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めぐるんスタッフが感じる、世界の観光情勢と出羽三山の国際化

みなさん、おばんでがんす。

株式会社めぐるんスタッフの水澤です。

これまでの記事を読んでくださった方、再びお会いできて光栄です。
お初にお目にかかる方、ようこそ、めぐるん社へ。過去の記事では執筆者が出羽三山と深い関わりを持つようになったきっかけや、持続可能な観光に関わる内容を発信していますので、お時間あればぜひそちらも覗いてみてくださいね!

さて、今回は「出羽三山の国際化」についてお話ししたいと思います。

日本が「観光立国」を志すようになってから、日本を訪れる外国人観光客は年々増えているのは周知の事実です。世界的なパンデミック下でその流れは一旦途絶えてしまいましたが、現在では再び世界中から観光客が日本に集うようになってきました。
そのような話は、何も東京だけのことではありません。Authenticity(正統性)のある日本文化を求めて、多くの外国人旅行客が出羽三山はじめ、これまで大都市の陰に隠れて注目されてこなかった地域に目を向け始めているのです。

観光客のどのような変化が、出羽三山への注目を生んだのでしょうか?そして、国際的に注目されつつある出羽三山が提供できる価値とは一体、なんでしょうか?

Yamabushido.jpより抜粋

1. 世界の観光トレンドと、訪日外国人の志向変化

一産業から、国際的存在感を高めるための切り札へ

観光を「国内の一産業」ではなく「国際社会における日本の存在感を向上させるための切り札」として活かすための戦略がとられています。2019年末からの新型コロナウイルスの流行により、国境をまたぐ観光は一時的に不可能になりましたが、それから3年以上が経過した今、徐々にパンデミック以前の観光産業の姿を取り戻しつつあります。

広く浅くから、良質を深く

日本がインバウンド観光に注力していく過程で、訪日外国人観光客の志向の変化が見られます。2000年代までの日本における外国人観光においては「購買」が多くの割合を占めていました。その後、日本でのショッピングや日本食体験など、日本での体験が飽和してくると、訪日観光客たちはこれまで注目することがなかった(体験する機会がなかった)日本の内面により目を向けるようになります。量的な購買・消費から、多少単価が高くとも、日本独自の自然、文化、社会との同化を通して、質の高い体験を得ることを目的とした観光に、ニーズがシフトして行ったのです。訪日外国人の多様化が進んだことにより、日本の観光地に求められるニーズも同様に多様化しているのです。


海外からの旅行客にとって、「高い付加価値を感じる体験」が、今後より求められていく。
(画像はYamabushido.jpより抜粋)

2. 日本観光の国際化と課題

日本を訪れる外国人と彼らのニーズが増加する一方、日本の観光業界が質的・量的な変化に対応できているかというと、実はそうでもありません。その理由として、日本のこれまでの観光戦略と、都市部と地方の格差があげられます。

日本の観光業界はこれまで「待つ観光」を重視してきました。高度経済成長期における人口増加と国民生活のレベルの向上を経て、全国各地に宿泊施設とテーマパークを建設して利用者を「
待つ」ことで収益を上げることができていました。しかし、生産人口の減少、生活スタイルの変化、経済成長の減速に加え、日本に対する知識をそもそも持たない外国人観光客の存在が大きくなるにつれて「魅力的な場所を抱えて何も手を打たないままでは、目的地として選んでもらえない」という事態が顕著に現れてきているかと思います。

長期間の滞在によって得られる体験に価値を見出す「体験型観光」を目的とした富裕層(注)のための施設が地方に少ないという点も、日本観光が抱える課題の一つです。上質な体験を求める富裕層に、宿泊を含めた特別な価値を提供できるかが、今後の日本、特に地方における観光の喫緊の課題であると考えます。
日本が国際観光の舞台において、比類なきポテンシャルを秘めているということは既に感じられているかもしれません。歴史・伝統からサブカルチャーに至るまで、私たちの国は観光資源に溢れています。今後はそれらを使うだけではなく、発信し、知ってもらい、選んでもらうためのストーリー設計=戦略が重要になっていくのではないでしょうか?

