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美術展が好き。 |自然と人のダイアローグ

美術館に行くのが、好きだ。

私にとって芸術は、日常生活の対岸に存在する、非日常的なものだ。辛く険しい現実を忘れさせてくれる、特別なもの。月に1回くらいの緩いペースで、興味を持った美術展に足を運んでいる。


せっかくなので、私が美術展を訪れた感想を、まとめてみようと思った。それが今回から始まる「美術展が好き」である。

私は美術の専門知識を何ひとつ持ち合わせていない。絵心もない。「美術展が好き」で書かれるのは、ただ絵を眺めるのが好きな素人が適当に呟く、感動の言葉である。



国立西洋美術館|自然と人のダイアローグ


先日、国立西洋美術館の企画展、「自然と人のダイアローグ ~フリードリヒ、モネ、ゴッホからリヒターまで~」へ行ってきた。

国立西洋美術館には、大学時代の苦い思い出がある。

イタリア文学研究の大家・和田忠彦教授の講義で、当時国立西洋美術館で開催されていた、「カラヴァッジョ展」の分析レポートが課題として出された。

私はそれまで、美術館という場所に足を運んだことがほとんどなかった。カラヴァッジョが誰だか分からないし、美術展のレポートの書き方も分からない。よく分からないままに、とりあえず作品を鑑賞し、レポートを書き、提出した。

返ってきたのは、ほぼ最低評価に近い結果であった。衝撃。私は美術館に行くべき人間ではないという事実を突きつけられた気がした。以来、何度か美術展のレポート課題を経験したが、憂鬱だった。


今思えば、その頃は美術展の「文脈を読む」ことを怠っていた。

芸術家が活動した当時の時代背景。技法や題材などの美術史。作品に込められた想い。ひとつひとつの絵画に物語があり、それらの物語が繋がって作用して、ひとつの美術展が完成する。

私は現在、この美術展の文脈を読むことが好きで、美術展に行くことが好きだ。


国立西洋美術館は、ル・コルビュジェの建築作品として、世界文化遺産に指定されている。およそ1年半の改修工事を経て、今年4月にリニューアルオープンした。

本企画展は、国立西洋美術館のリニューアル後の、第一弾。ドイツのフォルクヴァング美術館の協力のもと、「自然と人との対話(ダイアローグ)」をテーマに、近代の作品を集めたものである。


印象派、ロマン主義、キュビズム、フォトアートなどの近代の幅広い作品を、「I章 空を流れる時間」「II章 「彼方」への旅」といったテーマに沿って展示し、自然の捉え方の多様性や、自然と人との関係性などを問いかける。

麦を刈る人々の姿を見て〈死〉を連想したゴッホ。人の目を介して見る限り、自然は人工的であると説くリヒター。

「自然」という大きなテーマで一括りにしながらも、訴えかけてくるメッセージは、作品によって全く異なる。いずれも、自然と人の対話の形である。


個人的には、印象派の作品が豊富に展示されていて、非常に満足だった。

お気に入りは、モネの「舟遊び」。あえて船と女性を絵の中心からずらし、水面に映る木々の実物も枠内に収めない。そんな視点の切り取り方が、なんとなく不穏で、夢心地な雰囲気を醸し出していた。


私はいつも、美術展の記念にポストカードを買う。

初めは「ひとつの美術展につき1枚」というルールを課していたのだが、最近は全く守れていない。

いつもこれだけ買ってしまう。

非日常を、日常に持ち帰る。数ある作品の中からお気に入りのポストカードを選ぶのは、楽しいけれど、至難の業である。



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