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第229話 カグツチに愛を


 降ろされたメッセージを鑑みながら粛々と過ごすと、タケくんと共に男子二人、最後の次元の扉を閉じて戻ってきたスサナル先生から冬至の早朝こう告げられた。

「愛しい勾玉よ。剣が戻った。」

 それから更に別次元体の彼からこんなことも言われた。

「お知らせがあります。天使のところに一緒にいるよ。」

 教えてもらったその日にけーことショッピングモールへと出かけると、天使の名のつく場所には真っ赤なリボンの装飾がなされ、その向かいにはウェディングドレスの特設会場が設けられていた。てぃろからの想いが流れ込んでくる。

 あれから恐る恐る少しずつ、色んな方法で彼は姿を現してきていた。
 運転中に彼の姿を見かけることも、再びネットに写真が出てくることも増えてきた。
 あきらが処分すると言って出してきた紙ゴミの、中学時代の冊子などからも現れた。教師という立場上、生徒から似顔絵を描かれる機会が多い彼のイラストには、その手に剣を持たされる現象が度々発生していた。

 けれども決して『期待』してエゴ的には動かない。会う時には会わされるから、居たからといって車で追いかけるようなこともしない。ツインレイとはそういうもの。
 そしてもし彼を見たことで不要な感情が上がってくれば、その都度内観へと専念していく。見かけたことには意味があり、だからこそ浄化は地道な繰り返しとなる。

 そうして年末、駆け込みでけーこにアセンションを促すパートナーが現れると、よりより一人神経を集中させて、静かに闇へと潜る年明けとなった。すると、『委ねる』というシンクロサインが身の回りにたくさん溢れてきていることに気がついた……。

……

「ひみちゃんひみちゃん。そろそろ一緒にどっか行きたい。」

 新年を迎えて一週間。そんなLINEを受け取ると、日程を調整してけーこと三度目の箱根へと行くことになった。
 そして約束した朝顔を合わせるなり、彼女からこんなことを言われた。

「玄関を出ようとしたらさぁ、ひみちゃんの声で、『けーこ、駄目ー!』って叫ばれた。何が駄目だかわかる?……扇子も持ったし、私、何も忘れ物もしてないよね。」

「えっ、そうなんだ。
……うーん、とりあえずハイヤーさんは大丈夫みたいだよ。エゴがなんで駄目って言ったかは……。特にわからないから大丈夫なんじゃない?こっちも三種の神器もちゃんと持ったし。」

……

 行きのコンビニでお茶を買って、ついでにあきらの好きなおやつも朝のうちにいくつか買ってから高速に乗る。少しばかり遠いけど、箱根方面、もはや知らない道ではなかった。


 初めて九頭龍神社を目指した去年の初夏。その時は前々から“火傷”のサインが出ていた通り、芦ノ湖脇の林道は私たち二人にとっての試練となり、また湖に辿りつくまでの数日前からが既にハードルそのものだった。
 それがもう、今となってはトンネルだろうと感じる邪気もなく、道すがらの神々にご挨拶しつつ、「試練ではないとこうも楽なのか」と思いながら運転を続けていた。

 ところが。

「やっぱ今日は上り坂でもすいすいだー。前ここ通った時よりギアが軽いよ。」

 そんなことをけーこに言ったその直後。
突然そのギアが言うことを聞かなくなり、前回苦労して三速に落とした曲がり道で、なんと今回二速まで落としても上がれなくなってしまった。

 空回りしている。後続車の存在に焦り、低速ギアから加速し直そうとアクセルを踏み込むと「煙出てる!」とけーこが叫ぶ。
 見るとメーターがレッドゾーンを指していて、何とかカーブだけ越えて次の直線まで持ち堪えると、ハザードを点けて慌てて車外へと飛び出した。

 クラッチの損傷。焼けた摩擦の匂いは酷かったけど幸い火災までは至らず、また交通量から渋滞も起こらず、警察と消防、それから通りすがりの方に助けていただきレッカーの到着を待つことになった。

 スサナル先生の誕生日のナンバープレートをつけた車が故障車の横を追い越していった。
 思わずけーこと顔を見合わせそれから少しホッとすると、自分の中に残っていた『恐怖』がオーラフィールドに満ちていることに気づき光を当てる。
 ボコッボコッとある程度闇を抜くと、「うわー、今のすごい怖かった。ええー?朝買ったおやつ、わざわざ箱根から電車で持って帰るの?」とそんなことを思い出して苦笑いしてしまった。

 レッカーされる下り坂の途中、道沿いに祀られているとある高次元存在にけーこが話しかける。

「さっき『行ってらっしゃい』って言ってたよね。うちらが坂を上がっていく前から、アクシデントでこうなるってこと分かってたの?」

「図らずとも遠からず。」

 そんな答えが返ってきたという。

……

「ひみが現実面で“出す”なんて珍しいよね。私だったらタケくんの浄化でこっちに被害が出たらブチ切れるけどね。」

 けーこがそう言う通り、あまり外側世界の痛みによって浄化をすることの少ない私だったけど、今回は私の現実に表出させることで彼の闇を担ったのだろうと考えていた。
 理屈ではなく感覚がそう伝えてくるのをぼんやり聞くと、彼もこれから大きく変わると、そんな予感を感じていた。




※軻遇突智(カグツチ)……イザナミが最後に産んだ火の神。それが原因で彼女は女陰を火傷し死んでしまう。
それに怒りを覚えたイザナギがカグツチを斬り殺すと、その血からタケミカヅチとフツヌシとが生まれる。
この瞬間にイザナギとイザナミは生者と死者へと二分し、けれども見方を変えれば、怒りという闇(負の遺産)を受け継ぐことになったカグツチその人によってイザナミは闇(黄泉)を知ることができた。
そして闇を知ること“こそ”が、彼ら二人が再び地上から高次元へと戻る統合の鍵となっていく。



written by ひみ

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実話を元にした小説になっています。
ツインレイに出会う前、出会いからサイレント期間、そして統合のその先へ。
ハイパーサイキックと化したひみの私小説(笑)、ぜひお楽しみください。

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車から煙が上がった(ネガティブな火のエネルギーが出た)のは彼スサナル先生自身の闇の具現化です。(憎悪)
だからこそそれを受け止めるのはツインレイ女性である私の役割です。(愛)

彼はスサノオのエネルギーを纏ってもいますが、『あなたは私、私はあなた』の通り、彼とはイザナギでもありカグツチでもあり三次元男性原理でもありタケミカヅチでもあり、それでいて『私(イザナミ)』でもあります。 

『私は彼の中の女性性』であり
『彼は私の中の男性性』って言ったらいいかな。
男の人であっても闇が必要なのも、男性の中の“女性性”が闇(黄泉)を知り尽くす必要があるって言い換えたらわかりますか?

自分の中の男性性と女性性がひとつになるには、光と闇の両方が必要だってわかりますよね。
だからね、『光と闇の統合』イコール『自己統合』イコール『ツインレイ統合』となっていくわけです。

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→第230話 100のリボンをなびかせよう

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