通行人は知らん顔して通り過ぎる。だれもおまえを助け起こさない。これが自由というものなんだ。自由ってのは辛いものなんだ。とても辛いものなんだ。 2020/09/28

 CDの売り上げをレコードが抜き去り、Spotify全盛の世の中でひたすらまとめ買いしたCDをPCに読み込み続けること数ヶ月、ようやくひと段落した。自分ライブラリの充実。

 先日帰省した時に本棚の奥から見つけたミシェル・トゥルニエ『黄金のしずく』を読んだ。20年以上前に買って、その時読んだのかも定かではないまま本棚に鎮座していたのだけど、今となっては何で買ったんだっけ??となっていた。

「ここはおれたちの故郷とはちがうんだ」と彼はイドゥリスに言った。「故郷では、おまえは家庭や村に縛りつけられていた。結婚すれば、情けないことに、義理の母親の所有物にされてしまう! 家の中の家具みたいなものにされてしまうんだ。ところが、ここではちがう。ここにあるのは自由だ。そうとも。まさしく自由なんだ! だが、気をつけろ! 自由ってものは恐ろしいものでもあるんだ、自由ってやつは! だから、ここには家庭も村も義理の母親もない! おまえは独りっきりだ。まわりには人間が大勢いるが彼らはおまえになど目もくれずに通り過ぎる。おまえは地面にぶっ倒れることがあるかも知れない。でも、通行人は知らん顔して通り過ぎる。だれもおまえを助け起こさない。これが自由というものなんだ。自由ってのは辛いものなんだ。とても辛いものなんだ。
ミシェル・トゥルニエ『黄金のしずく』P.139

 この自由であることの孤独っていうのは現代の人類にずっとまとわりついてくるんだろうか。いつか解放される時は来るのかな、などと思いながらエーリッヒ・フロム『自由からの逃走』を読もうかなぁ、という気分になってきた。








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