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【フェムテック通信#20】2023年1月〜5月の海外Femtech大型資金調達まとめ10選(13億円以上)

女性の健康に特化したテクノロジー「フェムテック」は、世界的に拡大しているが、今回の記事では、2023年1月〜5月の海外フェムテック大型資金調達(1,000万ドル=日本円で13億円以上※)を10件紹介します。
(※1ドル=130円前後で計算)

大型資金調達を実施するということは、新たなサービスや市場に展開するという意味でもあり、また13億円以上の資金調達を実施するというのは、ある程度の規模がある事業とも言えるのではないでしょうか。

ちなみに筆者が調べた限り、2022年の国内フェムテックの資金調達はこちらです。海外フェムテック市場の大きさが伺えます。

1.米Embr Labsは、更年期向けホットフラッシュ軽減デバイスで 46億円の資金調達

更年期女性向けのホットフラッシュ軽減デバイス「Embr Wave2」。手首の内側の皮膚に冷却または温める感覚を与えて、自立神経系にアクセスすることで、ホットフラッシュの緩和・ストレス管理・睡眠の改善を促すデバイス。販売拡大のために3,500万ドルの資金調達を実施。

ホットフラッシュ関連のデバイスは、以下にまとめているので参考にしてほしい。

2.不妊治療プラットフォームの米Kindbodyが、3月に130億円。5月に33億円の資金調達

JPMorgan’s Morgan Healthが、オンライン・オフラインの不妊治療クリニックを福利厚生で提供するKindbodyに2500万ドルを投資。今回の投資で、高品質の生殖医療へのアクセスを拡大することを目的としており、不妊症を含むユーザー体験と健康状態を改善しながら、さらなるコスト削減を目指す。

Kindbodyは不妊クリニックを所有・運営し、不妊治療に対して包括的なオンライン・オフラインで提供している福利厚生サービス。112の大企業にサービスを提供し、240万人以上の人々をカバー。不妊検査、教育、遺伝子検査、体外受精(IVF)、ドナーおよび代理出産サービス、養子縁組、および身体的、精神的サポートを提供している。

米国在住の知り合いの話しだと、個人向けには見込み顧客への無料セミナーやAMH検査などを実施。「患者リクルーティング」は日本へのトレースポイントとしても有効と考える。

3.カナダのDTCテレヘルスFelixが、13億円の資金調達(4/11)

カナダのデジタルヘルススタートアップであるFelixが、1,000万ドルの資金調達。Felixは、テレヘルスと処方薬配達を提供するDTCのデジタルヘルスケアプラットフォームであり、避妊薬と勃起不全治療のオンラインアクセスを提供することで知られている。
他にもニキビ・口唇ヘルペス・脱毛症・性器ヘルペス・アレルギーおよび緊急避妊薬に対するオンライン医師相談およびシームレスな薬物配達を提供しており、筆者のイメージだと米Hims&Hersのビジネスモデルに近い。

米Hims&Hersと同様で、偏見やアクセス不可能と感じる分野にサービスを提供し、カナダ全体の医療を補完・強化している。今回の資金調達で、ケベック州への拡大および偏頭痛・メンタルヘルス・HIV予防などの新しいサービスへ展開。

カナダは世界第2位の国土で広い。国全体に医療アクセスを行き渡らせるのは難しいためか、自宅検査キットなどが豊富。以下のnoteでカナダの自宅検査キットを紹介しているので参考にしてほしい。

4.搾乳アプリを提供するEmulaitが、14億円の資金調達

授乳体験を模倣し設計された授乳システムを提供。4年間の研究、7つの特許技術、3Dスキャン、FDA承認の医療用グレードを組み合わせて、母親の胸の形、色、弾力性、質感、感触を再現。

Emulaitボトルを注文するには、母親はアプリをダウンロードして乳房のデジタル スキャンを行い、25 種類のボトルトップバリエーションを使用して、パーソナライズされた授乳システムを作成。サイズ・ボトル・乳首には複数のミルク穴があり、実際の乳首の生理学的な流量を再現し、過食や肥満のリスクを軽減するとのこと。シリアル起業家であるShilo Ben Zeevによって設立され、シリーズAで1,100万ドルの資金調達。

