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イタリア旅。 |夕景の離島を巡る 〜ヴェネツィア旅 後編〜

先日の”イタリア旅”では、ヴェネツィア旅の前編と題して、ヴェネツィア・カーニバルを観たことについて書いた。

今回はヴェネツィア旅の後編として、ムラーノ島ブラーノ島という、なんともよく似た名前の離島を巡ったことを書く。

ヴェネツィアを訪れる際は、ぜひ本島だけではなく、水上バスに乗って離島にも訪れてほしい。離島ごとにそれぞれ個性があるので、きっと旅の幅が広がるはずだ。



ヴェネツィアを旅する。


ヴェネツィアの起源

海上に築かれた「水の都」として、世界中の人々を魅了するヴェネツィア。

その街並みは非常に美しく幻想的だが、一方で生活するには何かと不便だったりもする。一体どのようにして、このような「水の都」が出来上がったのだろうか。


ヴェネツィアの起源は、5〜6世紀まで遡る。本土で暮らしていた人々が、ラグーナと呼ばれる潟に土台となる丸太を打ち込み、その上に石を積んで街を築いたのが始まりとされている。

中世には地中海貿易の中心地として繁栄し、優秀な商人や技術者が集まって、産業や芸術が発展した。ヴェネツィア共和国は、コムーネと呼ばれる小国が林立していたイタリアの歴史において、1000年以上独立を保ったという点でも注目に値する。

天然のラグーナに沿って都市を築いたことから、ヴェネツィアでは、街中に小さな水路が張り巡らされている。カナル・グランデを中心とした自然の水路を掘り下げ、運河として人々の移動や物流に活用してきたのも、この街の特徴だ。

現在では、ゴンドラに乗って運河を遊覧するツアーが観光客に人気であり、ヴェネツィアを象徴する風景のひとつになっている。


そんな「アドリア海の女王」とも称される美しきヴェネツィアだが、近年の地球温暖化に伴う海面上昇や地盤沈下などの影響により、常に水没の危機に晒されている。

「アックア・アルタ」と呼ばれる大洪水の様子を友人に見せてもらったことがある。サン・マルコ広場が一面海水に浸かり、人々は急遽設置された狭い仮設通路の上を歩き生活していた。

世界的にも類を見ないヴェネツィアの街並みを後世に残していくためにも、水害対策は非常に重要である。常に水と共にある都市だからこそ、水とうまく共生していくための道を模索しなければならない。



ガラス細工の島

さて、ヴェネツィア旅に戻ろう。

昼食を済ませた後、帰りの鉄道までまだ時間があったため、2年前の旅行では訪れなかった離島を巡ることにした。

地図を見ていただくとわかるが、ヴェネツィア周辺には100以上の島々が存在する。今回はヴェネツィア在住の友人のおすすめで、ムラーノ島とブラーノ島の2箇所を回った。


名前がよく似ていて紛らわしい両島。いずれもヴェネツィア本島から見て北東部に浮かぶ離島だ。「ヴァポレット」と呼ばれる水上バスを利用して行くことになる。

ヴァポレットは、1回の乗船券が7.5€、1日乗船券が20€(2019年時点)。ムラート島・ブラーノ島の両方を回る場合は最低でも3回乗船することになるため、1日乗船券を買った方がお得だ。


ムラーノ島。


まず上陸したのはムラーノ島。ここは、美しいガラス細工で有名な場所だ。

ヴェネツィアのガラス細工は、かつてのヴェネツィア共和国の繁栄を支えた重要な産業のひとつ。ムラーノ島では、その優れた技術が現在に至るまで守り伝えられている。

島内はそれほど広くないが、ガラス工房や博物館など、見所はたくさん。ガラス細工を取り扱うお店が無数に並んでいるので、お土産を購入するのもおすすめだ。

猫と金魚のガラス細工を購入しました。



ガラスでできたツリーを発見。



カラフルな家々の島

日が暮れてきたため、急いで次のブラーノ島に上陸。ここは、カラフルな家々が立ち並ぶ綺麗な風景で有名だ。


ブラーノ島。


水上バス乗り場から写真映えスポットへと向かう道中、夕暮れに染まりゆくぶどう畑で撮影した1枚。

「早くしないと日が落ちちゃう……!」と焦りながらも、目の前の風景の美しさに、思わず足が止まった。

主要な観光スポットからやや外れた場所にあるここは、私たち以外誰もおらず、ひたすら静かな時間が流れていた。

今回のヴェネツィア旅で最も印象に残っている瞬間はどこかと問われたら、私はこのぶどう畑での数分間を選ぶかもしれない。

旅を印象付けるのは、このような偶然の出来事、意図せず遭遇した景色だったりする。私にとってヴェネツィアの思い出の風景は、今のところこのぶどう畑だ。


そして、ブラーノ島の中心部に到着。本当に家がカラフル!

隣り合う家の色が必ず違うカラーリングで塗られていて、とても面白い。

イタリアは歴史的景観を保存する目的から、街の色彩が古き良き暖色で統一されていることが多いため、ブラーノ島の街並みはとりわけ異彩を放っていた。

ブラーノ島周辺は霧が出やすく、海に出た漁師が帰ってきたときに自分の家をすぐに見分けられるよう、住居をペイントしたのが始まりなのだとか。なるほどなあ……。


また、ブラーノ島はレース編みが盛んな島としても有名で、島内にはユニークなレースのお土産がたくさん売られていた。このように、島ごとに違った産業が発達しているところも、ヴェネツィアの特徴だと思う。


とうとう海の向こうに日が沈み、楽しかったヴェネツィア旅にも終わりが近付く。夕景のブラーノ島を、海岸線に沿ってゆっくり歩いた。

今回ヴェネツィアを旅して思ったことは、離島も含めヴェネツィアを最大限に満喫するのであれば、1日では時間が足りないということだ。

イタリアの主要都市を訪れる観光ツアーだと、ヴェネツィアに割り当てられる時間は1日だけであることが多い。個人的には、2〜3日くらい時間を確保して、ゆっくりとヴェネツィアを歩いてみてほしいと思う。


ヴェネツィアを歩いていて楽しいのは、「なんだここ?」というような変わった路地に、ばったり出くわす瞬間である。そこには、地元の人しか行かないような小さなお店や、隠された教会の入り口なんかがあったりする。

ヴェネツィアの路地裏には、何か不思議なことが起こるのではないかという、独特の雰囲気が宿っている気がする。もしかしたら、アルト・マーレを彷徨う謎の少女にも出会えるかもしれない——。



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