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チョコレートをこよなく愛する古市さんと語り合う、「meiji THE Chocolate」後編

「主食はチョコレート」という食生活を送っている古市憲寿さん。前回は、その言葉に違わぬ見事な食べっぷりを見せ、チョコレートへの尽きぬ愛情を語っていただきました。今回は、「meiji THE Chocolate」を実食! 果たして、古市さんの感想は? 「チョコレート王子」こと藤原成一が熱弁をふるう「嗜好品としてのチョコレート」に古市さんが寄せた感想とは? チョコレート愛に満ちた二人の対談が続きます。

創意工夫にあふれた日本のチョコレート

古市:正直なところ、日本のチョコレートはちょっとあっさりしている気がします。僕にとってチョコレートは主食なので「食べたな」という感覚が大事(笑)。食べごたえが欲しいんです。

藤原:古市さんにお持ちいただいたこのフレイアのチョコレートもそうですが、ヨーロッパのチョコレートは厚みがあるものが多いですよね。というのは、ヨーロッパの人たちは日本人と比べて顎の力が強いんですよ。さらに、体温も高い。平均で37度ぐらいありますら、厚みがあっても口の中で容易に融けるんです。

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古市:噛む力が弱くて、体温も低いという話はおもしろいですね。だから日本では薄いチョコが好まれるのか。僕は分厚い方がいいですけど(笑)。でも、創意工夫にあふれたチョコレートは圧倒的に日本の方が多いと思います。たとえばノルウェーは3年ぶりに行っても、スーパーに並ぶチョコレートの顔ぶれがほとんど変わらない。その点、日本のチョコレートのバリエーションはむちゃくちゃ充実していますよね。

藤原:明治では毎月毎月、チョコレートの新製品を出していますから。

古市:どれくらいの数を出しているんですか。

藤原:一番多かったときで、マイナーチェンジも合わせて年に400点ほど。もう地獄のような日々でした(笑)。

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古市:それはすごいですね。開発の取っ掛かりはどこから得るんですか。

藤原:世の中で注目されている素材だったり、健康志向などのニーズを踏まえて開発するものもあれば、研究所が新しい製法や原料を開発し、それを消費者のニーズと結びつけて商品化するものもあります。

古市:藤原さんがいままで開発したチョコレートの中で、一番の自信作はどれですか?

藤原:うーん。どれも苦労しているからなあ(笑)。あえていえば、入社した年に担当した「メルティキッス」でしょうか。「メルティキッス」は日本人の好みに合わせた、繊細な口融けのチョコレートです。ただ、植物油脂も使っているので、日本以外の国ではチョコレートのカテゴリーに入らない。「メルティキッス」をチョコレートと呼べるのは世界の中でも日本ぐらいです。

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古市:なるほど。勉強になります(笑)。

「meiji THE Chocolate」に桜餅の風味を感じた

藤原:今日は古市さんに「meiji THE Chocolate」を食べていただきたくて、全種類お持ちしました。まずはカカオ55%のダークミルクチョコ、「ベネズエラ」はいかがでしょう。ミルクが入ったチョコなのに、香ばしいナッティな香りとコク、旨味が広がるはずです。

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古市:はい……。そうですね、ナッティ、かな(笑)。

藤原:同じシリーズの「ブラジル」も食べてみてください。レシピは「ベネズエラ」と同じですが、カカオ豆が違うんです。

古市:こちらもいただきます……。ああ、さきほどのチョコレートとは確かに香りが違いますね。

藤原:そうでしょう。こちらもミルクの味わいの中に、ちょっと酸っぱさを感じたり、さっぱりフルーティな柑橘系の香りがしますね。

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(「ブラジル」の70%と55%のパッケージを見比べる古市さん)

古市:この2つは製法が同じでカカオ豆だけが違うんですね。いろいろな製法があるんですか?

藤原:ええ。カカオ豆というのは実は発酵食品で、果肉と種を一緒に発酵させます。カカオ豆と呼ばれているのは種の部分なんですね。私たちは、それぞれの産地のカカオ豆の特徴が最もよく出るベストな製法を決めるために、一つのカカオ豆だけで100通りを越える試験を行います。発酵の時間、どんな状態で発酵させるのか、どんなやり方でローストしたらどんな味になるのか。試験を行い、すべて評価、分析していくんです。

古市:評価は個人の主観にも左右されると思いますが、どのようにして最終的なジャッジを下すんですか?

