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オトナのチョコレート学〜チョコレートのある人生を学問する〜vol.2 鎌田安里紗さん×野村友里さん

産地にこだわり抜いたカカオを使った「meiji THE Chocolate」は、リニューアルを機に“チョコレートのある人生”について考えるオンライン講座を開催。
第2回のゲストは、「meiji THE Chocolate」のCMにご出演いただいている、エシカルファッションプランナー・鎌田安里紗さんと、レストラン「eatrip」の経営をはじめ、さまざまな「食」に関わる活動を行っている料理人・野村友里さん。「衣食住」の「衣」と「食」に携われている2人に、「meiji THE Chocolate」も目指している“サステナブルな生産・消費”について語っていただきました。

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エシカルファッションプランナーと料理人、それぞれにとってチョコレートとは

──お二人にとって、チョコレートとはどんな存在でしょうか?

鎌田:日常的によく食べるおやつですね。最近は「meiji THE Chocolate」のように、おいしくてパッケージもおしゃれなチョコレートが多いので、手土産としてお渡しするととても喜んでもらえるんです。ちょっと気持ちを伝えたいとき、チョコレートは“媒介者”になってくれる気がします。

野村:チョコレートと聞くとまず思い浮かぶのは、お菓子学校での「最終試験」(笑)。チョコレートは作り方や扱い方がとても難しいお菓子なので、最終試験の課題だったんです。私はパティシエではないですが、小さい頃から甘いものは大好きで、最初に名付けたお人形の名前も「あんこちゃん」でした(笑)。

鎌田:そうなんですね(笑)。今日のテーマは「サステナブル」ということですが、チョコレートは一時期、カカオ生産での児童労働や生産環境が話題になった、社会性がある食品でもありますよね。

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リニューアルした「meiji THE Chocolate」の味わい方

鎌田:野村さんは新しい「meiji THE Chocolate」4種類の中で、好きな味はありますか?

野村:私はベネズエラが好きです。チョコレートを選ぶときは、カカオ分を基準にしていたのですが、ここ数年で、コンビニでも70%以上のチョコレートが買えるようになったのがすごくうれしいですね。疲れたときとか糖分が欲しいなと思ったときに、70%くらいのチョコレートを食べるのが好きです。

鎌田:私もベネズエラが一番好きです! このチョコレートの形にも、意味があるんですよね。

野村:そうそう、ごつごつしていたり、なめらかだったり、形によって口溶けが変わるし、少しだけ食べたいときは細かく割って、好きな量だけ食べられるのもいいですよね。
チョコレートも料理の素材も、小さく分けて舌の上に載せて、スーッて息を吸うと、口の中で香りが広がるし、舌の脇で苦味や酸味、甘味を感じるんですよ。「meiji THE Chocolate」はパッケージに産地の情報や味の成分だけでなく、そういう味の楽しみ方まで書いてあるので、読みながら食べるのもおもしろいです。

服もチョコレートも、植物からできている

──鎌田さんは洋服の生産背景に関する情報発信を行ったり、野村さんは食材の生産者を招いたトークイベントを開催したりされていますが、お二人が服や食材が「どのように作られているか」に着目したきっかけは何ですか?

野村:私は2011年の震災です。それまでは「おいしいものを作りたい」という動機で料理をしていましたが、それはただの自己表現に過ぎなくて、料理は素材があってこそできることだと、素材が手に入らなくなって初めて気づいたんです。そこから、素材が育つ環境である「自然」に興味が向いていきましたし、自分のお店でたくさんの人に食べていただいたり、情報を届けたりすることができるから、その場所を活用していこうと考えるようになりました。

もう1つ考え方が変わったきっかけは、留学から帰ってきた2000年ごろに、あるシェフが「友里ちゃん、料理人というのはデザイナーで、クリエイティブな存在なんだ」と教えてくれたことなんです。どんな感情より「おいしい」という感情が一番人を動かすし、満たしてくれる。

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(野村さんのお店では、オーガニックの野菜も販売)

