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新自由主義的教育政策の概観④

④大阪維新

 大阪維新の会による新自由主義的教育政策は全国的にも注目を集めています。特に、先程の「全国学力学習状況調査」の結果を市町村単位で公表しようとしたときには各方面から猛反発が起こりました(公表はせず)。
 大阪維新の会の教育政策の特徴は「競争原理」の導入と「目標設定」などがありますが、一番の特徴は「教育政策への積極介入」です。一つずつ見ていきましょう。

 まずは、競争原理の導入です。これについては教育学博士の中島哲彦が以下のように述べています。

 大阪府・市では、明示的な目標管理体制の導入とともに、全国学力テストでの劣位の強調、高校の校区制廃止による進学競争の強化、低中所得世帯を対象とする私立高校授業料無償化、生活保護世帯の中学生に対する塾代バウチャーなど、教育制度の競争主義的再編とともに、府民の排他的競争意識を強化する施策が展開されている。

『大阪府・市における新自由主義的・権威主義的教育政策』 中島哲彦

 ⑤の事例でも紹介しますが、教育に競争原理を持ち込むことを歓迎する市民がいることは確かでしょう。

 現在の日本の高校の制度では、「どこの高校に入学できるのか」がそのまま「大学受験の結果」に結びつきやすい現状があります。自分の子どもをより偏差値の高い高校へ入学させたいと考えている保護者からすれば「校区」というのは邪魔でしかありません。高校進学への選択肢は多いほうが良いという考えなら私立高校の無償化は大歓迎でしょう。公立と私立の高校による競争はより激しくなりますが、そのような環境の中から「より洗練された教育サービス」を選べるというのは資本主義社会の考え方そのままです。なお、三年連続定員割れをした場合、その府立高校は統廃合の対象となるというのも競争原理に基づいたものです。整合性はバッチリです。そうやって競争と劣位の排除を繰り返してサービスの質を高めていくことがまさに新自由主義的教育改革なのです。

 競争原理の導入は小中学校現場でも進んでいます。

 学校教育への市場原理の導入を象徴する出来事が、小中学校の学校選択制と全国学力・学習状況調査の学校別平均正答率の公開である。学校選択は、公募で選ばれた区長の判断で、二〇一四年度から二四区中一一区で、二〇一五年度からは浪速区を除く二三区で実施されている。各校の全国学力調査の平均正答率は、一部の例外を除き、二〇一四年度から学校管理規則で公開が義務付けられている。

『新自由主義的教育改革のインパクト』高田一宏 日本教育学会第七四回大会

 大阪市で新しいマンションが建設されたときにパンフレットが入っていたそうです。そのパンフレットには「〇〇年の全国学テで全国平均を超えている□□小学校校区」と書かれていたそうです。子育て世帯がどこで子育てをするかというのは大きな問題です。小中学校には「校区」があるので、住んだ場所で学校が決まります。