藤原:研究所には社内の味覚試験に合格した人が約50人程いて、この人たちの評価を参考にしてジャッジしていきます。ただ、古市さんがおっしゃるように味にはそれぞれ好みがあるので、うまいとかまずいといった判定はしません。例えばカカオ豆を評価するときには、ロースト感とか酸味、渋みなど要素別に評価していきます。あとは分析機器も使いますね。どのような成分なのかを機械で分析して、人間の味覚とセットで評価します。

古市:なるほど。客観的な評価軸によるんですね。

藤原:次に、カカオ70%の「ペルー」も召し上がってみてください。これは一番特徴が強いタイプです。紅茶のような香りの後に、フローラルな花のような香りがして、途中から桜餅っぽい香りも感じると思います。

古市:何だか誘導されている気がしますが……(笑)。あ、でも確かに桜餅みたいな風味を感じます。苦味よりもフローラルさが先に来ますね。

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(「ペルー」のフローラルで複雑な味わいに驚いたようです)

藤原:やった(笑)。仕事柄、僕は世界中のチョコレートを食べていますが、こんなにフローラルなチョコレートは他にないです!

嗜好品として素材の違いを食べ比べてみる

藤原:最後にカカオ70%の「ドミニカ共和国」も試してみてください。スパイスの一種である、シナモンのような香りが特徴なんですが、途中からレーズンのようなドライフルーツの味がして、最後はスモーキーな香りを楽しめると思います。

古市:いただきます……。ああ、これはお酒に合いそうですね。

藤原:それはうれしいですね。「ドミニカ共和国」は、「meiji THE Chocolate」の中で一番香りの変化が楽しめるチョコレートだと、僕は思います。大人向きでウイスキーやラム酒にも合わせやすいです。チョコレートは日本酒にもビールにも合いますし、お酒との組み合わせは無限大なんですよ。さて、4種類食べてみていただいたところで、「meiji THE Chocolate」の感想はいかがですか?

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古市:僕としてはやはり、「ミルクチョコレート」の方が好みなんですが、桜餅の風味が感じられた「ペルー」は新鮮でした。主食としてチョコレートを食べているので、これまで風味を意識して食べたことがなかったんです。でも、嗜好品として、チョコレートをワインやコーヒーのように素材の味で食べ比べてみるのはおもしろい体験だと思いました。ワイン愛好家は生産地に行きたがりますが、チョコレートもそのうちツアーができたら楽しそうですね。カカオ豆の産地は世界中にどれぐらいあるんですか?

藤原:50ぐらいでしょうか。カカオが取れるのは、緯度で言うと、赤道を挟んでだいたい南北20度の範囲です。日本だと、沖縄や小笠原諸島でも、ハウスを使えばぎりぎりカカオを生産できます。

古市:地球も温暖化していますし、これからもっと日本でも作られるようになるかもしれないですね。楽しみ方がワインと似ているので、伸びしろがありそうです。藤原さんがこれから作ってみたいと思うのは、どんなチョコレートですか?

藤原:口の中でドラマが起きるチョコレートですね。まるで映画のように、起承転結があるのが究極のチョコレートだと考えています。いつかは世に送り出したいですが、いまはまだ、そんなチョコレートを作っても価値がうまく伝わらないと思うんです。まずはフルーティとかフローラル、ナッティなど、カカオ豆の風味をみなさんに理解してもらうのが先決。「meiji THE Chocolate」は日本のカカオ文化を引き上げていくための教科書だと位置づけています。

古市:この国のチョコレートリテラシーもワインのように上がりそうですね。今日は嗜好品としてのチョコレートの魅力や可能性を知ることができてよかったです。

藤原:こちらこそ。これからも主食として、そして嗜好品としてチョコレートをたくさん食べていただきたいと思います。ありがとうございました。

[プロフィール]
古市憲寿(ふるいち・のりとし)さん
1985年東京都生まれ。社会学者。著書に『絶対に挫折しない日本史』『絶望の国の幸福な若者たち』『誰の味方でもありません』小説『平成くん、さようなら』『アスク・ミー・ホワイ』ほか多数。テレビで「普段の食事はチョコと水のみ」という食生活が取り上げられ話題に。一番好きなミルクチョコレートは、ノルウェー留学中に出会った「メルケショコラーデ」。

藤原成一(ふじわら・せいいち)

食品開発本部 カカオ開発部 開発1G長。愛称はチョコレート王子。瀬戸内・大三島出身。歌、料理、豆笛、釣り……などあげだしたらキリがないほどいろんなことを語れる。いろんな人と話すことも好きなので、すぐいろんなところで友達を作ってくる。研究所出身で、カカオ産地ベネズエラへの訪問経験もあり。メルティ、チョコレート効果、ミルクチョコレートなど、明治を代表する商品に研究所でかかわってきている。

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