鎌田:今日のイベントを見てくださっているお客さまも、先ほど伺ったらチョコレートを買うときは「味」で選ぶという方が多かったですよね。

野村:チョコレートも「meiji THE Chocolate」の4カ国のように、産地それぞれの風土や作り手によって、いろいろな味があるじゃない? 実は食材って、素材そのものの味を楽しんでもらうためには、生産者とコミュニケートしないと難しい。生産者に対して、ただ素材を買うだけの一方通行な関係ではだめなんです。

鎌田:私はもともと服が好きで、たくさん服を買ったり、雑誌のモデルやアパレルの販売員をしたりしていたんですけど、その服がどうやって作られているのか、どんな人たちが作ってくれているのか、飽きて捨てられたらどうなるのかなど、素朴な疑問が湧いてくるようになりました。

いろいろ調べてみると、環境への影響や労働環境など、服の背景にさまざまな問題がある一方で、こだわりや哲学を持って行われる服作りの現場、例えばコットン農場の話とか、糸作りの話とかプリントの仕方とか、染め方とかのお話がすごくおもしろくて。服というとコーディネートを変えて楽しむことしか知らなかったのですが、生産背景を知ると楽しみ方がぐんと広がったんです。「もっと早く知りたかった!」と思ったので、情報発信を始めて、それがいまのエシカルファッションプランナーとしての仕事につながってきました。その後、服だけでなく暮らしのなかで使う様々なものの背景についても掘り下げるためにLittle Life Labというオンラインコミュニティもスタートしました。

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(コットンの種を撒き、各自で育て、収穫した綿花を集めて糸をつくるところからの服作り体験を共有する「服のたね」)

──もう1つ、鎌田さんが主宰されている「服のたね」では、コットンを作るワークショップを行っているそうですね。

鎌田:はい、コットンの種を参加者の皆さんにお送りして、自宅のベランダや庭で育ててもらっています。5月頃に種まきをして、11月くらいには収穫できるようになります。みんなのコットンを集めて紡績工場に送るんですが、もちろん自分たちが育てたコットンだけでは足りないので、工場が持っているオーガニックコットンを混ぜてもらって、糸を作ります。そしてみんなでデザインを考えて、生地屋さんで織ったり編んだりしていただいて服を作る、という1年がかりの企画なんです。

野村:でも、コットンは、そんなに簡単には育たないですよね!?

鎌田:そうなんですよ。基本的には乾燥に強い、育てやすい植物ではあるんですが、慣れないうちは水をあげすぎてしまったり、年によっては気候のせいでうまく発芽しないこともあって。やれば必ず採れるというわけではないんです。

でも、服もチョコレートも、普段買うときに、それが植物からできていて、自然の条件や気候に左右されるものだとは、あまり意識しないですよね。物ができる過程って、なかなか生活の中で知るきっかけがないので、みんなで実際にコットンを育ててみて、うまく育たなくても体験としてシェアしましょう、ということをお伝えしています。

野村:それは良い経験ですね。もう1つの「Little Life Lab」では、具体的にはどういうことをしているんですか?

鎌田:私自身、服以外にも食べ物とか洗剤とか、タオルとか、暮らしの中で何気なく買って使っているいろんな物についても気になってきて、そういう疑問について考える場所があったらおもしろいだろうなと思って作ったのが「Little Life Lab」です。例えば、オーガニックな野菜と普通の野菜は何が違うんだろうとか、エコ洗剤と言われている洗剤は何がエコなんだろうとか、生活の中でちょっと気になる瞬間ってあると思うんですよね。でも忙しい生活の中でそんな疑問を忘れてしまうのはもったいないなと思って、疑問を持ち寄って掘り下げて考えたり、話し合ったりする場所として続けています。

「サステナブル」「エシカル」──身近になりつつある言葉の、その意味の変化

──近年「サステナブル」や「エシカル」「SDGs」という言葉を耳にする機会が増えましたが、2020年はステイホームやリモートワークなど、ライフスタイルが大きく変わった中で、そうした言葉の持つ意味合いが少し変わってきている気がします。

