今日も、読書。 ｜その人だけにとっての、個人的で、細やかな救い
2022.5.8-5.14
笹公人、北村みなみ｜パラレル百景
『パラレル百景』がすごく良かったので、紹介したい。
笹公人さんが短歌を、北村みなみさんがイラストを手掛け、唯一無二の世界観の、素敵な作品に仕上がっている。
笹さんの短歌は、現代的なテーマを下敷きに、SFのエッセンスが取り入れられている。堅苦しさは一切なく、とてもポップだ。それでいて、どこか心に染み入るような、甘酸っぱい切なさがある。
きっと、若い世代に響くような歌が多いのではないかと思う。瑞々しい恋心やワクワクするような夢物語。短歌にどうしてもつきまとう敷居の高い印象を、魔法のように取っ払ってくれる歌が詠まれていた。
そして北村さんのイラストが、笹さんの歌の世界を、これまたポップに表現する。イラストがあることによって、歌の世界が、心の奥深いところまで届く。
イラストはカラフルで可愛くて、「こんな光景を見ることができたらきっと面白いだろうな」という想像を掻き立ててくれるものばかりだ。脳内に映像として刻み込まれていく歌は、活字だけを見るよりも色彩豊かで、新鮮な体験だった。
こういう、短歌とか俳句とか、難しい印象を持たれている文化・芸能を、キャッチーに伝えてくれる本は、とても嬉しい。短歌をもっと身近に、親しみ深く感じられる。そして自分の興味の門戸が広がり、またひとつ読書の楽しみが増えていく。
凪良ゆう｜滅びの前のシャングリラ
凪良ゆうさんの『滅びの前のシャングリラ』を読む。
2020年の本屋大賞受賞作。小惑星が地球に衝突することが分かり、滅亡へのカウントダウンが始まった日本が舞台。いじめの標的にされていた青年や、やくざな人生を送ってきた半端者、スターに上り詰めた女性歌手らが主人公の、群像劇だ。
本作は『滅びの前のシャングリラ』というタイトル通り、地球滅亡という終焉を前にした、束の間の「救い」が主題になっている。
登場人物それぞれにとっての救いが、なんというか、理想的すぎず、ご都合主義を感じさせないところが良かった。あくまでその人だけにとっての、個人的で、細やかな救い。地球が終わるという絶望的な状況は変わらない。しかしそんな中でも、健気に咲く一輪の花のような、そんな小さな理想郷が、人々に訪れる。
例えば、ずっと嫌で嫌で仕方なかった仕事や、惰性で続けていた習い事も、いざ最後の時を迎えると、不思議と名残惜しさを感じる。最悪だったけど、こんなところは良かったかも……と、見落としていたプラスの一面が見えてくる。
人の一生が終わりを迎える時、きっと同じように、それまで気づけなかった人生の良いところが見えてくるのだろう。それは誰がなんと言おうと、当人にとっては紛れもなく救いであって、当人にしかわからない幸せである。私の人生は、果たしてどんな救いを見せてくるのだろう……などと考えたりした。
いなざうるす屋のフェイクグリーン
部屋に緑があると、心が華やかになる。
在宅勤務中心の生活で、デスク周りに癒しを求めるうちに、「そうだ、緑だ。緑が足りない」と思い至った。
しかし、本物の植物はお手入れが面倒だし、もしかしたら虫が住みついたりするかもしれない。私は根が面倒臭がり屋なので、そんなずぼら人間に育てられる植物の身になると、可哀相に思えてしまう。
そんな悩める社会人（？）におすすめなのが、「いなざうるす屋」というお店のフェイクグリーンだ。
フェイクグリーンとは、その名の通りニセモノの植物。本物の植物を模して作られた、インテリアグッズだ。
本物の植物のように定期的なお手入れは不要で、枯れる心配もなく、長期間飾り続けることができる。ずぼらな私には嬉しすぎるアイテムだ。発案者を拝みたくもなる。
しかし、注意しなければならない点がある。いかにも作り物っぽいフェイクグリーンを選んでしまうと、安っぽくて、見栄えが良くない。飾ることによって、むしろ心が沈んでしまうことになる。
いなざうるす屋が取り扱うフェイクグリーンたちは、本物そっくりに、精巧に作られたものばかりだ。近くで見ればさすがにフェイクだと分かるが、遠目で見れば全く気づかない。
実際、勤め先のオンライン会議などで部屋の背景にフェイクグリーンを飾っていると、「綺麗な花だね！」と言ってもらえたりする。実はフェイクグリーンなんです、と種明かしをするのが楽しい。
私は定期的にいなざうるす屋で植物を購入し、部屋の至る所に飾っている。部屋に緑があると心が安らぎ、花の彩りがあると気持ちが華やぐ。そしてたまの掃除以外、面倒なお手入れが不要となると、私の精神衛生上も大変よろしい。
皆さんもぜひ、お家にフェイクグリーンを取り入れてみてはいかがだろうか。
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