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書籍紹介『発達障害かも? という人のための「生きづらさ」解消ライフハック』

『発達障害かも? という人のための「生きづらさ」解消ライフハック(姫野 桂)』という本の紹介です。

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(画像はDiscoverより)

2019年3月31日に開催されたイベント「生きづらい けど生きのびたい!『発達ハック』コンテスト」にて、事前にTwitterで募集された、発達障害当事者や傾向がある方が「苦手なことをどうやって工夫して乗り越えているのか」というアイデアをコンテスト形式で紹介されました。

ハックとは工夫のことで、「発達ハック」 =「苦手なことを工夫で乗り越えること」です。

この本はそのときのハック+新たに当事者の方から募集したハックが掲載されています。みんなでつくったハックの本なのです。

世の中には発達障がいの特性について紹介された本は沢山ありますが、具体的にそれらと付き合いながら生きていくための工夫についての本は少ないように思います。

そして世の中、特に学校や働く場ではまだまだそういった特性を甘えととらえられ、「もっと頑張らないと、努力しないと、我慢しないと」なんて言葉をかけられることがあるでしょう。

冒頭の漫画にあるように、この本は「苦手なことはあってもいいんだよ。むしろあって当たり前なんだよ」と伝えてくれます。

発達障害当事者や発達障害傾向を疑っている方の中には、果たして自分が何が苦手なのかをまだわかっていない方もいるかもしれません。「なぜか仕事ができない」「なぜか人間関係がうまくいかない」「なぜかいつも疲れている」
まずは、その「なぜ」の原因をひも解くことからはじめましょう。「はじめに」でもお話ししたように、発達障害の特性や濃度は 100人いれば 100とおりです。

そうして自分の苦手を分析して、把握して、自分が苦手なことを見つけて受け入れるところからスタートです。そんな風に分析できると、自分に合った方法が別にあるのかも?と感じるかもしれません(感じ方や学び方は違うのに、世間では漢字はドリルで書いて、九九は口ずさんで覚えるのが常識になっていますよね。それって考えてみれば不思議な話です)。

「できないことがある =ダメ人間」ではありません。誰だって得手不得手があります。多くの人と同じやり方でできなければ、違うやり方でやってみて、うまくいけばその方法を取り入れればいいのです。

そんな方はぜひこの本に掲載されているライフハックハックを試してみてください。生きていくことが楽になるかもしれません。

もちろん全員に合うハックはないので、自分に合う合わないを実際に試して確かめてみましょう。

この本は、いくつかのジャンルに分けてハックを紹介しています。目次を引用します。

はじめに
第1章 「苦手」を見つけて受け入れよう
第2章 「仕事」をやりやすくするハック
第3章 「日常生活」の「困った!」を減らすハック
第4章 「人間関係」をラクにするハック
第5章 「自分の体調」とうまくつき合うハック
巻末スペシャル対談 年齢を重ねて振り返る「生きづらさ」とハック
おわりに
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(画像はDiscoverより)

ハックの中身は多種多様です。

「持ち物チェックリストを玄関に貼っておく」「仕事依頼などの確認は必ずメールなどの文章にして相手に送る」「音や光の刺激をノイズキャンセリングイヤフォンやサングラスで避ける」「忘れ物防止タグTileをつける」「モノの置き場所を固定する」

などのよくありそうな内容から、

「片付けられないときは空き箱に入れる」「人と会う用事などがないときは潔くお風呂に入らない」「関係のよくない人とは距離を置く」「ガールズトークは会話の定型文を覚える」「がんばれない日を把握しておく」

などのように大きな声で言うと叱る人がやってきそうな内容まであります。

でも家庭や学校で細かく注意され、叱られたことが、社会に出てから意外とそうでもなかったということはよくあります。そしてそんな状況に臨機応変に合わせるのが苦手な方はたくさんいます。

考えてみれば、叱られるのもおかしな話で、僕たちは当たり前や常識といったもの(そしてそれは多数派の健常者と呼ばれる人たちがつくってきたものです)に囚われすぎてるのかもしれないなと、この本を読んでいて改めて思いました。

なんてこの本についての記事を書いていて、その通りというツイートを発見しました。

個人的に一番のツボは、「複数人での会話(特に女子集団)での会話が苦手」という内容に対するハックです。

 雑談、特にガールズトークは、話に特別なオチがあるわけではないので、パターン化した定型文を返すようにします。
 たとえば、かわいいアクセサリーをつけている人が話題になっていたら、「かわいい ~。どこで買ったの?」など。
音ゲーのように、リズムよく回すのがコツです。

お堅い人たちからは「会話をゲームに例えるなんて不謹慎だ!」と叱られるのかもしれませんが音ゲーの例えに思わず笑ってしまいました。確かに雑談を真剣に聞きすぎて疲れてしまっては元も子もないですしね。

そんなある意味斬新なものも含めた生きやすくなるハックがたくさん掲載されたこの本。当事者の方が今までの生きづらさやハックを語る本は何冊か読みましたが、その中でも、この本が特にわかりやすく読みやすいと感じました。

「ちゃんとさせないと」なんてつい思ってしまう周りの方も読んでみれば、凝り固まった考えが変わるかもしれません(なんてあんまり大きな声では言えないですが)笑。

気になった方はぜひ読んでみてください。いろんなモノの見方が変わるかもしれませんよ。

そして、この本にあるように、#発達障害ライフハックや#ADHDライフハック、#ASDライフハックで検索するといろんな方のライフハックが見つかりますよー。

追記

そんなライフハックですが、あくまで生きやすくするための手段であって目的ではありません。

こちらもライフハックを紹介する『発達障害サバイバルガイド(借金玉)』という本に書いてあった内容がとても印象的でしたので引用します。

 僕のライフハックのテーマは「自分を変える」のではなく、「やり方を変える」「環境を変える」「道具を変える」など、パーソナリティーの外部にあるものを工夫することで変化を起こすことをモットーにしています。本書も、その考えを貫いて書かせていただきました。

 あなたが工夫をするのは素晴らしいことですが、工夫があなたになってしまうのは恐ろしいことです。それは手段と目的が入れ替わってしまっています。僕の文章は、あなたが幸せに生きてほしいという気持ちで書かれています。幸せがあなたを生きるなんて冗談じゃありません。あなたがあなたである、ということには最大の価値を置くべきだと僕は心から思っています。

本当にありふれた安い言葉ですが、それでもあなたはあなたのままでいいと僕は思います。あなたが変わるべきだと、僕は決して思いません。
 あなたのやり方やあなたの道具、あなたの環境を変えるべきなのです。人生がうまくいかないとどうしても発生してくる自罰的感情、「自分が悪いのだ、自分が根本的に変わらなければならないのだ」というあれは、あなたを救いません。
 あなたが幸せになってほしいと僕は心から思っています。そして僕も、幸せになりたいです。みんなで幸せになりましょう。そして人生を、生活を、やっていきましょう。

ハックはあくまでもハック、自分に合うものだけを使えばいいということを忘れないように。



表紙の画像はAmazon.co.jpより引用しました。