰将棋のことをよく知らないという方も多いと思います。
開催に先駆けて、フェアリールールやフェアリー駒について少し紹介しておきます。
第1~2回でフェアリールールやフェアリー駒を説明しました。

第3回である前回はフェアリーに慣れてもらうために問題を出題しました。

今回から解答発表と解説を全4回に分けて行います。

① 駒井めい 作

問題図

【 協力詰 】
先後協力して最短手数で受方の玉を詰める。ばか詰とも呼ばれる。
【 受先 】
受方から指し始める。
【 n 解 】
解が複数あり、指定された n 個の解を求める出題形式。

[ 正解 ]
1) 24角、25馬 迄2手
2) 33飛、24馬 迄2手

詰め上がり図 1
詰め上がり図 2

受方の手番ですが、攻方の手番だと仮定して手を考えてみます。
初手24馬や25馬としてみたいですが、24や25の地点には受方飛や角が利いていて詰め上がりになりません。
実際には受方の手番なので、飛や角の利きをどうすればよいか考えます。
受方は自分が詰まされるように協力するわけですが、どう協力すればよいでしょうか。
攻方が25馬迄で詰ますには、受方23飛の利きを遮ればよいです。
初手24歩では依然として25の地点に利きがあってダメですし、初手24桂は攻方王に王手がかかってしまいます。
正解は初手24角で、飛の利きを遮ります。
これで2手目25馬迄で詰め上がりです。

この問題は解が二つある出題形式なので、まだ終わりではありません。
攻方が24馬迄で詰ます方法はないでしょうか。
24の地点には飛と角の利きがあるので、これらの利きを同時に処理しなければなりません。
初手33歩では24の地点に角の利きはなくなりましたが、飛の利きは残っています。
正解は初手33飛で、飛の利きを逸らしながら角の利きを遮ります。
これで2手目24馬迄で詰め上がりです。

② 駒井めい 作 はじめての協力詰(3) 2021年5月28日

問題図

[ 正解 ]
24銀不成、14玉、15金 迄3手

詰め上がり図

初手の正解は24銀不成で、あえて成らないことで14の地点に玉を誘います。
代えて初手24銀成だと、王手を解除するのに2手目同玉・12玉・22玉といった手がありますが、いずれも3手目で詰ますことはできません。
初手24銀不成に2手目同玉と受方が抵抗すれば詰みませんが、受方は自分が詰むように協力するということを思い出してください。
2手目14玉と受方が協力すれば、3手目15金迄で詰め上がりです。
ところで、初手22銀不成に2手目12玉は似たような進行でやりたくなりますが、3手目13金と打っても4手目同桂とされて詰め上がりになっていません。

③ 占魚亭 作

問題図

【 Knight 】(騎)
チェスの Knight。八方桂。

[ 正解 ]
33騎、11玉、32騎 迄3手

詰め上がり図

盤面には攻方の Knight が2枚あり、持駒に1枚ある状況です。
Knight は8方向に利きがあり、王手のかけ方も何通りかあって少しややこしかったかもしれません。
詰め上がり図において、Knight の利きで玉が逃げられないことを確認してください。

チェスのルールを知らない人だと、Knight の利きは難しく感じると思います。
この問題で Knight の利きを理解してください。

④ あつお 作

問題図

[ 正解 ]
37騎、同飛不成、35騎、同飛成、
24騎、同龍右、37騎 迄7手

詰め上がり図

手数が7手で持駒には Knight が4枚もあって、凶悪そうな顔をしています。
しかし、紛れが少なくて、あることに気付けばすんなり解ける構造になっています。
受方の玉に王手をかけるには、24騎か37騎のどちらかです。
初手24騎は同龍、初手37騎は同飛成あるいは同飛不成で詰め上がりになっていません。
ここで、
「受方15龍が飛だったらなー…」
「受方35飛が別の筋に動いてくれたらなー…」
と考えられれば、ほとんど解けたようなものです。
受方15龍を退かして受方飛に置き換えるのは難しそうです。
受方35飛を別の筋に退かす方法を考えていきます。
Knight を使って退かすしかないですが、直接的な手段はなさそうです。
もし35飛が龍だったらどうでしょうか。
35飛が龍だったら、24騎、同龍右、37騎迄で詰みます。
35飛を龍にする方法を考えてみると、37騎、同飛不成、35騎、同飛成という手順に辿り着きます。
2手目同飛”不成”とするのがポイントで、同飛”成”では攻方玉に王手がかかってしまい、3手目35騎が指せなくなってしまいます。
4手目で35の地点に戻るときに成ればよいわけです。

⑤ springs 作

問題図

【 Lion 】(鬣)
フェアリーチェスの Lion。クィーンの利きの方向にある駒を1つ跳び越えその先の任意のマスに着地する。着地点に敵駒があれば取れる。

[ 正解 ]
91鬣、93金、82鬣 迄3手

詰め上がり図

Lion は駒1枚を跳び越えることで利きを持つかなり特殊な駒です。
Lion の性質を理解するために、
・初手91鬣がなぜ王手なのか?
・2手目93金がなぜ王手解除なのか?
ということをまずは確認してください。
初手91鬣は受方82金を跳び越えることで73~19の地点に利きを持ち、受方55玉に王手をかけています。
この王手を解除するにはどんな手段があるでしょうか。
2手目46玉や64玉は Lion が利いていて逃げられません。
2手目54玉や56玉は角が利いていて逃げられません。
王手を解除する方法の一つとして、例えば2手目73歩があります。
Lion は駒2枚を跳び越えられないことを利用したものです。
Lion の利きは受方82金を跳び越えた先である73の地点にとどまり、55の地点には利かなくなります。
他には、2手目72金・83金・93金のように跳び越える駒を退かしてしまうのも方法の一つです。
跳び越える駒がなければ、利きは発生しないからです。
正解は2手目93金ですが、2手目72金・83金は攻方81角・92角の利きを遮ってしまって、将来的に玉を逃がすことになります。

さて、難しいのは3手目82鬣と2枚目の Lion を打つ手で、なぜこれで詰め上がりなのでしょうか。
攻方91鬣が攻方82鬣を跳び越えることで73~19の地点に利きを持ち、受方55玉に王手をかけています。
例えば4手目73歩とすると Lion は駒2枚を跳び越えることができないので、王手を解除できていそうです。
4手目73歩は確かに攻方91鬣からの王手を解除しています。
しかし、今度は攻方82鬣が受方73歩を跳び越えることで64~19の地点に利きを持ち、受方55玉に王手がかかった状態になってしまいます。
Lion が2枚連結したこの状態は、どうやっても王手を解除することができないのです。
代えて3手目73鬣と連結させずに離して打つと、4手目82歩で王手を解除されてしまいます。
連結させた場合との違いを確認してください。