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どうしてこの音楽に心動かされるんだろう/ショパン「別れの曲」

つらいとき、しんどいとき、本や映画にいつも助けられていたんだけれど、音楽もあるんだなと。音楽も物語なのかーと。
そこに物語があることに救われているんだと思った。

悲しい感情、苦しい感情であっても無視せずに一緒に味あわせてくれる物語があるおかげで、これもまあ自分の人生の一部だわな〜、体験してみたいことなんかな〜と、少しずつ受け止められるような気がして。

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最近はもっぱらクラシックがお気に入りで。
とはいっても、音楽に造詣が深いわけでもなくて。
どこかで一度は聞いた覚えがあるな〜、って曲をプレイリストに放り込んではなんとなしに聞き流していたのよね。

つい先日のこと、書店に立ち寄った際に聞き覚えのある曲が聞こえてきて、ふと足を止めてしまった。店頭のディスプレイから流れていた映画の予告の挿入曲。
家に帰ってプレイリストを見てみるとその曲は、ショパンの「別れの曲」だと知った。

(00:45あたりから)

どうしてこんなにもこの音楽に心動かされるんだろう?
「別れの曲」に心動かされるのは、起伏のある物語がそこに感じられて、だから感情が反応するからだなあと。

わずか4分半ほどの演奏のなかにストーリーがありありと感じられる。
落ち着いた曲調から始まり、中盤で一転して強く激しいリズムに変わり、そして、またしっとりとした曲調に戻っていく。
深く静かな情動と強く激しい情動が連動して、悲しげな儚げななにかを物語っているように思えた。だから思わず耳を澄ましてしまうのかな。

悲しい気持ちっていうのは、静かに静かに感じ入るものと先入観があったのだけれど、この曲を聞いていると、自分の中に強く激しい悲しみもあるんだなと気づかされる。それは中盤の慟哭のような旋律に反応して、心がぶるぶると震える感覚があるから。
ああ、この曲調のような強く激しい悲しみが自分の中にもあったんだなあと曲に身を任せながら思う。

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「別れの曲」が作曲されたのは1832年でショパンが22歳の時だとされています。この頃ショパンは故郷ポーランドを離れ、パリへと拠点を移しています。
「パリでの成功を夢見る心情」と「田舎を懐かしむ心情」が重なり合っていたであろう当時のショパンの様子を思い浮かべてこの曲を聴くと、また新しい聴き方が出来るかもしれません。
MusicaClassica

なるほど、ショパンが22歳で故郷を離れ、新天地に移ったときにつくった曲なんだね。
聞く人によってどう感じるかは千差万別なんだろうけど、僕は何度も聞いてみて「もう戻れない過去」あるいは「喪失感」のようなものが感じられたな。

つらいとき、しんどいとき、本や映画にいつも助けられていたんだけれど、音楽もあるんだなと。音楽も物語なのかーと。
そこに物語があることに救われているんだと思った。

悲しい感情、苦しい感情であっても無視せずに一緒に味あわせてくれる物語があるおかげで、これもまあ自分の人生の一部だわな〜、体験してみたいことなんかな〜と、少しずつ受け止められるような気がして。

メロディと曲名が一致したことで、よりこの曲が好きになっちまっただよ。

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