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映画『東洋の魔女』(2021)の感想

映画『東洋の魔女』を映画館で観てきた。東洋の魔女と呼ばれた日本女子バレーボールチームのドキュメンタリーで、監督・脚本は、フランス人のジュリアン・ファロで、上映時間は100分、フランスの製作だ。

1964年の東京オリンピックで金メダルに輝いた女子バレーボール日本代表チームとは何だったのかを問う映画である。

大松監督の過酷な練習に耐える選手たちの映像が残っていたことにまず驚いた。ただ、すべてが映像に記録されていたわけではないので、アニメの『アタックNo.1』がたびたび挿入され、空白箇所を埋めていくというトリッキーな演出だ。

監督はフランス国立スポーツ研究所のスポーツ映像の管理部門で働いているそうだ。

TOKIONの監督のインタビューで興味深かったのはここの部分だ。

――師匠と弟子の関係を重視する日本の選手育成方法は、西洋の方法と大きく異なると思います。日本の練習方法をどのように捉えていますか?

ファロ:(中略)当時は文化的な誤解やズレがあったと思いますが、欧米人は自分達とは異なる大松監督の指導や練習方法に衝撃を受けたと聞いています。欧米は女性の自由を語る一方で、女性は男性より劣っていると考えていて、女性の自由度は高まっていたものの、「女性に過酷な訓練は必要ない」というのが大多数の意見でした。そんな価値観が根底にある中で、過剰な練習をして体を酷使する日本の女子チームと対峙することになりました。日本は家父長制の社会ですが、大松監督は「女性を男性のように鍛える」とも言っていました。保守的であると同時に開放的でもあるこの複雑な指導論に興味を持ちました。この作品で伝えたかったことの1つは、日本の練習の特異性を世界に伝えることです。当時の大松監督の過酷な練習は他に類を見ないものでしたが、現代のハイレベルな女性アスリートはみんな、男性と同等の練習をしています。

https://tokion.jp/2021/05/10/the-witches-of-the-orient/

映画を観てから時間が経過してしまい、はっきり覚えていないのだが、一回失敗すると最初からやり直しという地獄のような練習があった。(あのシーンには震えたね。)

『東洋の魔女』たちの連戦連勝には、確かな根拠があったことがこの映画を観るとよくわかる。

しかし、彼女たちの体型を見ていると、今の女性アスリートたちと比べれば、女性らしい体付きをしている、という印象は持った。今のアスリートは、スポーツに科学や栄養学に基づいているとは思うが、もっと痩せている。

驚いたことに『アタックNo.1』の第一話がYouTubeに公式にアップロードされているではないか。

ただ、スポーツには、どうしてもナショナリズムとマッチョイズムがまとわりついてくるので、今はちょっと距離を置いている。ファンタジーとして楽しめなくなってきた。

東洋の魔女たちの輝きと成功は、戦後という時代が彼女たちの境遇に大きな影響を与えており、スポーツと国家、個人は、やはり無関係ではいられないことがよくわかった。

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