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この男の涙腺を刺激したのが、はたしてうれしさだったか玉ねぎだったか、そこの見わけはむずかしかった。 2020/06/01

 とりあえず、新しいキーボードが届いたので、早速使ってみている。電池を入れて、Bluetooth接続して、macモードへの切り替え方を覚えて⋯⋯。 おぉ、打てているぞ。打鍵音が静かで、ポコポコしている。なんかかわいらしい。確かに打っている感じがペチャペチャしていない気がする。思っていたよりも小ぶりで、手がでかい僕には左の小指の出番があんまりなさそうだな、などと思いながら打っている。それにしても静かだなぁ。打鍵音ってこんなに違うものなのか。

 購入したのはHHKBのHybrid Type-Sっていうやつで、macでもwinでも使えて、4台まで手元で接続を切り替えられるってのも気に入ったポイントでもある。タブレットで打ちたい時は、切り替えて、とかできるってことだ。いけてる。

 今日から小学校は分散登校で、8時頃に出て行った長女は10時半くらいに帰ってきた。まじか。早いな、分散登校。まぁでも少しは気がまぎれるんだろうか。父も母も終日会議で、しかも月初は何かと慌ただしくて、おまけにうちの会社は5月末決算なので、いきなり期初である。いきなり期初ってなんかいい響きだな。当店は、いきなりステーキ。当社は、いきなり期初であります。波乱万丈な期が終わり、そしてまた始まるのだけど、期の変わり目はだいたいいつも一人で飲んで過ごしていたことを思い出した。今期は自宅で、さっさと寝てたな。

 まさにカドルッスは、ほんとに涙を流していた。とはいえ、かつてポンデガールの旅館の亭主だったこの男の涙腺を刺激したのが、はたしてうれしさだったか玉ねぎだったか、そこの見わけはむずかしかった。
アレクサンドル・デュマ『モンテ・クリスト伯(六)』P.19

 180年前も人は玉ねぎに涙していたのであって、悪人、善人の区別なく、玉ねぎは涙腺を刺激するのであるし、涙腺を刺激する小道具として用いられてもいたのかもしれないのだけど、なんでこんなところが気に入ってしまうのか、自分でもよくわからない。唐突に現れる玉ねぎに思わず反応してしまった。

 伯爵は、ひと足引きさがると、低い叫び声をあげ、手にしていたピストルを落とした。
 「奥さん、あなたはいま、なんという名前をおっしゃいました?」と、彼は言った。
「あなたのお名前を!」と、夫人は、ヴェールをかなぐり捨てながらそれに答えた。
 「あなたのお名前を。それを、わたくしだけは忘れずにいました。エドモンさん、ここにまいったのは、モルセール夫人ではございません。メルセデスなのでざいます。」
「メルセデスは死にました。」と、モンテ・クリスト伯は言った。「私はもう、そういう名前の人を知っていません。」
「メルセデスは生きております。そして、メルセデスは覚えております。メルセデスだけには、あなたにお目にかかったとき、いえ、お目にかからないでも、ただお声を聞いただけで、エドモンさん、あなたということがわかったのです。」
アレクサンドル・デュマ『モンテ・クリスト伯(六)』P.212

 6巻まで読んできて、ようやくの2人きりでの対面シーン、復讐の鬼だったはずなのだけど、かつての恋人には、思いっきり情にほだされる伯爵がいい。なんだかんだ言っていいやつ。そして、デュマが劇作家でもあったというのがなんかわかるわぁ、というシーンでもある。舞台の上で演じられている姿が眼に浮かぶような⋯⋯。


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