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【女子アナ】辞めましょ。


146カ国中116位。日本のジェンダーギャップ指数の順位は相変わらず、先進国で最低レベルだという。背中がむずがゆくなるような居心地の悪さを覚える。

おこがましいかもしれないが、私たち【女子アナ】が日本の女性像に影響を与え、他の職業の女性にも迷惑をかけてきたのではないか。


【女子アナ】
私たちの通称だ。「女性弁護士」や「女性警察官」など、女性を強調した呼び方にさえ異議が唱えられつつある現代で、未だに「女子」とくくられる私たちの職業は不気味。


「器量・若さ・清潔感・素直さ・笑顔…男が女に求めるものが【女子アナ】なんだよ!」


昔、飲み会の席でおじさんに唾を飛ばされながら力説されたことがある。今思うと寒気がするが、当時新人だった私は華やかな世界で活躍したいという思いから、その理想像を目指すものと鵜呑みにしてしまった。


が、次第に違和感を感じていく。
特に「災害報道」という人の命に直結する仕事を学ぶ中で。

日頃からの勉強・研修・訓練はもちろん、実際に被害現場に出向いてリポートをしたり、ご遺族からお話を聞かせて頂く中で、これは、生半可な気持ちで出来る仕事ではないと気づいていく。


そして、確信に変わったのは、宮城の女川にある小学校で受けた災害研修だ。津波で家族全員を失った女性が、大切なお話をしてくださった時のこと。
「目の前で我が子が波に飲み込まれていった。最後まで、目が合っていた。自分が代わりになれたらよかったのにね」
【女子アナ】を目指していた当時の私は、彼女の顔を直視することが出来なかった。うつむいたまま、己への怒りに拳を握りしめた。
この時、私は【女子アナ】を辞めた。

それから数年が経ち、時代も変わった。今私の知る限り、自らを【女子アナ】と呼ぶアナウンサーは、もういない。私たちは【女子アナ】から脱皮している。ただ、この呼び名だけはなかなかなくならない。数十年間【若い女の価値】を自認し、味をしめ、電波に乗せ続けてきたのだから、仕方のないことかもしれない。


私たちは、そろそろ声を上げてもいい。
もう【女子アナ】は辞めました、と。  
行動でも示す。報道に従事せよ、とか、身なりに構うな、とかそういうことではない。
どんな仕事も「アナウンサー」として向き合うこと。プライドを持って。それだけ。
(接待みたいな地獄の飲み会、もういかなくていいよね!)

長い道のりかもしれないが、そろそろ歩き出す時が来た。私たちの明るい贖罪の旅。

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