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産業人はもはや太陽エネルギーから作られたジャガイモを食べない。彼が食べるのは、一部が石油でできたジャガイモだ。2020/05/01

『攻殻機動隊』ARISEと新劇場版とかをみて、ドキュメンタリー系をいつか見ようとマイリストに追加しまくり、『涼宮ハルヒの憂鬱』を見かけたところで、そういえば漫画をちらっと読んだ気がするけどちゃんと見たことないんだよなと思って再生し始めたら思っていたよりもSFで、そうかそうか、こういうやつか、と妙に納得感があった。女性キャラクターの眉毛の細さと目そのもののデカさに時代を感じたのだけど、同時にそういうディテールに時代を感じとったりするんだなということを面白く感じたりもした。けど、こいつはいくら時間があってもキリがないぞという感じでNetflixな日だったのだけど、それより何よりついに妻と一緒に話題の『愛の不時着』を見始めてしまった。


富豪の娘がパラグライダーで飛んでたら竜巻に巻き込まれて不時着した先が北朝鮮という設定だけでご飯3杯食べられそうだけど、3杯食べたらお腹いっぱいな気もしていて、2話みて休憩。先は長い。もっとテンポよく波乱万丈するかと思っていたら割とじっくり丁寧にキャラの設定を描いている感じ。作中北朝鮮での生活が描かれるのだけど、アナログで電気を前提としない暮らしや食生活に関して「オーガニックね」と言い放つセリフが何重にもジョークが効いていてよかった。

エネルギーを光や熱に変えるテクノロジーの進歩が文化や経済の進歩に貢献してきたという歴史を読んでいる途中だったので、韓国と北朝鮮の生活の違いもまた、エネルギーの効率的な変換の差として捉えることもできるんだろうなぁ、などと思ったり。と言うわけで読みさしだったバーツラフ・シュミル『エネルギーの人類史 下』を読み、読み終わった。しかし『愛の不時着』と『エネルギーの人類史』が共鳴するなんて想像つかなかったな。

地球の収容力は耕作中の土地の面積に比例し、太陽エネルギーの使用によって高効率を達成することができた、と。残念ながらこれは嘘だ。なぜなら、産業人はもはや太陽エネルギーから作られたジャガイモを食べないからだ。彼が食べるのは、一部が石油でできたジャガイモだ。
バーツラフ・シュミル『エネルギーの人類史 下』 P.149 - P.151

農業もまた化石燃料や電気の活用によって進化を遂げており、生産物と言うアウトプットがエネルギーが変化したものと想定するとこう言う見え方になるんだなぁ、と。まぁあまり考えないよね、自分が食べるものが石油だなんて。肉を食べようが野菜を食べようが、我々は石油を食べている。紙もまたそれが生み出されるまでに使われたエネルギーから考えると、一定割合が石油なんだろうから、本を読むときも石油を読んでいるということか。だとすると生活に占める石油の割合の凄さに目が眩むが、それだけ欠かすことのできない、エッセンシャルな存在になっている石油の取引では産油国よりも国の方が儲けていると言う事実も驚きだった。

(なぜかこの事実は注目されていないが、)西欧の政府は石油から OPECよりも多くの利益を上げているのだ。たとえば二〇一四年の石油1リットル当たりの代金は、その四十七パーセントがG7諸国への税金で占められ、産油国の利益はおよそ三十九パーセントにすぎない。
バーツラフ・シュミル『エネルギーの人類史 下』P.203

新たなエネルギー源の発見と、効率的なエネルギーの変換が進歩の礎という基本的な現実があるのに、必ずしも人は合理的なエネルギーの使い方をしない、というのもまた面白い。

 多くの人が都市でも自動車を運転したがるのは、自動車を使う方が早いと思われているからだが、これはエネルギーの不合理な使い方の完璧な一例である。自動車を購入する(あるいはリースする)費用、その後の燃費、維持費、保険代を稼ぐのに必要となる時間を計算に入れると、アメリカの自動車の平均速度は、一九七〇年代初頭で時速八キロメートル未満となり混雑度合の増した二〇〇〇年代初頭では、高く見積もっても時速五キロメートルで、一九〇〇年以前に乗合馬車が出していた速度とほとんど変わらず、さらに言えば徒歩とだって変わらない。しかも、「油井から車輪まで」の効率が一〇パーセントをゆうに下回ることを考えれば、自動車はいまだに代表的な環境汚染源だ。
バーツラフ・シュミル『エネルギーの人類史 下』P.312

便利になったと思っていたけれど、移動に関するエネルギー変換効率の悪さがここまでとは思わなんだ。馬車の時代と変わらないってすごいな。都市の自動車は徒歩と同じ時速、そう思うとまぁのんびり歩けばいいやという気持ちになってくる。散歩しよう。

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