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金時豆の甘煮 〜重曹は有効か?〜

食品加工を全力で楽しむ人、いしもとめぐみ です。
前回は金時豆の甘煮のレシピを全身全霊でお届けしました。

しかし私はより美味しい煮豆を作るべく、挑み続けます。金時豆の甘煮において、私にとっての重要なポイントは「いかに豆の皮を破らないように煮るか」という点です。
これを解決すべく、今回はあるアイテムを使ってみることにしました。

重曹です。

1.重曹って何?

重曹は炭酸水素ナトリウムという物質のことで、食品添加物のひとつです。「タンサン」「ベーキングソーダ」などという名前でも市販されています。

食品添加物と聞くと抵抗があるかもしれませんが、市販のほとんどの加工食品に食品添加物は含まれています。研究や実験の結果、無害であるとされる量のさらに少ない量を使用上限値としているので、長年それを摂取したとしても人体には影響はないと考えられています。
食品添加物については賛否両論あるかと思います。私も「これは嫌だなぁ」というものはありますし…。食品添加物についてはこの辺りにしておきます。

さて、重曹には以下のような効果があります。

①生地を膨らませる
加熱すると炭酸ナトリウム+水+二酸化炭素に分解される。二酸化炭素が細かい気泡となり、生地を膨らませる。蒸しパンやまんじゅうなどに使われる。

②灰汁を抜く
重曹を水に溶かすと弱アルカリ性を示す。このアルカリ成分により食品の繊維がやわらかくなり、食品の灰汁が抜けやすくなる。たけのこ、山菜などの灰汁抜きに使われる。

③彩りよくゆでる
緑色の野菜にはクロロフィルという色素が含まれている。これがアルカリ成分により鮮やかな緑色の色素クロロフィリンに変化する。緑色の野菜をゆでるときに重曹を加えると、より美しい緑色にゆで上がる。

④たんぱく質を分解する
たんぱく質はたくさんのアミノ酸が結合してできているが、アルカリ性の物質にはこの結合を切断するはたらきがある。重曹を溶かした水に肉を浸しておくと、肉のたんぱく質が分解されてやわらかくジューシーに仕上がる。

私が持っている重曹の製造メーカーのwebサイトにはこのように書いてありました。

豆のたんぱく質を分解させて水を浸透しやすくするので、豆が早くふっくらと煮え、豆の皮も破れにくくなります。(共立食品株式会社)

私が求めていたのはまさにこの効果!

ただ、金時豆の甘煮に重曹を使うことに踏み切れなかった理由があるのです。
それは、アルカリ性は美味しくないということ。

ほとんどの食品は酸性か中性であり、アルカリ性で食べられるものは重曹くらい、という話を聞いたことがあります。重曹を使いすぎると苦味も出てきます。

問題は使用量です。
量さえ間違えなければ、苦くはなるまい。

2.金時豆の煮熟時に重曹を入れてみた。

《配合》
金時豆(乾燥) 100
砂糖      60
醤油      4
重曹      0.3

工程③で、鍋に湯を入れるときに一緒に重曹を加えて煮始めました。
いつもと変わりはなく、豆が煮えていきます。
「豆が早くふっくらと煮え」るとありましたが、いつもより早いとは感じず。
「豆の皮も破れにくくなります」…いつも通り、破れるものは破れ、破れないものは破れず。皮が破れにくくなった様子はありませんでした。

重曹の意味…

あとは工程通りに仕上げて。
しばらくおいて味を含ませたものと、前回レシピ通りに重曹を使わずに作ったものとを試食して比較してみました。
写真左が重曹なしのもの、右が重曹ありのものです。

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おっ、重曹を入れて煮た金時豆の方が、皮がやわらかいぞ!?

重曹を使わなかった煮豆は、豆の中のほっくりした部分よりも皮の方が若干硬く、食べていると口の中で皮だけが残る食感がありました。
重曹を使用した煮豆は皮までやわらかく、豆の中の部分と同時に崩れていくような感覚がありました。

そう、重曹にはアルカリによって繊維をやわらかくする効果があります。そのため金時豆の皮がやわらかくなったのです!

今まで皮のやわらかさまで気にしていませんでしたが、比較してみると食べやすくて、丁寧に作られた上等な煮豆のような雰囲気を醸し出しています。

しかし皮がやわらかくなるということは、逆に皮が破れやすくなるということを意味するのではないでしょうか?
確かに、豆同士がぶつかるなどの強い衝撃には弱いかもしれません。しかし皮がやわらかくなることにより皮の柔軟性が出て、豆の中身が熱で膨張する程度であれば耐えられると考えられます。

皮を破れさせないために重曹を加えたのですが、ここまで食感に違いが出るとは予想していませんでした。

ただ、栄養士として見逃してはならない点があります。
(実は一応、栄養士の資格を持っています。)
重曹を使って豆や野菜をゆでると、ゆで汁がアルカリ性になることで食品中のビタミンが分解されてしまいます。
金時豆の甘煮自体が一度にたくさん食べるような料理ではないので、損失したビタミンが食事中の栄養素において多くの割合を占めるとは考えにくく、献立の中で他の食品・料理もバランスよく食べることで補えるので問題はないかと思います。
しかしお豆が持っている栄養素を失ってしまうのは、少しもったいないですね。

味については、金時豆の甘煮を作った当日の試食では問題ありませんでした。
ところが後日食べてみると若干、違和感を覚えました。おそらく初めてその煮豆を食べた人には分からない程度なのですが、いつもの甘煮とは何かが違う。
時間をおいたことで煮汁が豆の中までしっかり浸透し、食べたときにわずかではありますが重曹の味を感じてしまったようです。

豆をゆでるときに重曹を使っても、やわらかくなった豆を別の料理に使い、湯は捨ててしまうという使い方ならそこまで重曹の味が染みることはありません。
今回の金時豆の甘煮のように、豆をやわらかくゆでた湯でそのまま料理を仕上げるのであれば重曹が料理に残ってしまうので、重曹の味を感じてしまうことがあるでしょう。

3.金時豆の甘煮と重曹の効果 まとめ

金時豆をやわらかくゆで上げるときに重曹を加えると、ゆで湯がアルカリ性になることで豆の皮の繊維がやわらかくなります。
皮がやわらかくなることで皮に柔軟性が出て、強い衝撃でなければ破れず耐えることができ、皮は破れにくくなると考えられます。皮の食感もやわらかくなり、ほくほくした豆の中身との一体感が出ます。

しかし重曹のアルカリ性によって食品中のビタミンが分解されてしまう、重曹の苦味が食品に付いてしまうというデメリットもあります。

皮がやわらかくなったことにはとても感動したのですが、重曹の味を感じてしまったのは残念でした。
一長一短とはこのこと。現時点では、私のレシピに重曹は不採用です。残念。

自分のベストを超えるべく、これからも金時豆の甘煮レシピにさらに磨きをかけていくことでしょう。何かよいアイデアがあれば、ぜひコメントをください。
ではでは。

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