欧米では自動搾乳機のスタートアップ企業が、大型の資金調達を実施しており、今後日本でも同様のビジネスモデルが出てきそう。

5.健康とパフォーマンスの目標達成ツールを提供するFountが、16億円の資金調達

健康と運動の能力を上げるためのプログラムを開発しているFountが、1,200万ドル(16億円)の資金調達。スポーツ選手などが、集中力を保ち、快適な睡眠が得られることで、最大のパフォーマンスが発揮できるようなプログラムを提供している。

独自のデータとAIの専門知識を組み合わせて、時差ぼけソリューションであるFlyKittを含む製品を開発している。

6.インドのDTCスタートアップGynovedaが、アーユルヴェーダのヘルスケアソリューションを促進するため、13億円の資金調達

2023年半ばには、世界一の人口となるインド。フェムテック企業も多く存在するが、2022年世界経済フォーラムのジェンダーギャップ指数は135位(日本:116位)と、ジェンダーギャップが大きい国である。
Gynovedaは、女性のためのアーユルヴェーダ(※)に基づく医療を提供しており、思春期から更年期までのセルフケアを促進している。

※瞑想やヨガ、オイルマッサージ、呼吸法、ハーブを用いた食事療法などを日々の生活に取り入れ、病気の予防や心と体の健康を保つことを目的としているもの。

7.Axena Healthが33億円の資金調達を実施し、女性の失禁のためのデジタルヘルス治療であるLevaの販路拡大

骨盤底筋を鍛えるデバイスを開発しているAxena Health。医師の処方を元に使用可能なLevaはFDAも取得している。
骨盤底筋トレーニングは、日本でも徐々に増えてきているが、失禁はフェムテックの課題の中でも特にタブー視される分野であり、課題をどう顕在化させるかが、日本発のソリューションを生むポイントになると考える。

8.テレヘルス皮膚科の英Skin+Meが、16億円の資金調達

パーソナライズされた処方箋ベースのスキンケアを提供するSkin+Meが、1,000万ポンドの資金調達。Skin+Me は、高学歴のユーザーがパーソナライズされた効果的な製品を支持しており、既製の製品を敬遠することをいち早く理解して、急速な成長を遂げている企業。

日本でも、資生堂が2019年に買収した、スキンケア製品を手のひらで自由自在に混ぜて使う「スムージーコンセプト」のドランク エレファントも人気があり、自分独自のスキンケアは注目すべき分野と考えている。

9.マタニティケアのOula Healthが、25億円の資金調達

妊娠・出産・産後をターゲットに、ニューヨークを拠点とする産科クリニックを経営しながら、オンライン・オフラインで包括的にサービスを提供するOura Healthが、1,910万ドル(25億円)の資金調達。フェムテック企業初のユニコーン企業となったMaven Clinic創業者Kate Ryderも、エンジェル投資家として投資している。

「最高の産科ケアをすべての人が利用できるようにする」をビジョンに掲げ、米国で出産の約40%をカバーしているメディケイト(※)含む、主要な保険で受け入れられている。

※米国の健康保険システムは、所得と年齢で仕切られており、多くの先進国と制度が異なっている。65歳未満の場合、民間保険(職域・個人)・メディケイト・無保険者のパターンが存在している

10.従業員向けヘルスケアアプリを提供する英Peppyが、58億円の資金調達

2023年3月に、女性の健康戦略の一環として、2,500万ポンド(42億円)を計上することを発表したイギリス。
従業員向けヘルスケアアプリPeppyが、4,500万ドル(58億円)の資金調達。

Peppyをはじめた際、従業員の福利厚生としての「更年期障害サポート」は世界初だったが、更年期分野の関心がイギリス全土で広がり、今ではイギリスの中学校では更年期障害についての授業も行われている。

国の動きをいち早くキャッチし、ビジネスを広げた一例と言える。

【まとめ】国の特徴や政治の動きを理解した上での、ビジネスモデルのトレースが求められる

インドのGynovedaやイギリスのPeppyなど、国の文化や政治の動きをいち早くキャッチし、ビジネスを広げた一例と言える。

日本では、2023年4月から育児・介護休業法の改正により、従業員が1,000人を超える企業の事業主は、男性労働者の育児休業等の取得状況を年1回公表することが義務付けられた。
公表することが義務化されることで、企業も動かざるを得なくなるため、男性労働者の育児休業も視野に入れたビジネス展開は、一つのヒントになるのではないかと推測している。