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本が好き、その想いだけで書く文章たち。
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#読書日記

爆ぜる文学性。”エモい本”を読んで、感情を揺さぶろう

皆さん、感情、揺さぶってますか? 平日は仕事に行って帰るだけ、休日はずっと寝ているだけ、そんな単調な日々をお過ごしの方も、もしかするといらっしゃるのではないでしょうか。 そんな感情の起伏の少ない日々に、一筋の光を差し込んでくれるのが、”エモい本”。 感情を揺さぶるようなエモい本を読むことで、忘れかけていたあの頃の気持ちが蘇る——今回はそんなnoteです。 ”エモい本”とは? 最近よく使われるようになった「エモい」という言葉。 実はこちら、『三省堂国語辞典』に収録さ

人に本を勧めるのは、実は結構難しい。

「趣味は読書です」と公言していると、よくこんな質問を受ける。 実際にこの質問を受けたことがある人はお分かりかもしれない。 これ、こんな軽いノリで聞いていい簡単な質問とちゃうで。 おすすめしたい本はたくさんあるけれど、いや、おすすめしたい本がたくさんあるからこそ、この質問に即座に答えるのは、実は結構難しかったりする。 人に本を勧めることは、ひとつのスキルだと思う。 ただ自分が好きな本を勧めても、なぜか相手の心に響かず、会話が盛り上がらない……なんてことがよく起こる。聞

読書は、”知の冒険”。 〜孫泰蔵『冒険の書』を読む

『冒険の書』と聞くと、「ドラゴンクエスト」というRPGゲームを思い浮かべてしまうのは、ゲーム好きの幼少期を過ごした者の習性である。 幼い頃の私にとって、「ドラゴンクエスト8」は、間違いなく革命だった。同世代の方は、きっと頷かれていると思う。 ドラクエ8は、それまでのナンバリング作品に比べ、「冒険している感」が段違いだった。3次元的にどこまでも広がる、大地、海原、そして青空。 今でこそ、「ゼルダの伝説 ブレスオブザワイルド」に代表されるオープンワールドゲームは一般的になっ

【雑記】本には、読むタイミングがある。

読書が好きになったのは、大学1年生のとき。 通学に電車で往復4時間もかかり、暇すぎて何かやることがないかと探した結果、本を持ち歩くようになった。 私は本を読むスピードが比較的早く、300ページほどの小説であれば、往復4時間のうちに読み終えられてしまう。 そんなわけで、当時はほぼ1日1冊くらいのペースで本を読んでいた。次々と面白い本に出会い、あれよあれよと読書の世界にハマっていった。 それでも時に、「自分には合わないかも?」と思う本と出会うことがあった。 そういう本に

声に出して笑える本

笑うことは、幸せなことだ。 笑顔でいることは、それだけで日々を豊かにしてくれる。 そして、声に出して笑うことは、とても気持ちがいい。些細なストレスなど、どこかに吹き飛んでしまう。 皆さんは、「笑える本」と聞いて、どんな作品を思い浮かべるだろうか。 「笑える本」と銘打って販売されている本は、世の中に数多くある。 しかし、本当に「声に出して」笑えるような本は、実はごくわずかだと思う。 心の中で笑ったり、少しにやけたりすることはあるけれど、思わず笑い声が漏れてしまったと

読書でイタリア探訪 〜後編〜

読書でイタリアを旅する。 そんなテーマで選書した作品たちを、前後編に分けてご紹介する。 ↓前編はこちらから 井上ひさし|ボローニャ紀行 少しマニアックかもしれないが、井上ひさしさんの『ボローニャ紀行』も、紹介せずにはいられない作品だ。 ボローニャは、私が大学時代に留学していた街で、思い出深い土地なのだ。 ボローニャに留学する際、事前にボローニャについて知っておきたいと思い、手に取った作品が『ボローニャ紀行』だった。 その後、私がイタリア渡航時に持っていった唯一の

読書でイタリア探訪 〜前編〜

私にとってイタリアという国は、大学で歴史や文化について学んだ国であり、留学生として10ヶ月ほど暮らした国であり、日本に次いで馴染みのある国だ。 そのため、イタリアに関する本を手に取ることが多い。書店で「イタリア」の文字を見かけると、目が吸い寄せられてしまう。 読書でイタリアを旅する。 そんなテーマで選書した作品たちを、前後編に分けてご紹介したい。 内田洋子さんのエッセイ 内田洋子さんのエッセイは、「今日も、読書。」でこれまで何度もご紹介してきた。どの作品も、本当に良

