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活躍する若手社員の2つの習慣:ジョブ・クラフティングを促し部下を育てる

 先日、管理職の悩み1位は「部下の育成」であるというネットニュースを読みました。「長期雇用」「年功序列」「タイトな職場関係」という人材育成の3条件が崩れつつある(中原 2017)中で、若手社員の育成がアカデミックの世界でも重要な関心事項になっています。では、成長する若手は日々どのようなことをしているのでしょうか?

「意識を高める」だけでは成長しない

 例えば、仕事をする際の手順を変える、一緒に仕事をする人を変える、といったような仕事の主体的な変更は、ジョブ・クラフティングと呼ばれています。このジョブ・クラフティングには、①仕事のやり方の変更、②人との関わり方の変更、③仕事の捉え方の変更、の3つの種類があります。この3つと、職場での成長の間にはどのような関係があるか検討したところ、以下のことが確認されました。

①仕事のやり方の変更は、業務能力の向上と、協働スキルの向上に効く
②人との関わり方の変更は、協働スキルの向上とタフネス向上に効く
③仕事の捉え方の変更と、これらのスキルの向上の間には関係が見られない

 つまり、若手が成長するためには「自分の仕事を見つめ直し、やりがいを感じる」「自分の仕事の社会的な意義について考え直す」ことによって、仕事の捉え方を変更するだけではダメで、実際に仕事のやり方や、仕事における人との関わり方をを工夫する必要があると考えられます。

図2 2

*図は池田ほか(In Press)から引用
図中、タスク次元JCは①仕事のやり方の変更に、人間関係次元JCは②人との関わり方の変更に、認知次元JCは③仕事の捉え方の変更に該当

活躍する若手社員の習慣 

 では、①仕事のやり方の変更、②人との関わり方の変更とは具体的にどのような行動を指すのでしょうか?まず、①仕事のやり方の変更の例としては、仕事の中身や作業手順を変更することや、仕事をやりやすくするために必要な作業を追加するこなどが挙げられます。普段から、上司に言われた通りのやり方で仕事を進めるのでなく、自分にあった進め方をしている人や、自分の関心のあることを追加する人は、仕事のやり方の変更している人に該当するとと考えられます。
 次に、②人との関わり方の変更の例としては、仕事を通じて関わる人の数を増やしていくことや、周囲の人との関係が良好になるような工夫をすることなどが挙げられます。仕事を進める上でわからないことが生じた時に、それについて詳しい他部署の人や、他社の人に話を聞きに行く人や、困った時に相談しやすい雰囲気を作るために、職場で業務以外のことも話すよう工夫している人などは、人との関わり方の変更をしている人だと考えられます。

仕事のやり方の変更と人との関わり方の変更を促すには?

 このような、仕事の主体的な変更がよく行われる職場の特徴として、社員の自律性が尊重されている上司と部下の間に良好な人間関係が築けている、上司が部下のパフォーマンスに対してのみフィードバックするのではなく、業務プロセスに対してフィードバックしている、などが挙げられます。一方で、上司が部下のタスクと時間を厳密に管理している場合は、仕事の主体的な変更が生じにくいことも示されています。

まとめ
・若手が成長するためには、仕事の捉え方を変更するだけではダメで、実際に仕事のやり方や、仕事における人との関わり方をを工夫する必要がある
・仕事のやり方や、人との関わり方の変更は、「自律性の高い職場」「上司と部下の間に良好な人間関係が築けている職場」「上司が部下の業務プロセスに対してフィードバックしている職場」で生じやすい

この記事の、もとになった研究はこちら

(山内研と株式会社マイナビの共同研究です)

もっと詳しく知りたい人へのおすすめ文献
・LEE, J., & LEE, Y.(2018)Job Crafting and Performance: Literature Review and Implications for Human Resource Development. Human Resource Development Review, 17(3):217-313
・森永雄太,鈴木竜太,三矢裕(2015)従業員によるジョブ・クラフティングがもたらす動機づけ効果:職務自律性との関係に注目して. 日本労務学会誌,16:20-35
・高尾義明(2019)ジョブ・クラフティング研究の展開に向けて : 概念の独自性の明確化と先行研究レビュー. 経済経営研究,1:81-105



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