鎌田:確かに、家で過ごす時間が増えたことで、食べるものや着るものなど、暮らしについて思いを巡らせる時間が増えた方も多いかもしれませんね。「サステナブル」とか「エシカル」って、自分の生活や仕事とは別の場所にある概念のように思われがちだったんですが、そうではなく自分が何を食べるかとか、何を着るか、どのようにものを買うか、どこに暮らすかという、暮らしと地続きなテーマであることを実感しやすくなっているように感じています。「meiji THE Chocolate」も、カカオの原産国や生産している人たちに思いを馳せるきっかけを提示してくれていると思います。

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(明治がサポートしているエクアドル共和国のカカオ農家)

野村:やっぱり人間は生きているから、ずっと一人でいると心が枯渇してしまうし、人との触れ合いが必要不可欠ですよね。感染症対策には最新の注意を払って、緊張しながらレストランを営業していますが、おいしいものを食べたり飲んだり、音楽を聴いたり、全身で感じることは生きるエネルギーになるし、前向きな感情ってやっぱり他の人にも伝わっていくんですよね。そういう瞬間は、コロナ禍以前よりもっと濃密になった気がします。

鎌田:服も食べ物も、安定的に供給されていると、この状況がいかに奇跡的なことなのかって、あまり実感できないですよね。私は生産者側ではないですが、作り手の人たちの話を聞いていると、今回のコロナや、チョコレートで言えば毎年の気候変動とか、予測できないことと向き合いながら作り続けているんですよね。その格好よさとかおもしろさとか魅力を、私自身もっと知りたいし、たくさんの人が知る機会があればいいな、という思いが私の活動の原点であり、原動力にもなっています。

“持続可能な社会”の実現のために、私たちにできる第一歩とは

──実際の生活では身近に感じにくい「サステナブル」「エシカル」なことについて、誰でも実践しやすいことはありますか?

鎌田:生活の中で自分が選ぶ商品とか、働いている会社の企業活動が、どこにどういう影響があるものかという疑問って、改めて意識はしないまでも、そういう感覚は素朴に持っているのではないでしょうか。それをみんなで一緒に考えるための言葉の1つが「サステナブル」だと思うので、日々生活の中で、素朴に疑問に思ったことをちゃんと解決していく、ということが大切なんだと思います。

野村:私も同感です。「疑問を流さない」というのは大事なことですよね。もう1つは、どんどん買ってどんどん捨てて、と消費するのではなくて、一瞬立ち止まって考えてみる。伝統があるものでも、質の良いものでも、需要がなくなるとすぐに消えてしまうんですよ。「自分にとって何が気持ち良いのか」「何が必要なのか」って忘れてしまいがちだから、自分自身の価値観を大事にして、本当にいいものを選びたいですよね。

──なるほど。お二人が服や食べ物を買うとき、選ぶ基準はどういうものですか?

鎌田:私自身、朝起きてから寝るまで食べる物や飲む物を、全部常に120%納得して選んでいるかと言われると、そうではないんです(笑)。忙しくて合間にとりあえずなんでもいいからコーヒーを飲む、みたいなこともありますし。

ただ、自分が何かを選ぶときに「重視する要素を考える」ことはいつでもできる気がしています。例えば「安い方がいい」という基準が1つあったら、他に何を重視するかを考えてみる。チョコレートを選ぶときは、「meiji THE Chocolate」は産地で選ぶ、という基準が1つありますよね。判断基準は、新しい知識や価値観に触れるたびにどんどん更新されていくと思います。私もまだまだこれからいろんなことを学びながら、判断基準を増やしていきたいです。

