詰将棋フェスティバル 予習5
バーチャル詰将棋作家の駒井めいです。
2022年2月12日より「詰将棋フェスティバル」と題した詰将棋作品展を開催します。
下記の3つの部門に分けて行います。
「(1) ビギナー部門」「(2) オンライン作家部門」においては、17手以下の詰将棋が出題されます。
一方、「(3) 複数解・ツイン・変同解部門」においては、普通の詰将棋以外にフェアリー詰将棋も多数出題されます。
フェアリー詰将棋のことをよく知らないという方も多いと思います。
開催に先駆けて、フェアリールールやフェアリー駒について少し紹介しておきます。
第1~2回でフェアリールールやフェアリー駒を説明しました。
第3回ではフェアリーに慣れてもらうために問題を出題しました。
第4回から解答発表と解説を行っています。
⑥ あつお 作
Orphan は敵駒に取りを掛けられるとその利きを持つ駒です。
初形に配置された攻方54谺には取りが掛かっていないので、利きを全く持っていない状態です。
Orphan を無視して香1枚で詰まそうと思うと、例えば
・14香、13金、同香不成、12歩、21金 迄
といったように5手かかってしまいます。
3手で詰まそうと思ったら Orphan を使うしかありません。
攻方54谺に利きを持たせようと思ったら、香を打って合駒をさせるしかなく、
・19香、18角
・15香、14飛
が考えられます。
正解は19香、18角の手順で、これで攻方54谺は角の利きに持ちました。
3手目21谺と飛び込めば詰め上がりですが、その理由が分かるでしょうか。
まず、3手目21谺が王手になる理由はなぜでしょう。
攻方21谺には受方11玉からの取りが掛かっています。
つまり、攻方21谺は玉の利きに持っているのです。
次に、3手目21谺に対して王手を解除する手段はないでしょうか。
4手目21同玉は攻方22歩が利いています。
4手目12玉や22玉は、攻方21谺には依然として玉からの取りが掛かった状態で、攻方21谺からの王手が解除できていません。
➆ あつお 作
「敵 Orphan から利きを写すこともできる」という説明文を読んだでしょうか。
試しに初手59角と打ってみると、角で王手がかかるのと同時に、攻方51谺からも王手がかかって両王手になります。
何故でしょうか。
初手59角で受方15谺に取りが掛かるので、受方15谺は角の利きを持ちます。
そして、角の利きを持った受方15谺は攻方51谺に取りを掛けている状態になります。
攻方51谺は受方15谺から角の利きを転写されて、角の利きを持つようになります。
ただ、初手59角の両王手には85玉・94玉・96玉と逃げるしかなく、3手目で詰ますことができません。
初手の正解は48角で、両王手をかけないのがポイントです。
先程と同様に攻方51谺は角の利きを持っていて、攻方51谺だけが王手をかけています。
2手目94玉に3手目84谺と飛び込めば詰め上がりです。
攻方84谺は玉の利きになっているために王手がかかっていて、攻方48角の利きで紐が付いた状態です。
王手が解除できないことを確認してください。
⑧ 占魚亭 作
盤面には攻方の Orphan が2枚あって、取りが掛かっています。
現状でどんな利きを持っているか確認しておきましょう。
攻方21谺には受方32馬からの取りが掛かっていて、馬の利きを持っています。
攻方44谺には受方35龍からの取りが掛かっていて、龍の利きを持っています。
どちらをどう動かして王手をかけるかですが、正解は初手31谺です。
攻方31谺は以前として受方32馬からの取りが掛かっているので、馬で王手をしているのと同じことになっています。
これには2手目43馬と応じます。
攻方31谺に対して馬からの取りがなくなった代わりに、受方35龍からの取りが掛かりました。
攻方31谺は龍の利きに変わったために、受方13玉に対する王手が外れたわけです。
これで3手目22谺引とすれば詰め上がりです。
なぜ詰め上がりなのか分かるでしょうか。
まず、攻方22谺には受方13玉からの取りが掛かっているために、攻方22谺が玉の利きを持っていて王手がかかっています。
4手目同玉や4手目14玉・24玉と逃げる手は大丈夫なのでしょうか。
ここで攻方44谺に注目しています。
攻方44谺には受方43馬からの取りが掛かっている他、受方35龍からも取りが掛かっています。
「複数の駒から取りを掛けられると、それらを合成した利きになる」という説明文を思い出してください。
攻方44谺は馬と龍を合成した利きを持っているのです。
4手目22同玉・14玉・24玉は、どれも攻方44谺が利いているためにできないわけです。
⑨ 駒井めい 作
Equihopper は駒1枚を跳び越えなければならない点は Lion と似ています。
しかし、その性能は Lion とかなり異なっています。
Equihopper から跳び越える駒に向かって矢印を引いて、同じ方向に同じ距離だけ進んだ地点に利きを持ちます。
初手13Eは受方12金を跳び越えることで11の地点に利いていて、受方11玉に対して王手がかかっています。
王手を解除するには2手目同金と応じるしかありません。
3手目は15Eが正解で、受方13金を跳び越えることで11の地点に利いていて、受方11玉に対して王手がかかっています。
王手を解除するには、4手目12歩・14歩と線上に余計な駒を打ったり、4手目12金・14金・23金・24金と跳び越える駒を動かす手があります。
正解は4手目12金で、5手目13Eと3枚目の Equihopper を打てば詰め上がりです。
攻方13Eが受方12金を跳び越えることで11の地点に利いていて、受方11玉に対して王手がかかっています。
6手目13同金とするのは、攻方15Eが受方13金を跳び越えて11の地点に利くようになって、王手が解除できていません。
6手目22金とすると、攻方13Eからの王手は解除できていますが、攻方15Eが攻方13Eを跳び越えて11の地点に利くようになって、王手が解除できていません。