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第144話 魂の空間は螺旋する



 幼稚園の頃、近所に住むかよちゃんの家に遊びに行った。
 誕生日を迎えたかよちゃんは、着せ替え人形用の、小さな子供でも簡易的な服が作れるデザイナーセットのおもちゃを貰っていた。
 そのおもちゃでの遊びに誘われ、私も自分の着せ替え人形を持って彼女の家にお邪魔すると、リボンやレース、紙のメジャーや布切れなどで、テーブルの周りは瞬く間に賑やかになった。

 ひと通り遊び尽くし飽きてきた頃。
彼女は付属品の中から、人の形をした青い厚紙製の型紙を二枚取り出すと、「幼稚園の男の子たちにしよう。」と言い出した。

「まさのりくんと、ゆうじくん。私たちのお人形がお風呂に入っていて、あ、この箱がお風呂ね。そこに二人が覗きに来るの。」

 嫌っ!

 幼な心にゾッとした。男の子が覗きに来ると聞いた瞬間、得体の知れない黒い感情が胸の奥で波打って、理由もわからず恐怖に飲まれた。

「その遊び、なんか怖い。嫌。
私、それ遊びたくない。」

 泣きそうな顔で固まってしまった私を前に一瞬かよちゃんはびっくりしてたけど、そのあとすぐに、「じゃあこっちで遊ぼう。」と違う遊びに変えてくれた。


 この時の記憶は言ってみると、“落ち着かなくて、いい感じがしないもの”。大人になるまでの間にも、度々思い出すことはあった。
 近所だったかよちゃんとは他にもたくさん遊んだ筈なのに、これだけが唯一残っている、彼女との鮮明な記憶だった。

……

 その日の昼間は自分自身に課せられた“性の闇”について考えていたためか、夜布団に入ってしばらく経つと、突然この時の思い出がぼんやりと表面に浮かんできた。

 んー、なんか、嫌な記憶……

 続けて青い人型を思い浮かべると、次の瞬間バンっといきなり両足だけが金縛りに遭った。

 うわっ!

 一瞬何が起こったかわからず、それから思考が戻ってくると、まず最初に右手が動くことを確認してから両足に向けて光を送り続け、さらに腿を手で払うと徐々に“流して解除”していった。

 よく聞く現象はこれかと思った。
人は、強烈なトラウマ……特に幼少期のトラウマと同じ場面に出くわすと足が固まってしまい、一歩も動けなくなるという。
 この時の私は、今まで散々内観してきたことによって、記憶がアカシックから抜けやすい状態にあった。そんな中で、青い人型の記憶をトリガーに闇が一気に出されたものの、肉体面での排出が間に合わず、一時的に両足に溜まってしまったのだと理解した。
 通常、ペダル式の空気入れくらいの圧で記憶が抜けるのが、車用のコンプレッサーの圧力で押し出され、昇華の媒介となるべき肉体が風船のようにパンパンになったと言えば伝わるだろうか。

 これが何を意味するか。私の奥にはまだ他にも、大きな性トラウマが残っていると直感した。


 世の中には、ツインレイまで辿り着ける魂であっても性エネルギーが軽い人もいるのに、それなのにどうして私はこんなにたくさん性の集合意識を浄化しなきゃいけないんだろう。私ばかり、こんなにも多く背負ってる……。

 そんなことを考えて苦しくなると、再び私の魂の声がした。

「誰かがやらなきゃいけないんでしょう?
それが私なんでしょう?」

 なんてこと!それが私の“精神”なの?
孤高だし、気高いし、博愛も浄化主義も結構だけど、その自己犠牲によって現に苦しいのは“この私”なのに……。

 サイレントなんて嫌なことばかりだと思った。男性側の担う役割も厳しいとは聞くけれど、少なくともツインレイの女性側の課題はやってもやっても終わりなんか見えなくて、何もかも投げ出したくなっていたところへの、この言葉は追い討ちとなった。

……

 その翌日。だけどそんな私の感情の噴出に伴って、奥からさらに押し出されてきたスサナル先生のウニヒピリにとうとう出会うことになった。

 そこは川のほとりなのか、曇天の空の下(もと)砂利の上で膝を抱え蹲って(うずくまって)いる男の子。白いシャツと、白い半ズボンを履いている。
 私のウニヒピリのような、見るからに痛々しくおぞましい姿ではないものの、この子自体がハリボテかのように体の中も目の奥も無明だった。そして、その深淵はブラックホールのような引力を伴い、黒く重く沈んでいた。

 淋しい子。怒っている。
期待して裏切られて、孤独で絶望して、心を閉ざして怒っている。

 涙が出た。
あの先生は、あんなにも魅力的で活動的だったのに、その本心は真逆だった。

 この子を救えるのは、彼を救えるのは私だけ。誰かがやらなきゃ、私がやらなきゃこの子はずっとこのままなんだ。

 ツインレイ女性によってしか、ツインレイ男性は救えない。例え彼の“仮面”を剥ぐ痛みが私に襲いかかろうと、愛しい彼がその心を取り戻せるように。そのためには恐れず自分の性トラウマも直視していこうと思った。




written by ひみ

⭐︎⭐︎⭐︎

実話を元にした小説になっています。
ツインレイに出会う前、出会いからサイレント期間、そして統合のその先へ。
ハイパーサイキックと化したひみの私小説(笑)、ぜひお楽しみください。

⭐︎⭐︎⭐︎ 

あなたの愛する人が普通の人の何倍も闇だらけということを認めるのは、結構ショックなことだと思います。

実際ツインレイ男性とは、深い闇と同じ量の分だけ美しい光を持つ人です。その光により他者に頼られ、多くの闇を引き受けて、自爆の体(てい)を取って浄化していく……。

だけどそれこそが、あらゆる反転へと繋がっていきます。それをすると決めたツインレイ男性って、すごい人だと思いませんか?(まぁ私もたいがいだけど笑)

今日、冬至とは、陰極。渦巻きが閉じ切って、ここから反転して開いていきます。

闇は光を愛していて、
光も闇を愛しています。


宇宙は呼吸をしているだけです。
具体的、短期的な地球予報はまだほとんど私には知らされていません。
冬至を迎えても、私は今目の前のできることを淡々とこなすだけです。普段通りあきらを送り、掃除機をかけ、自分の闇を直視し……。
そしてこのこと↑を、皆さんが本当の意味で実感していけるように、今日も私は書き続けるだけです。


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←今までのお話はこちら

→第145話 午後のマリアと子供たち

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