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「読みたいのに読みたくない」あの現象について
読みたいのに、読みたくない。
この矛盾した感情を、抱いたことがある方はいらっしゃらないだろうか。
私は2021年から2022年にかけて、小野不由美さんの「十二国記シリーズ」にハマっていた。
<十二国記シリーズ>
我々の棲む世界と、地図上にない異世界〈十二国〉とを舞台に繰り広げられる、壮大なファンタジー。
二つの世界は、「蝕」と呼ばれる現象によってのみ、行き来することができる。〈十二国〉では、天意を受けた霊獣である麒麟が王を見出し、「誓約」を交わして玉座に据える。選ばれし王が国を治め、麒麟がそれを輔佐する。しかし、〈道〉を誤れば、その命は失われる。気候、慣習、政治体制などが異なるそれぞれの国を舞台に、懸命に生きる市井の民、政変に翻弄される王、理想に燃える官史などが、丹念に綴られている壮大な物語である。
これまで読んだことのないタイプのファンタジーに衝撃を受け、独自の世界観にズブズブとハマった。最新刊の『白銀の墟 玄の月』まで、感動と興奮の連続だった。
とにかく面白かった。面白かったのだが、その一方で、「読みたいのに読みたくない」というあの現象に、常に付き纏われてもいた。
「十二国記シリーズ」の本は、読んだら面白いことは分かっているのに、なかなか読み始めることができなかった。時には、次作を読むまで3ヶ月以上期間が空くこともあった。
理由は自分でもよくわからない。読み始めたら、間違いなく夢中になる面白さなのだ。でも、読み始めるのに勇気というか、覚悟が要る感じがする。そんな不思議な現象が、いつもそばにあった。
思い返せば、こういうことはこれまでもあった。
綾辻行人さんの「館シリーズ」にハマっていた大学1年生の時、総原稿数2,500枚という超大作『暗黒館の殺人』で、まさに同じ現象が起こった。
読んだら面白いのはわかりきっているし、なんなら先が気になって仕方がない。でもなぜが読み始められない。『暗黒館の殺人』は、これまで私が、読み終えるまでに最も時間がかかった作品のひとつである。
読みたいのに、読みたくない。誰か、この現象に名前をつけてくれないだろうか。
自分は、シリーズ作品を読んでいるときに、この現象と出会うことが多いようだ。シリーズが終わってしまう寂しさを回避するために、無意識に読むのを躊躇ってしまうせいかもしれない。違う気もする。よくわからない。
ひとつだけ言えるのは、この「読みたいのに読みたくない」現象が起こった作品は、後々まで深く印象に残るようなものが多いということだ。
だから、「読みたくない」とは言いつつも、決してマイナスなことではないのだと思う。私は面白い作品に出会ったことを検知するひとつの指標として、この現象を捉えている。
長く付き合った分だけ、ある種の相棒のような感覚が芽生え、深く印象に残るのかもしれない。大事に大事に、時間をかけて温めながら読み進める読書は、人と友情を育む過程にも似ている。
読みたいのに、読みたくない。
皆さんもこの現象に出会ったときは、これからその本と長い関係性を築いていくのだと思って、楽しみに待ってみるといいかもしれない。
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