野村:カカオでも野菜でも、自分の代わりに人生をかけて作ってくれている人がいる。産地や生産者を基準に選ぶことは、その人たちを支持することにもつながりますよね。

明治がサステナブルなチョコレート作りに取り組む意義

──鎌田さんが「社会性があるおやつ」とおっしゃったように、カカオの生産現場にはさまざまな課題がありますが、明治は「メイジ・カカオ・サポート」を通じて、カカオ農家に農具を提供したり、生産方法を指導したり、現地の学校教育を支援したり、持続可能なカカオ生産のためにさまざまな取り組みを展開しています。「meiji THE Chocolate」の2020年秋のリニューアルでは、ベネズエラ、ブラジル、ペルー、ドミニカ共和国の4種類になりましたが、この4カ国を含む8カ国で支援を行ってきました。このような取り組みについて、お二人はどう考えますか?

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(メイジ・カカオ・サポートで支援している国)

鎌田:今回「meiji THE Chocolate」のCMに出演させていただいて、すごくうれしかったのが、仕事の現場や友人の家に行ったときに、みんなが「meiji THE Chocolate」を用意していてくれたんですね。「meiji THE Chocolate」みたいに、コンビニやスーパーで展開されていると、「あ、あのチョコレートだ!」ってみんなが手に取ってくれる。

たくさんの人の暮らしの中に、選択肢としてこのチョコレートが並んでいるというのは、明治さんのような大企業でないとなかなか実現できないこと。手に取った人が「本当に産地によって味が違うんだ」とか「カカオの農法もいろいろあるんだ」とか、興味を持てる入り口が日本中にいっぱいあるって、本当にすごいことだなと実感しました。

野村:おっしゃる通り! 明治さんのような大企業と、小さいお店が共存することって、どの世界でも大事なんですが、たくさんの人に「こういう考え方があるよ」と提示できるのは、圧倒的に認知度が高い大企業の強みだと思います。

このトークが始まる前に明治の方に、「どうしてmeiji THE Chocolateやメイジ・カカオ・サポートのような取り組みを始められたんですか?」って伺ったときに、チョコレートがものすごく好きで、情熱のある方たちが社内にいらっしゃったからというお話を聞いて。

鎌田:私も明治の方が、「生産者が幸せでないと、おいしいチョコレートは作れない」というお話をされていたのが、すごく印象的でした。

野村:「好きで好きでしょうがない!」という気持ちって、周りも惹かれて巻き込まれるし、続いていくんですよね。明治さんのような大企業にもそういう人たちがいるって、すごく素敵なことだなと思います。

──お二人の「サステナブル」の考え方や日々取り組まれていることと、「meiji THE Chocolate」や「カカオ・サポート」などの明治の姿勢はつながっているんだなと感じました。鎌田さん、野村さん、本日は貴重なお話をありがとうございました。

【vol.1 】平野紗季子さん×土屋公二さん

鎌田安里紗(かまだ・ありさ)さん(エシカルプランナー・Little Life Lab主宰)
1992年徳島生まれ。衣服の生産から廃棄の過程で、自然環境や社会への影響を意識する"エシカルファッション"に関する情報発信を積極的に行い、ファッションブランドとのコラボレーションでの製品企画、衣服の生産地を訪ねるスタディ・ツアーの企画などを行っている。エシカルファッション講座などを提供する一般社団法人unisteps共同代表。著書に『enjoy the little things』(宝島社)がある。

野村友里(のむら・ゆり)さん(料理人、「eatrip」主宰)
長年おもてなし教室を開いていた母の影響で料理の道へ。ケータリングフードの演出や料理教室、雑誌での連載やラジオ出演などに留まらず、イベント企画・プロデュース・キュレーションなど、食の可能性を多岐に渡って表現している。2012年に〈restaurant eatrip〉(原宿)を、2019年11月に〈eatrip soil〉(表参道) をオープン。生産者、野生、旬を尊重し、料理を通じて食のもつ力、豊かさ、美味しさを伝えられたら、と活動を続ける。著書に『eatlip gift』『春夏秋冬おいしい手帖』(共にマガジンハウス)『Tokyo eatrip』(講談社)『TASTY OF LIFE』(青幻舎)など。

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