「日本観光」に対するイメージを変えていく必要があるかもしれません。

3. 出羽三山に見出される巡礼観光地としての魅力

訪日外国人の増加及びニーズ変化は、無論出羽三山も対象としています。これまで三重・熊野と双璧をなす巡礼の地として栄えた出羽三山ですが、「信仰」というバックグラウンドを持たない外国人観光客は、出羽三山のどこに魅力をみいだすのでしょうか?
出羽三山に外から関わる私の視点から、以下の3点があげられると考えています。

  1. 「非日常」= 自分の日常とは違う習慣で生きることになる

  2. 「自然」= 豊かな自然に囲まれ、自然と共生する生活

  3. 「文化的独自性」= まだ知らない「日本」を知ることができる体験がある

全く異なる文化で生活を送っている外国人観光客だけでなく、日本人観光客にとっても、出羽三山での生活はまさに「非日常」を体現したもの。豊かな自然を残しているという点もそうですが、何より出羽三山が持つ「文化的独自性」が、観光資源として見る上で最も大きな価値であると考えています。東京、大阪、京都などのメジャーな観光地では絶対に得ることのできない体験をすることができる、自分がまだ見たことのない日本を見ることができる、日本では数少ない巡礼観光を、あまりフォーカスされていない地域である東北で行うことができる。これら全て、出羽三山が観光目的地として持つ独自性です。「日本」を別視点で見ることができる場所として、出羽三山は国際観光の目的地としてのポテンシャルを大いに有しています。


以上で述べた強みを活かすべく、めぐるん社では、米国、ニュージーランド出身の外国人スタッフを通した積極的な情報発信(山伏として観光プログラム及びオウンドメディア運営)に加え、海外在住のアドバイザーと協力することで、インバウンドが求める最新のニーズを拾い上げつつ最適な「体験価値」の提供を目指して模索しています。

日本にはるばる訪れてもらい、ネットで見る動画やSNSの投稿の通りの日本を実感してもらうことも、外国人観光客の体験価値としては十分かもしれません。ですが「他の人が知らない日本」を知りたい海外の皆さんからの需要に、私たちはこれまで十分に応えられてきたでしょうか?彼らが知らない日本はまだまだたくさんあれど、そこまで彼らに訪れてもらうための期待値の構築は難しいもの。私たちめぐるん社は「地域の持続可能性」と「文化的正統性」を軸に、これまで山伏文化に触れることのなかった人たちへ、日本の新たな一面としての体験を提供していきます。

左端がめぐるん社CEO、海外からの修行体験者を挟んで右端がめぐるん社Project Manager. 多様なバックグランドを生かしつつ、伝統的な修行を経た山伏として、唯一無二の価値を提供しています。

4. 出羽三山の未來

日本観光が抱える課題と将来への展望は、そのまま出羽三山にも応用できることなのではないかと、私は考えています。出羽三山に存在するあまたの観光資源を1つ1つ利用し、提供していくよりも、1000年以上の信仰が息づく「出羽三山」を地域ぐるみで発信し、体験してもらうストーリーを組み立てることで、観光客に対するより大きな体験価値を提供できるでしょう。

私はお客さんに提供する体験価値の核として「目的地が持つストーリー」が大切であると考えています。出発〜目的地〜帰宅の流れの中でどんな体験(=ストーリーライン)をお客さんが欲していて、また旅行体験の提供者がどんな体験を得てほしいのかがすりあっていることで初めて、観光客の選択が彼らにとって最良のものとなるのではないでしょうか。

現在、日本の観光戦略として、東北エリアの観光にもかなり力が入っているかと思います。私が秋田の大学に在籍している間にも、年々多くの外国人観光客を、秋田の街中で見かけるようになったという実感があります。反面、これまでメジャーな目的地とされてきた関東・西日本からは離れており、訪れてもらうための強い動機付けが必要なのもまた事実です。そのために、「出羽三山に何があるか」という観点だけでなく、「出羽三山という1つの地域で、どんな体験が得られるか」という観点を打ち出す必要があるのではないでしょうか。出羽三山エリアの中にある寺社仏閣、自然遺産、宿坊などコンテンツを単体で提供するより、全部まとめて1つの「文化体験コンテンツ」を提供して、長期間にわたって出羽三山での生活体験をしてもらうことで、顧客により大きな体験価値をもたらせるのではないかと、私個人は思います。

山形市内を歩く山伏。出羽三山のみならず、幅広い地域に山伏文化が根付いています。

5. まとめ

最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
出羽三山が類まれな歴史的・文化的遺産を有していることは周知の事実ですが、それらを「単発の体験」としてしまっては、出羽三山の魅力を充分に伝え切ることは難しいのではないでしょうか。
出羽三山の存在感をより高めていくためにも、各施設ごとの伝統を大切にしつつ、地域ぐるみでの体験価値向上が、一つの鍵になるかもしれません。

本アカウントでは「出羽三山に魅力を感じた20代」の視点から、地域の取り組みとその意義、未来に向けた価値創出などに関して、定期的に発信していきます。
過去の記事にも目を通していただけると幸いです。

では、また次回の記事でお会いできることを楽しみにしています!



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