詰将棋フェスティバル 予習6

バーチャル詰将棋作家の駒井めいです。

2022年2月12日より「詰将棋フェスティバル」と題した詰将棋作品展を開催します。
下記の3つの部門に分けて行います。

(1) ビギナー部門
(2) オンライン作家部門
(3) 複数解・ツイン・変同解部門

「(1) ビギナー部門」「(2) オンライン作家部門」においては、17手以下の詰将棋が出題されます。
一方、「(3) 複数解・ツイン・変同解部門」においては、普通の詰将棋以外にフェアリー詰将棋も多数出題されます。
フェアリー詰将棋のことをよく知らないという方も多いと思います。
開催に先駆けて、フェアリールールやフェアリー駒について少し紹介しておきます。
第1~2回でフェアリールールやフェアリー駒を説明しました。

第3回ではフェアリーに慣れてもらうために問題を出題しました。

第4回から解答発表と解説を行っています。

⑩ springs 作

問題図

【 強欲 】
駒を取る手を優先して着手を選ぶ。

[ 正解 ]
27飛、同角不成、56角 迄3手

詰め上がり図

強欲ルールを組み合わせた協力詰です。
強欲は駒を取る手を優先するルールです。
「初形で攻方67飛がいなければ、56角と両王手をすれば詰む」
と考えた人は、鋭いですがあともう一歩です。攻方67飛を消去するために、初手27飛としてみます。
この王手を解除するには2手目28歩・19玉など色々ありそうですが、「駒を取る手を優先する」というルールを思い出してください。
攻方27飛は受方の角か銀で取れる状態なので、どちらかを指さなければなりません。
正解は2手目同角不成なのですが、2手目同銀不成ではなぜダメなのでしょうか。
ちなみに、2手目同銀成では攻方17王に王手がかかってしまって、3手目で受方玉に対して王手をかける手が指せなくなってしまいます。

失敗図 2手目27同銀不成迄

2手目27同銀不成迄の局面で待望の3手目56角を指したいわけですが、攻方89角は受方45角を取れる状態です。
3手目56角としたくても、3手目45角としか指せないのです。
これでは詰め上がりになっていません。
ここまで来ればもう分かったでしょうか。
取りを防ぐために、初手27飛に対して2手目は同角不成と角を動かす手でなければならないのです。

⑪ 上谷直希 作 WFP 2015年11月

問題図

[ 正解 ]
24桂、13玉、41角成、24玉、33角、同玉、13飛成 迄7手

詰め上がり図

強欲ルールを組み合わせた詰将棋です。
ここまで協力詰を見てきたので、少し頭を切り替えましょう。
普通の詰将棋なら、
32角成、13歩、24桂、11玉、13飛成 迄5手駒余り
といった手順で詰みます。
しかし、強欲ルールのせいで、この手順にはなりません。
問題は2手目13歩と合駒をして受けた局面です。

失敗図 2手目13歩迄

駒を取る手を優先するために、3手目13同飛成と歩を取るしかなく、3手目24桂が指せないのです。
従って、初手32角成は失敗で、別の手を模索することになります。

正解は初手24桂です。
2手目11玉・21玉、22玉はいずれも32角成迄で早く詰むので、2手目13玉が最善です。
3手目は41角成として、4手目は駒を取る手を優先するために24玉の一択になります。

途中図 4手目24玉迄

5手目は33角で、同玉には13飛成迄、同銀には14馬迄で詰め上がりです。

ところで、5手目42角と離して打てば、6手目33香などと合駒をさせて7手目14馬迄で詰みそうです。
しかし、5手目42角には6手目33銀と移動合をする受けがあります。

失敗図 6手目33銀迄

7手目14馬としたいところですが、強欲ルールのせいで7手目同角成と銀を取らざる得ず、同玉、13飛成に44玉と逃げられて詰みません。

⑫ 駒井めい 作

問題図

【 安南 】
味方の駒が縦に並ぶと、上の駒の利きは下の駒の利きになる。

[ 正解 ]
11飛、19香、同玉、29金 迄4手

詰め上がり図

安南ルールを組み合わせた協力詰です。
安南は「味方の駒が縦に並ぶと、上の駒の利きは下の駒の利きになる」という駒の利きが変化するルールです。
盤面の攻方駒は38の地点に金がいて、持駒には香があります。
対して受方玉は12の地点にいて、単なる協力詰なら到底4手では詰みそうにありません。
安南ルールを組み合わせることで何が起こるのでしょうか。

受方から指し始めますが、初手は11飛が正解です。

途中図 1手目11飛迄

受方11飛と受方12玉が縦に並び、受方12玉は飛の利きに変化しました。
これで2手目19香に3手目同玉とすることができます。
4手目は29金が正解ですが、なぜ金が斜め後ろに動けるのでしょうか。
攻方38金と攻方39玉は縦に並んでいて、攻方38金は玉の利きになっているからです。
4手目29金迄の局面では、受方19玉は受方11飛から離れて玉の利きに戻っているので、王手を解除する手段がありません。

ちなみに、初手11飛打や11香でも同じようですが、4手目29金に同飛成と王手を解除されてしまいます。
初手11飛は29の地点の利きを逸らす意味もあったわけです。

⑬ 駒井めい 作

問題図

[ 正解 ]
21歩、15歩、22玉、13桂成 迄4手

詰め上がり図

まずは駒の利きが現状どうなっているのか確認しておきましょう。
受方11銀・12歩・13玉が縦に並んでいます。
受方12歩は銀、受方13玉は歩の利きに変わっています。
手番は受方なのですが、手番は攻方だと仮定して有効な手がないか考えてみます。
攻方から王手をかけるには、初手15歩と持駒の歩を打つしかありません。

仮想図 1手目15歩迄

攻方14桂と攻方15歩が縦に並んでいて、攻方14桂は歩の利きになっているために王手がかかっています。
受方はどう王手を解除すればよいでしょうか。
受方13玉は歩の利きになっているので、2手目14玉とするしかありません。
14の地点には攻方15歩が利いているので、実は王手を解除できません。
つまり、歩を打って詰ましたことになり、打歩詰になっているのです。
従って、受方は打歩詰の状況をなんとか打開しなければなりません。

受方の手番に戻すと、初手の正解は21歩になります。

途中図 1手目21歩

歩が銀の利きに変わっていたので、斜め後ろに動くことが可能なわけです。
これで受方13玉は歩の利きではなく、本来の利きに戻りました。
王手をかけるには2手目15歩しかありませんが、玉はどこに逃げればよいでしょうか。
正解は3手目22玉です。
攻方14桂が利いていてできなさそうですが、攻方14桂は歩の利きに変わっているので、22の地点には利きがありません。

途中図 3手目22玉迄

これで受方玉は再び歩の利きになりました。
4手目13桂成と歩の利きを持った桂が前進して成れば詰め上がりです。

詰め上がり図(再掲)

詰め上がり図で攻方13成桂は本来の利きに戻って王手になっています。
受方22玉は歩の利きになっているので5手目23玉としか動けませんが、そこには攻方13成桂が利いています。