ちりつも読書

「塵も積もれば山となる」という諺がある。 わずかな物も、積もり重なれば高大なものとなることのたとえだ。 私は普段、「ちりつも読書」をしている。 「塵も積もれば山となる」を略して「ちりつも」である。 夜寝る前の10分間、1日数ページずつ本を読む。1回の読書量は少ないけれど、塵も積もれば山となる方式で、毎日続けるうちに頭に入ってくる。 ちりつも読書は、忙しくて本を読む時間が取れない人におすすめの読書方法だ。1日1ページだけ読めば良いので、隙間時間を活用して続けられる。

「読みたいのに読みたくない」あの現象について

読みたいのに、読みたくない。 この矛盾した感情を、抱いたことがある方はいらっしゃらないだろうか。 私は2021年から2022年にかけて、小野不由美さんの「十二国記シリーズ」にハマっていた。 これまで読んだことのないタイプのファンタジーに衝撃を受け、独自の世界観にズブズブとハマった。最新刊の『白銀の墟 玄の月』まで、感動と興奮の連続だった。 とにかく面白かった。面白かったのだが、その一方で、「読みたいのに読みたくない」というあの現象に、常に付き纏われてもいた。 「十二

あの感動を、もう一度。【異国が舞台の長編小説】

読書をしていると、「全く同じとは言わないまでも、この小説と似た作品が読みたい……!」と思うことがよくある。 自分好みの良作を読み終えた時、感動や満足感に浸るのと同時に、初読時の新鮮な感動はもう二度と味わえないのだという、一抹の寂しさを感じるのは、私だけだろうか。 記憶を消して、もう一度読みたい。 読書をしていて、何度そう願ったことだろう。しかし残念ながら、その願いは叶わない。記憶を消すことは、今の科学技術では実現できない。 それならせめて、「似ている作品」が読みたい。

ブックホテル「箱根本箱」宿泊レポ

ブックホテル。 本好きなら、一度は泊まることを夢見る理想郷。 本に囲まれた非日常の空間で、時間を忘れて読書に没頭する。そしてそのまま眠る。読書に疲れたら、自然豊かな山道を散歩したり、温泉に浸かったりしてもいい。ブックホテルには、本好きの夢の暮らしがある。 8月末の夏休み、私は、「箱根本箱」に宿泊した。 箱根本箱とは、本好きの間では有名なブックホテルである。2018年8月に開業。箱根・強羅の山中にあり、1万冊以上の本が館内至る所に配置されている。箱根の自然と本の魅力が融

私の人生を変えた一冊

今でこそ、息をするように読書をする私だが、生まれた時からそうだったわけではない。 実は幼少期、私はそれほど読書が好きではなかった。好きではなかったというより、特段興味を抱かなかった。ゲームやテレビ番組、漫画本など、読書よりも魅力的に思える娯楽があまりに多かった。 私が本格的に本を読み出したのは、大学生になってからだ。「趣味は読書です」と言えるくらいに本を読むようになったのは、この頃だ。 大学1年生で読書の世界に足を踏み入れて以来、私は常に積読を数十冊以上抱える債務者とな

【ジュンク堂池袋本店】1万円分本を買ってみた

8月某日。夏休み期間中のある日のこと。私は池袋のジュンク堂本店に足を踏み入れた。 私の心中は、溢れんばかりの感情で渦巻いていた。並々ならぬ覚悟があった。 何せ私は、これからこの場所で、1万円分本を買うのだから。 これは夢の行事である。 夏休みということで、普段はなかなかできないことがしたいと思い、それなら新刊書店で思いきり本を買おうと考えた。 1万円という予算を(一応)設け、日頃の鬱憤を晴らすように、脇目も振らず本を買った。以前から気になっていた本はもちろん、書店を

【2022年版】新潮文庫の100冊について語る

本好きの夏の風物詩。私にとって夏の訪れは、「夏の文庫フェア」によって告げられる。 「今日も、読書。」を読んでくださる本好きの皆さんには、夏の文庫フェアについて、説明は不要だろう。いつもの書店が夏一色に染まる、あの「お祭り」のことである。 角川文庫の「カドブン」、新潮文庫の「新潮文庫の100冊」、そして集英社文庫の「ナツイチ」。書店に夏の文庫フェアの特設コーナーが並ぶと、心が浮き立ち、今年も夏が来たかと感慨に浸りつつ、冊子を持ち帰るまでが一連の流れである。 カドブン=緑、