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#1 読書で世界一周 |カラマーゾフの兄弟 〜ロシア編〜

「読書で世界一周」とは、読んで字の如く、本を読むことを通じて、世界を一周しようという試みである。


最近は解消されつつあるものの、新型コロナウイルスが流行し、気軽に海外へ行くことができなくなった。元来インドア派の私にとって、海外は一層、手の届かない場所になってしまった。

そんな状況下、せめて本の世界の中で、海外を巡ってみたいという思いがあった。本の世界だからこそ、それができると考えた。

それが、「読書で世界一周」だ。


ルールは至ってシンプルだ。

国ごとに1冊、その国出身の作家の本や、その国にまつわる本を選び、それらを読み繋いでいく。本を読み終えたら、その国を訪れたことにして、印をつける。ただそれだけだ。要するに、普通の読書と変わらない。

現在、国連の加盟国数は日本を含めて196ヵ国。国の分類の定義によっては、多少の変動はあるかもしれない。作品が日本語に翻訳されていない国もあるかもしれないが、できる限り多くの国を回りたいと思う。


手始めに、世界地図を用意した。

今後、国ごとの作品を読み終えたら、この世界地図に印をつけていくことにする。パスポートに押してもらう入国スタンプのように、この地図を国を訪れた証にしよう。



ドストエフスキー|カラマーゾフの兄弟

1カ国目は、ロシア。ドストエフスキーの『カラマーゾフの兄弟』。

ロシアを選んだ理由は、手始めに世界地図を最も広く塗り潰せるからという、安直な理由だ。


既に過去の「今日も、読書。」で、『カラマーゾフの兄弟』の感想を書いた。繰り返しになるため、ここでは簡単に振り返る。

物欲の権化のような父親フョードル・カラマーゾフの血を、それぞれ相異なりながらも色濃く引いた三人の兄弟。放蕩無頼な情熱漢ドミートリイ、冷徹な知性人イワン、敬虔な修道者で物語の主人公であるアリョーシャ。そしてフョードルの私生児と噂されるスメルジャコフ—―これらの人物たちが交錯して描き出される愛憎の地獄絵図の中に、神と人間という根本問題を据え置いた世界文学屈指の名作。

上巻あらすじ



『カラマーゾフの兄弟』は、ドストエフスキーが晩年に書いた長編で、思想上・宗教上の問題を取り扱った、彼の集大成的な作品。世界文学史上の傑作とも言われる。まだまだ読書歴の浅い私には、少々高い壁である。

その長さやとっつきにくさから、最後まで読み切るのは骨が折れるが、多くの読書好きが生涯のうちに読み切っておきたいと願う、そんな小説だ。


読み終えてまず浮かんだ感想は、「長かった」だった。「長かった」以外、しばらく感想が浮かんでこなかった。それぐらい長く感じられた。私にはまだ、『カラマーゾフの兄弟』は早かったのかもしれない。

文学的教養に乏しい私には、『カラマーゾフの兄弟』の魅力を、つぶさに分析することはできない。多くの専門家がそうした分析を行ってきているし、ここでは私が感じたことを、正直に書くことにしよう。


とりあえず、登場人物が主人公のアリョーシャ以外、全員変人だった。それが私のカラマーゾフの兄弟評である。

これは『罪と罰』を読んだ時にも感じたことだが、ドストエフスキーの小説は私にとって、ユーモアに富んだ茶番劇のように感じられた。登場人物たちの言動がいちいち大げさで、どこか現実味が無いのだ。

とにかくみんな、情緒が不安定だ。突然怒り出すし、突然泣き出す。何分間も黙り続けたかと思えば、堰を切ったように数ページにもわたる長尺の台詞を喋る。

言動がものすごく極端で、まるで観客に見せることを前提とした舞台演劇を見ている気分だった。


『カラマーゾフの兄弟』を読み、ロシア文学全般を理解したとは、とても言えないだろう。

しかしながら、「神は存在するか」というキリスト教の議論や、「カラマーゾフ的」「ロシア的」な人の魂についてなど、日本の作品ではなかなか感じられない要素もあった。

アリョーシャとイワンが神の存在について議論するシーンは、難しかったけれど緊張感があったし、ドミートリイの裁判のシーンはミステリ的な興奮を感じつつ読んだ。長かったが、終盤は読むペースがぐんぐん早くなっていった。


1カ国目のロシア。総面積1700万㎢。無事、踏破。

「読書で世界一周」、2カ国目は、ウクライナを訪れる。アンドレイ・クルコフさんの『ペンギンの憂鬱』という小説を取り上げる。


読書で世界を回る旅は、まだまだ始まったばかりだ。これから、どんな景色が見えてくるだろうか。

私がこれから訪れる先で、おすすめの作品があれば、ぜひ教えてほしい。きっと全ての国を訪れる予定なので、どんな国の作品でも構わない。よろしくお願いします。



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